一年B組探偵団と盗まれたルビー

white love it

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 相田正一。日本中に支社を持つ相田工業の創設者であり、N市一の有名人だった。
 N市の出身だった彼は大学卒業後、大手機械会社に入りみるみる頭角をあらわした。三十代で地元に帰ると、今度は小型モーターを扱う自分の会社を立ち上げた。度重なる不況や新興国の台頭にもかかわらず会社は成長をつづけ、ついにはモーターだけでなくロケットの部品なども扱う世界的な企業へとなった。一躍有名人となった相田だったが、年齢には勝てなかった。徐々に病気がちになり、去年八十歳の誕生日と同時にN市内にある上代山をまるまる買い上げると、使用人と別荘に引きこもってしまったのだ。
 和也は、新聞委員会として彼にインタビューすれば、真たちにとって役立つことがきけるのではないかと考えたのだ。

 乃愛の家での話し合いから三日後の土曜日。
 山のなかの曲がりくねった一本道を、和也、真、南、乃愛の四人が一列になって歩いている。四人とも背中にリュックを背負い、ジーパンやキュロットといった活動的な格好をしていた。
 出発したのは午後一時過ぎだった。乃愛の家に集合し、乃愛と南が握ったおにぎりを一人二個ずつ食べてからの出発だった。同級生の女子が握ったおにぎりを食べるというのは中学生男子からするとなかなか貴重な経験だったが、和也も真もどうにもはしゃぐ気分ではなかった。その後のが大変なものになることをすでに内心予想していたからかもしれない。
 出発からすでに二時間以上が経過しており、四人の額は汗が光っていた。周りは背の高い木が生い茂っており、生き物が動く気配はない。濃い緑、淡い緑、様々な濃さの緑色が茂るなか、四人はひたすら山道を歩いた。

「その人、結婚はしてないんだっけ?」

 先頭をいく真が後ろを向くとそうきいてきた。
 答えたのは一番後ろを歩く和也だった。

「うん。家族は誰もいないみたいだよ。今は使用人と二人で暮らしてるみたい」
「ふーん」
「でも、私たちアポイントとらなくてよかったのかしら?」

 二番目を歩く南がきいてきた。

「いきなり別荘に押しかけたりして、怒られないかな?」
「でも南ちゃん。私たち普通の中学生が電話やメールで、事前に『学校新聞の取材で話をききたい』なんていっても、それこそ相手にされないんじゃないかしら?」

 乃愛が答える。
 
「そうね。そうかも。出たとこ勝負っていうのもいいかもね」

 南がやや投げやりな口調でいった。怒っているわけではないのだが、山道の角度が徐々にきつくなってきたのと、いつまでも終りが見えないことにイラだってきたのだ。

「ねえ、この道、あとどのくらい続くの?」
「う~ん……」

 視線を向けられた和也だったが、返事に困った。
 地図で見る距離と実際に歩くのにかかる時間は大違いということを、この二時間でいやというほど味わっているのだ。

「カリカリするなよ、南。いざとなったら、そこらへんの山道に転がしておいてやるから」
「あら、ずいぶん親切ね」
「いつものことだろ」

 こともなげにそういい、真は肩をすくめた。
 大人っぽい雰囲気の真がやると、なかなか様になっている。
 それに山道には手すりのようなものがないので、途中真が南の手をひいたり、和也が乃愛の背中を押したりする場面は何度もあったのは事実だった。

「ねえ、もし仮にインタビューが成功したら、そのままおやつでも出してもらえないかな?」
「はぁ!?」
「和也くん、本気でいってるの?」

 和也の発言は真と南から大ブーイングを浴びた。
 
「あのな、和也。世の中そんなに都合のいいことあるわけ無いだろ? ああいう連中に限ってケチなんだからな。金持ちの別荘に遊びに行くからって、そんなこと期待してたらがっかりするだけだぞ」
「私たち、アポ無し取材なんていう失礼なことしてるのよ。この上オヤツだなんて、図々しい中学生って思われるのがオチよ」

 どうやら疲労と空腹を感じているのは自分だけではないと気づいて、和也は黙った。

「ねえ、みんな。あれ、そうじゃない?」

 突然、乃愛の声が響いた。
 山の中腹にある、周りが開けた場所に一軒の洋風の屋敷が建っていた。丸太を組み合わせれた造られた二階建ての屋敷。
 ポツンと一軒だけ佇むその姿は、まるで社会から置き去りにされたようだった。
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