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思い出は思い出してこそ
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突然、亜紀は涙があふれて止まらなくなった。
私ってば、いつもそうだ。大切な存在はいつもいなくなってから気づく。お父さんもお母さんも、この2人のことも……
「……私、別れたくない……2人と……まだまだ一緒にいたい……」
テーブルに突っ伏して泣く亜紀の両端で、乃愛と結が優しい目で、ただほんの少し涙ぐんだ目で見守っている。
亜紀は嗚咽を押し殺しながらいった。
「……昔ね、ある有名な歌手でジョンっていう人が子供の頃、将来何になりたいか作文に書くように学校でいわれたの……彼はただ一言【幸せ】とだけ書いたわ……先生に『課題のテーマを理解していないのね』といわれた彼は、なんて答えたと思う?」
乃愛も結も黙ったままだった。
亜紀は顔をあげた。
「先生は人生を理解していない」
亜紀は続けていった。
「たぶん、私も一生理解できないまんまだと思う。幸せなんて、言葉の意味も分からないで、好きな人たちと別れていくだけのそんな寂しくてつまらない人生なんだと思う」
食堂内は静まりかえったままだ。
大切な人との別れは、亜紀に限った話ではない。乃愛は7歳の時に両親と兄弟を災害で亡くしている。結も、他の子たちも、みんなそ大切な人たちに別れを告げてきた。
誰もが幸せになりたいと思っている。
でも現実に、誰もが幸せになっているわけではないことに、亜紀も結も乃愛もすでに気づいていた。
ふいに結が明るい声をあげた。
「メロンソーダよ! メロンソーダをキーにしましょうよ!!」
「ちょ、ちょっと結? どうしたの? 急に」
乃愛がびっくりして声をあげる。おまけに、ちゃんづけもなくなっている。
亜紀もポカンとしたまま、結を見つめている。
「これからどこに行っても、メロンソーダを飲む時は必ず残りの2人に連絡をとるの。それがハンバーガー店でも、コンビニでも、自販機の前でも」
乃愛はしばらく考えこんでから、指をならした。
「それでキーなのね。つまり思い出を引き出す鍵っていうことでしょ?」
「そうなのよ! メロンソーダを飲むたびに、私は乃愛と亜紀に連絡するから。2人もメロンソーダを飲むたびに、私ともう一人の子に連絡をして!!」
亜紀も涙をふいていった。
「メロンソーダと今夜の思い出はセットだものね。絶対に忘れることはないよ! それに日本中どこでもメロンソーダは売ってるもの!」
夜中の食堂に少女たちの笑い声が響く。
亜紀にとって、こんなに笑ったのは、両親が亡くなって以降初めてだった。
亜紀の里親は子供のいない若夫婦だった。車のなかで、2人はさかんに亜紀に話かけてきた。これからの生活について、将来のことについて。
ついに亜紀は話を遮って聞いた。
「これから住む場所でメロンソーダは飲めますか?」
「え? メロンソーダ? ……あると思うよ、なあ?」
「え、ええ。確か近くのネットカフェのドリンクバーにあったと思うけど」
「亜紀ちゃん、メロンソーダ好きなのかい?」
それさえわかれば一安心だ。亜紀は大きく伸びをしていった。
「はい!」
車には、人生を理解していた男の歌が流れていた。
ビートルズのLet it beが。
fin
私ってば、いつもそうだ。大切な存在はいつもいなくなってから気づく。お父さんもお母さんも、この2人のことも……
「……私、別れたくない……2人と……まだまだ一緒にいたい……」
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亜紀は嗚咽を押し殺しながらいった。
「……昔ね、ある有名な歌手でジョンっていう人が子供の頃、将来何になりたいか作文に書くように学校でいわれたの……彼はただ一言【幸せ】とだけ書いたわ……先生に『課題のテーマを理解していないのね』といわれた彼は、なんて答えたと思う?」
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「先生は人生を理解していない」
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食堂内は静まりかえったままだ。
大切な人との別れは、亜紀に限った話ではない。乃愛は7歳の時に両親と兄弟を災害で亡くしている。結も、他の子たちも、みんなそ大切な人たちに別れを告げてきた。
誰もが幸せになりたいと思っている。
でも現実に、誰もが幸せになっているわけではないことに、亜紀も結も乃愛もすでに気づいていた。
ふいに結が明るい声をあげた。
「メロンソーダよ! メロンソーダをキーにしましょうよ!!」
「ちょ、ちょっと結? どうしたの? 急に」
乃愛がびっくりして声をあげる。おまけに、ちゃんづけもなくなっている。
亜紀もポカンとしたまま、結を見つめている。
「これからどこに行っても、メロンソーダを飲む時は必ず残りの2人に連絡をとるの。それがハンバーガー店でも、コンビニでも、自販機の前でも」
乃愛はしばらく考えこんでから、指をならした。
「それでキーなのね。つまり思い出を引き出す鍵っていうことでしょ?」
「そうなのよ! メロンソーダを飲むたびに、私は乃愛と亜紀に連絡するから。2人もメロンソーダを飲むたびに、私ともう一人の子に連絡をして!!」
亜紀も涙をふいていった。
「メロンソーダと今夜の思い出はセットだものね。絶対に忘れることはないよ! それに日本中どこでもメロンソーダは売ってるもの!」
夜中の食堂に少女たちの笑い声が響く。
亜紀にとって、こんなに笑ったのは、両親が亡くなって以降初めてだった。
亜紀の里親は子供のいない若夫婦だった。車のなかで、2人はさかんに亜紀に話かけてきた。これからの生活について、将来のことについて。
ついに亜紀は話を遮って聞いた。
「これから住む場所でメロンソーダは飲めますか?」
「え? メロンソーダ? ……あると思うよ、なあ?」
「え、ええ。確か近くのネットカフェのドリンクバーにあったと思うけど」
「亜紀ちゃん、メロンソーダ好きなのかい?」
それさえわかれば一安心だ。亜紀は大きく伸びをしていった。
「はい!」
車には、人生を理解していた男の歌が流れていた。
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