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屋敷といっても事前に和也たちが想像していたような豪邸ではなく、間近でみると少しおしゃれなコテージといった感じだった。周りを塀で囲まれているわけでもなければ、豪華な装飾をされているわけでもない。ただ使われている丸太は非常に大きく太く、色が白いものばかりだった。またよくみるとあちらこちらに防犯カメラが設置してあるのが分かる。
「お客さんがいるみたいね」
屋敷の前には何台かの車が停まっている。南がちらりと見ながらいった。和也たちが登ってきた歩行者用の参道とは別に、市内から遠回りだが車で来れる道もあるのだ。
セダン、4WD、ワゴン……高吸な外車もある。どれが相田正一の車で、どれが客の車か和也には判別はつかなかった。
「さてと、どううやって突入する?」
真が屋敷をながめながらいった。
「正面から普通にドアをたたくんじゃだめなの?」
乃愛が首をかしげていった。
「……」
「……」
「……それがいいと思う。別に忍び込むわけじゃないんだしさ」
結局、乃愛の意見が採用されることとなった。
南が先頭に立ち、屋敷のドアをノックした。
しばらくすると一人の老婆が出てきた。年齢に似合わないフリルのついたエプロンをつけており、使用人であることはすぐに分かった。
南が学校の新聞作成のために、相田正道にインタビューがしたいことを話すと、案の定、事前のアポをとったのかをきかれた。
「すいません。その……事前の連絡はいっさいしてないんです。ええと……どこにきけばいいか分からなくて」
そういって南はぎこちなく微笑んだ。
使用人の老婆は少しも笑わなかったが、スリッパを用意すると和也たちを中に案内してくれた。
玄関の前の廊下のすぐわきには二階に通じる階段があった。
和也たちが廊下を渡ってついた先に大きな部屋があった。四角い大きな長テーブルが中心に置かれ、取り囲むようにイスやソファが置かれている。いずれもきれいな高価そうな造りだったが、絨毯にしてもカーテンにしてもシンプルなデザインだし、置き物や花などが数点あるだけで全体的には殺風景なイメージだった。ただ奥の壁に岩を登るトラの絵が直接描かれているのが、印象的だった。
「誰もいないな」
「皆さん、二階で旦那様とお話をされています。本来でしたらアポイントのないお客様はお断りするのですが、今日でしたらついでに会ってくださるかもしれませんよ」
和也たちは荷物を降ろすと、それぞれイスやソファに腰掛けて相田正一と客の話し合いが終わるのを待つことにした。
使用人の老婆は松永菊枝と名乗ると、話し合いが終わりしだい和也たちを相田正一に取り次ぐことを約束し、部屋を出ていった。
「話ってなんなのかな?」
松永がいなくなると、和也はそういって首をかしげた。
「もう仕事は引退したって聞いたけど」
「仕事を引退しても、お金儲けから引退したわけじゃないのかもよ?」
乃愛が知ったようなセリフをいう。もっともただ一人、芸能界を知っている乃愛がいうとなかなか説得力がある。
「もし相田さんに会ったら、打ち合わせどおり私がメインで質問するわね」
南がそういい、全員がうなづいた。学校でもそうだが、大人相手に一番上手く話をまとめられるのが南だった。
「それで質問の内容なんだけど、本当に新聞に載せるとしたら当然読者がいるわけでしょ? 私たちの個別の状況を話すより、一般的な意見を聞いたほうがいいと思うの」
「たとえば?」
「たとえば、今まで夢をあきらめそうになったことはありますか? そんな時、どうやって」
「あら、かわいいお客さまがいるのね」
澄んだ声だった。爽やかで穏やかな声だった。
突然の声に和也たちが振り返ると、ドアのところに声の持ち主が両手を組んだ姿勢でたたずんでいた。
その姿をみたとき、四人は知らずのうちに立ち上がっていた。
青いワンピースの上に真っ白なカーディガンをまとった、年齢三十代くらいとみられるその女性は、ほとんど化粧をしていなかった。
それでもなお、白い肌にウェーブのある黒髪をたなびかせたその姿は、声と同じくらい澄んでいて、そして……
「すごい……キレイ……」
和也、真、南の三人がぼうぜんとしたまま立ち尽くしているなか、乃愛だけがそう言葉をもらした。
その言葉に女性は、キラキラした目をくるりと回した。
「ありがとう、お嬢さん。私の名前は荒野霧江よ。あなたたちは?」
「あ、私は葛城南です。N市立上代中学校の生徒なんですけど、新聞員会の取材で相田さんに会いに来たんです」
南に続いて和也たちが自己紹介をすると、霧江はクスリとほほ笑んだ。
「新聞委員会。いいね、そういうの。なんかこう学生って感じ」
「あの荒野さんはどうしてここに?」
真が心なし上ずった声で質問する。今まで試合を見に来た女子のファンには見せなかった雰囲気だ。
「私? 簡単にいうと宝石を買いにね」
「宝石商なんですか?」
「そう。もっとも私だけじゃなくてあと二人、同じ目的で来た人達がまだ上で話してるけどね。あの調子じゃ商談はまとまりそうにないかな」
そういって霧江は顔をしかめた。
「相田さんて宝石のコレクターなんですか?」
和也の質問に霧江は目を丸くした。
「ってあなたたち、知らないで来たの? てっきりそれが目的かと思ったのに」
南が、自分たちが予定しているインタビューの内容を話すと、霧江は目を丸くした。
