一年B組探偵団と盗まれたルビー

white love it

文字の大きさ
9 / 23

しおりを挟む
「さてとどうする? 南たちのいる物入れに寄ってみる?」

 和也は隣の物置を指差した。ここは大広間のすぐ奥にキッチン、そして物置が二つ続いてから使用人の松永の部屋と、その奥に洗面所、浴室の順になっているのだ。

「いや、まずは松永の婆さんがいるか確認しよう」

 そういうと真は松永のいる部屋の扉を叩いた。
 すぐに返事があった。

「誰ですか?」
「あ、藍川和也です。夜分すいません。なんだか誰かのうなり声がしてる気がして……」

 松永がドアから顔をみせていった。寝巻きの上にガウンを羽織っており、なんだか校長先生といった雰囲気だった。

「うなり声? 外の雨風の音では?」
「はぁ。それが何なのか分からなくて」
「この屋敷の防犯システムは完璧ですし、この辺りに危険な野生動物はいません。ご心配なく」

 それだけいうと、松永はバタンとドアを閉めてしまった。

「少なくとも松永さんのいびきじゃなさそうだね」
「とすると……」

 和也と真が首をかしげていると突然声がした。

「君たちも眠れないのかい?」
「よ、米塚さん……」

 見ると暗がりにワイシャツのボタンを緩めた米塚が立っていた。

「いや、何だか明日の商談のことを考えていたら興奮して寝れなくなってしまってね。キッチンから水でも拝借しようかと起きてきたんだ」

 そういってニヤニヤと笑う米塚は、昼間の冷静なイメージとは違いどこか不気味だった。

「商談はうまくいきそうなんですか? なんかものすごい値段をふっかけられたみたいなこといってませんでしたっけ?」

 真の問いかけに米塚は大きくうなづいた。

「あの程度のはったりで引っ込んでいてはこの仕事は成り立たんよ。まあこれからが本当の勝負さ」
 
 そういい残すと米塚はキッチンへと消えていった。

「たいそうな自信だね」
「ああ」
「どうする? 南たちに声かける?」

 真がニヤリと笑いながら和也の方を向いた。

「やけに南たちの部屋に行きたがるんだな?」
「え? なに? どういうこと?」
「いや、別にいいんだ。和也。むしろ俺は応援してるぜ」
「何か勘違いしてない? 別に変な意味じゃないし」

 そんなことをいいあっていたが、大広間で人の気配がして黙った。
 和也と真が顔を見合わせ、そっと大広間に通じるドアを開ける。

「見ろよ。すぐそこ」

 真がそっと和也をつつく。
 視線の先には牧本がいた。じっと壁に描かれたトラの絵を眺めていた。昼間の陽気で豪快な雰囲気とは違い、何かを思いつめたような顔だった。
 和也と真は顔を見合わせると、牧本に気づかれないようにそっとドアを閉め物置へと戻った。和也にしても南たちのところに行く気はもうなかった。

「驚いたね。やけに真剣な顔で見てたけど、あれってただの絵だよね?」
「たぶんな。けどな、和也。位置的にあのあたりなんだよ」
「何が?」
「うなるような音がしたところさ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

処理中です...