美しき怪人は少年少女探偵団を眠らせてくれない

white love it

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第3章

5.

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「じゃあ、そもそもネイレは何のために電波塔をつくって、人間に無意識下でのテレパシーを行わせたり、人間をミニチュア化して小さな町をつくって、さらにその真ん中に電波塔を立てたりしてるのかっていうことなんだけど……」

 智也の言葉に皆黙り込む。

「う~ん……」
「そうねぇ……」
「やだ、このお煎餅美味しい」
「……ちょっと乃愛? 真剣に考えて」
「ごめん、亜紀ちゃん。でも本当にピリ辛で美味しいのよ」

 乃愛に勧められて、亜紀もお煎餅を口にする。

「あら、本当」
「でしょ?」
「でも、ちょっと喉が渇くわね」

 そう言ってから亜紀は、自分の紙コップにジュースを注ごうとした。

「あら、紙コップが一つ余計にあるわね? 誰の?」

 テーブルの上には使用済みの紙コップが、あったのだ。
 智也も含め全員が自分のコップを手元に引き寄せてから、不思議そうに互いを見つめ合う。

「私のよ」

 不意に凛とした、透き通るような声が聞こえた。

「私も混ぜてもらえるかしら?」

 全員がゆっくりと、声のした部屋の隅に顔を向ける。
 だがそこに誰がいるかは、全員見る前から分かっていた。
 派手な化粧もしてなければ、流行りのファッションに身をつつんでいるわけでもない。
 それでも漆黒のワンピースを着て佇む姿は、何よりも美しかった。
 透き通るような肌に、ウェーブのかかった黒髪が流れ落ちている。少し潤んだような瞳は、四人を捕らえて離さなかった。

「ネイレッ!!」

 最初に飛び出したのは誠だった。弾かれたようにソファから飛び起きると、ネイレに向かっていった。だが二歩も歩かないうちに、床へと崩れ落ちていった。次の瞬間には、亜紀、そして乃愛が突っ伏していたた。
 智也は舌が痺れて動かないこと、膝がガクガクとなるのが、単純な緊張ではないことを悟っていた。
 ゆっくりと膝をつき、そして意識は遠くなっていった。床に頭を打ち付けた時、智也はすでに痛みを感じなくなっていた。
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