「相田さんはその世界じゃ有名な宝石のコレクターでね。珍しい石をたくさん持ってるの。このお屋敷も二階部分は基本的に彼の住居なんだけど、金庫やら展示容器やらにたくさん入ってるのよ。実は最近、相田さんがかなり大きなルビーを入手したって聞いてね。それを売ってもらえないか交渉にきたんだけどね」
「お客さんがいるみたいね」
屋敷の前には何台かの車が停まっている。南がちらりと見ながらいった。和也たちが登ってきた歩行者用の参道とは別に、市内から遠回りだが車で来れる道もあるのだ。
セダン、4WD、ワゴン……高吸な外車もある。どれが相田正一の車で、どれが客の車か和也には判別はつかなかった。
「さてと、どううやって突入する?」
真が屋敷をながめながらいった。
「正面から普通にドアをたたくんじゃだめなの?」
乃愛が首をかしげていった。
「……」
「……」
「……それがいいと思う。別に忍び込むわけじゃないんだしさ」
結局、乃愛の意見が採用されることとなった。
南が先頭に立ち、屋敷のドアをノックした。
しばらくすると一人の老婆が出てきた。年齢に似合わないフリルのついたエプロンをつけており、使用人であることはすぐに分かった。
南が学校の新聞作成のために、相田正道にインタビューがしたいことを話すと、案の定、事前のアポをとったのかをきかれた。
「すいません。その……事前の連絡はいっさいしてないんです。ええと……どこにきけばいいか分からなくて」
そういって南はぎこちなく微笑んだ。
使用人の老婆は少しも笑わなかったが、スリッパを用意すると和也たちを中に案内してくれた。
玄関の前の廊下のすぐわきには二階に通じる階段があった。
和也たちが廊下を渡ってついた先に大きな部屋があった。四角い大きな長テーブルが中心に置かれ、取り囲むようにイスやソファが置かれている。いずれもきれいな高価そうな造りだったが、絨毯にしてもカーテンにしてもシンプルなデザインだし、置き物や花などが数点あるだけで全体的には殺風景なイメージだった。ただ奥の壁に岩を登るトラの絵が直接描かれているのが、印象的だった。
「誰もいないな」
「皆さん、二階で旦那様とお話をされています。本来でしたらアポイントのないお客様はお断りするのですが、今日でしたらついでに会ってくださるかもしれませんよ」
和也たちは荷物を降ろすと、それぞれイスやソファに腰掛けて相田正一と客の話し合いが終わるのを待つことにした。
使用人の老婆は松永菊枝と名乗ると、話し合いが終わりしだい和也たちを相田正一に取り次ぐことを約束し、部屋を出ていった。
「話ってなんなのかな?」
松永がいなくなると、和也はそういって首をかしげた。
「もう仕事は引退したって聞いたけど」
「仕事を引退しても、お金儲けから引退したわけじゃないのかもよ?」
乃愛が知ったようなセリフをいう。もっともただ一人、芸能界を知っている乃愛がいうとなかなか説得力がある。
「もし相田さんに会ったら、打ち合わせどおり私がメインで質問するわね」
南がそういい、全員がうなづいた。学校でもそうだが、大人相手に一番上手く話をまとめられるのが南だった。
「それで質問の内容なんだけど、本当に新聞に載せるとしたら当然読者がいるわけでしょ? 私たちの個別の状況を話すより、一般的な意見を聞いたほうがいいと思うの」
「たとえば?」
「たとえば、今まで夢をあきらめそうになったことはありますか? そんな時、どうやって」
「あら、かわいいお客さまがいるのね」
澄んだ声だった。爽やかで穏やかな声だった。
突然の声に和也たちが振り返ると、ドアのところに声の持ち主が両手を組んだ姿勢でたたずんでいた。
その姿をみたとき、四人は知らずのうちに立ち上がっていた。
青いワンピースの上に真っ白なカーディガンをまとった、年齢三十代くらいとみられるその女性は、ほとんど化粧をしていなかった。
それでもなお、白い肌にウェーブのある黒髪をたなびかせたその姿は、声と同じくらい澄んでいて、そして……
「すごい……キレイ……」
和也、真、南の三人がぼうぜんとしたまま立ち尽くしているなか、乃愛だけがそう言葉をもらした。
その言葉に女性は、キラキラした目をくるりと回した。
「ありがとう、お嬢さん。私の名前は荒野霧江よ。あなたたちは?」
「あ、私は葛城南です。N市立上代中学校の生徒なんですけど、新聞員会の取材で相田さんに会いに来たんです」
南に続いて和也たちが自己紹介をすると、霧江はクスリとほほ笑んだ。
「新聞委員会。いいね、そういうの。なんかこう学生って感じ」
「あの荒野さんはどうしてここに?」
真が心なし上ずった声で質問する。今まで試合を見に来た女子のファンには見せなかった雰囲気だ。
「私? 簡単にいうと宝石を買いにね」
「宝石商なんですか?」
「そう。もっとも私だけじゃなくてあと二人、同じ目的で来た人達がまだ上で話してるけどね。あの調子じゃ商談はまとまりそうにないかな」
そういって霧江は顔をしかめた。
「相田さんて宝石のコレクターなんですか?」
和也の質問に霧江は目を丸くした。
「ってあなたたち、知らないで来たの? てっきりそれが目的かと思ったのに」
南が、自分たちが予定しているインタビューの内容を話すと、霧江は目を丸くした。
「相田さんはその世界じゃ有名な宝石のコレクターでね。珍しい石をたくさん持ってるの。このお屋敷も二階部分は基本的に彼の住居なんだけど、金庫やら展示容器やらにたくさん入ってるのよ。実は最近、相田さんがかなり大きなルビーを入手したって聞いてね。それを売ってもらえないか交渉にきたんだけどね」
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