最後の夜に思い出ひとつ

white love it

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教室の片隅

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「そういえば乃愛ちゃんも、あの頃少し体調が悪そうじゃなかった?」

 今度は結が乃愛に話かけてきた。

「なんかいつもしかめっ面してたでしょ?」
「しかめっ面……」

 乃愛が苦笑いする。
 亜紀は乃愛のほうをみた。前に乃愛が、将来は弁護士になりたいといっていたことをふいに思い出した。後で知ったのだが、乃愛は以前は医者になりたいといっていたそうだ。

「将来の進路を考えていたんじゃない? 乃愛ちゃん、しっかりしてるから」
「う~ん、そうね。確かにあの頃、将来は弁護士になろうって決めたわ」
「やっぱり」

 亜紀と結は顔を見合わせた。

「でもね、そのきっかけは亜紀ちゃんなんだよ」
「え、私?」
「亜紀ちゃん、覚えてないでしょ?あの頃、クラスでやたら物がなくなる事件が相次いでたんだけど、どうやら先生たち、亜紀ちゃんを疑っていたみたいなんだよね」
「私を!?」
「悲しいことに、こういう事件があると最初に疑われるのは施設の子なの。おまけに亜紀ちゃん、あの頃みたいにボーっとしてたでしょ。だから……」
「そんな……」

 初めて聞く事柄に亜紀はびっくりしていた。

「確か犯人は隣のクラスの子だったんだよね。それもお金には少しもこまってない家の」
 
 結が、少しだけ投げやりな口調でそういった。
 乃愛は大きくうなづいた。

「そう。幸いあの時はすぐに犯人が見つかったけど、そうじゃなかったら、亜紀ちゃん、とんだ濡れ衣をきせられてでしょ? だから決めたのよ。将来弁護士になって、そういう人たちのために戦うって」

 亜紀はまたしても、なんといっていいかわからなくなってしまった。
 結局でてきたのは、一言だけだった。

「乃愛ちゃん、すごくかっこいい」
「乃愛ちゃんの今度の里親、大学の先生なんでしょ? ちょうどよかったじゃない。たっぷり勉強できるよ」

 そういって無邪気に笑う結を横目に、乃愛は軽く肩をすくめた。  
 その仕草がなかなか様になっていて、亜紀も思わず笑いだしていた。
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