美しき怪人は少年少女探偵団を眠らせてくれない

white love it

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第3章

3.

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「さてと、食事も済んだし作戦会議といきますか」

 食事を終えた智也達は、おやつとジュースを手に居間へと移動していた。
 全員が思い思いの姿で、テーブルを囲む四つのソファに寝転がっている。乃愛と亜紀も、ソファの上であぐらをかいたり、だらしなく足をはみ出させたりと、普段はしないような格好でくつろいでいる。

「そもそも、テレパシーなんて存在するのかしら?」

 最初に口火を切ったのは、乃愛だった。

「あの電波塔について考える前に、そこをはっきりさせたいな」
「確かにな」
「それに関して言えば」

 亜紀が手を挙げて言った。

「答えはYESね」
「あるってことだね?」
「うん」

 亜紀はジュースを一口飲み干すと、説明を始めた。

「神経の伝達回路っていうのは、言ってしまえばすべて電気信号なのよ。脳から手足に出される指令も、記憶を思い出したり、計算したり、無意識のうちに唾を飲み込んだり……ニューロン間のいわゆるシナプスというのは、みんな電位発火によって命令を伝えているの」
「なるほど」
「時々あるでしょ? 双子が相手の考えていることが分かるとか、あるいは相手の体に触れただけで記憶が読み取れるとか。あれはこの電気信号を読み取ってるんじゃないかって言われてるのよ。双子なら脳の構造自体は同じだから、相手の発している電気信号を受信しやすいでしょうしね」
「でも、辻村さんは別に誰かの身体に触れていたわけじゃないし、双子の兄弟もいないわよね?」

 乃愛の質問に答える前に、智也が口を開いた。

「そうか。それで、あの電波塔なんだ」
「どういうこと? 智也君」
「あの電波塔は増幅器なんだ。人間の脳から出される電気信号を増幅さているんだ」
「……」
「あの電波塔を持っている人達が他にもいたとするよ。そのうちの一人、例えば辻村さんが何かを知りたいと思った場合、その信号は増幅されほかの人たちに伝わる。もちろん無意識下においてね。そして必要な情報が見つかると、今度はその人の脳から出た電気信号が増幅され、離れたところにいる辻村さんの頭に入ってくるってわけ」
「ちょっといいか? 智也」
「うん?」
「なぜ無意識下だと分かる? それにあの電波塔を持っている奴が他にもいるなら、なぜSNSで話題にならないんだ」

 智也は少し考え込んだ。

「えーと……辻村さんもそうだし、さっき亜紀が話していた触れられて記憶を読まれた側も、別に意識して情報を教えているわけじゃないよね? たぶん脳の中の記憶を保管されている場所に、直接アクセスされているんじゃないかな」
「なるほどな」
「それからこの電波塔だけど、実際には辻村さんのように個人で持っている人はあまりいないのかも。携帯電話の基地局みたいに特定の場所に置かれて、周囲をカヴァーしているのかも」
「ありえるわね。学区内にも、ううん、学校内にあるのかも。それなら私の学校での様子が、辻村さんに流れていても不思議じゃないわ」

 チョコクッキーを齧りながら、乃愛が真剣な顔で頷いた。
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