レベル×レベル 〜低レベルで目指す魔王討伐〜

どすこいシロップ

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第2章:飛び立て!てつお

第14話「三人の来客」

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宿屋“スラファ”の二階。タキオくんを待つ二人。
軋むベッドの上の二人。男の二人。
二人の距離は、お互いの鼻と鼻の間にもうひとつ鼻が入るかどうかぐらい。
二人の息は荒い。
俺は軽くのけ反って相手を拒むような体勢。
“そういう風”に言うなら、“受け”だ。

「お、俺たちは男同士ですよね?」

ハヤさんはその反った体勢でできた隙間を詰めるように身を乗り出している。
“そういう風”に言うなら、“攻め”だ。

「そ、それは……それがどうかしたのか?」

タキオくんが来るまで持ちこたえられそうもない。
このままじゃダメだ!
せ、せめて“攻め”にならなければ!

「し、しかも!まだ会ったばかりじゃないですか」

俺は、むしろ頭突きになりそうな勢いで身を乗り出した。
これが功を奏して、ハヤさんは少し顔を赤らめて目を逸らしながら身を引いた。

「そ、そうだな……少しばかり不躾になってしまったかもしれない……」

こ、こうして近づいてみると、いい匂いがする……
昔、博物館のお土産で買った乳香みたいな……
俺が少しハヤさんの香りに気を取られた隙に、“受け攻め”はまた入れ替わりそうになった。

「だが!私は勇者殿の力になりたいのだ!男か女か、まだ日が浅いかなど、どうか気にしないでくれないか!」

また少し声が高くなっている。
突然目の前に突き出された中性的なイケメンの顔のせいか、いい香りのせいか、俺は顔を赤らめてしまった。
気のせいか、ハヤさんの瞳は少し潤んでいる気がする。
そうだ。
とうとう二人が顔を突き出して顔を赤らめ合う形になってしまった。
その距離は、アニメ漫画ドラマ映画ゲームで培った俺の知識によると、“キスの距離”と呼ばれる間合いだった。



そこからこの後、タキオくんを除けば三人の来客があった。
一人目は、俺たちがキスの距離になって時間が止まってから五秒後ぐらいに訪れた。
宿屋のおっちゃんだった。
さっき蹴破ったせいでドアが倒れているから、ノックはない。

「失礼しやす……ってオオッ!?お、お邪魔しましたァ……」

「アーッ!待って待って!そんなんじゃないから!何?用は何?」

俺は最高のタイミングでの来客を必死に引き止めた。
今度は母さんのやり方じゃない。

「そ、そうかい?あー、実は……ソフレン様に、ゲラーカ様からお手紙を預かりまして」

ソフレン?あ、ハヤさんのことか。
で、ゲラーカってのはさっきのクソオヤジのことか。

「……済まないな。……ありがとう、確かに受け取った」

ハヤさんはベッドから腰を上げて、部屋の入り口まで歩いて手紙を受け取った。
これでやっと俺とハヤさんの距離は男同士がとるべきものになった。



「じゃ、じゃあ俺はこれで……あの、もしその、アレでしたら奥の……声の聞こえない部屋もご用意できますけど」

「いやいやいやケッコーです!どうもありがとう!」

俺は必死におっちゃんを止めてお帰りいただいた。
バ、バッカお前!どういう部屋だよそれ!そういう部屋だろ!
せっかく離れた距離がむしろ縮まるだろーが!

「……気の利く主人だな。私たちを気遣ってくれたらしい。もし周りが気になるようなら、移動するか?」

ホラ見ろ!またこの話題からスタートだよ!
いやそうはさせん!話題を変えてやる!
その手紙だッ!その手紙に興味津々だーッ!

「いや大丈夫す!ところで!!その手紙何なんでしょうね!?ゲラーカって、何者なんです!?」

実際気になってはいたことだった。
俺とタキオくんと、ハヤさんの共通の敵。
ハヤさんもゲラーカの名前を出した途端にまた鋭い顔つきに戻った。

「……今この国で最も力のある貴族の一家だ。当主はポッポという。先ほどのヤゴンブはその従兄弟だ」

……よし!どうにかシリアスな話になったな!
いまいちシリアスじゃないのは名前ぐらいだ。
ポッポて。例のアプリで死ぬほど捕まえたよ。

「……仲が悪そうに見えましたけど」

「ああ……その通りだ」

そう言うとハヤさんは紐でくくられた手紙を開いた。
ジュークさんがやってたのと同じに、紙に書かれた文字が空中に浮かび上がり、カラオケの字幕みたいに染まりながら喋り始めた。

「親衛隊隊長ハヤ・ソフレン様へ。先ほど私の弟、ヤゴンブの申し立てますところ……」

ここで突然、文字を染める色が青から赤に変わった。

「我が手勢を傷つけてくれたようだな!この事はこれより陛下に直訴させてもらう!」

いきなり怒鳴り始めた手紙に俺はビビったけど、ハヤさんは平静そのものだった。
また文字が青に戻る。

「……そうそう。陛下に訴えることはこの件ばかりではありませぬ。ソフレン家の不祥事に関しましても、申し上げるところがございます」

文字はまだ青なのに、今度はハヤさんが明らかに動揺していた。

「長女、カーサ・ソフレン様についてでございます。ハヤ様はよくよくご存知のことかと思いますが……」

文字が真っ赤に染まり、部屋中に響き渡るほどの声で手紙が叫んだ。

「貴様ももうこれまでだ!フハハハッ!準備をしておけ!国中を欺き宮中を汚したその報いを受ける準備をな!この薄汚い女狐めが!!」

ち、沈黙。
カーサ?欺く?汚す?何のこと言ってんだろ?
めぎつね?それ女に使う悪口じゃねーの?
まあ、確かに分かるけどね。ドキッとするぐらい中性的だし。
やっぱその点でイジられてるんだな。

「……すまない。聞き苦しいところがあった」

声が震えている。どうにか劇団ボイスは保っている。
多分俺とタキオくんの何倍も敵対視されてるんだろう。
同じ対ゲラーカでも、俺とハヤさんは遠く離れていた。

「あの……なんか大変そうですね……」

気の利いたことが言えずに変な空気になった。




ここで二人目の来客が窓から勢いよく入ってきた。
今度はノックがあった。少し激し過ぎるノックが。
ドッゴオオオオオ!!と凄まじい爆音を立てながら来客は窓の枠と布を突き破り、部屋の壁に叩きつけられた。

「な!?なんだなんだ!?オイ!大丈夫かあんた!」

鎧が砕け散っている。ハヤさんの着ているのと同じタイプの鎧だ。
ハヤさんが青の鎧なのに対して、こっちは真っ黒焦げな点だけが違う。
俺がその見知らぬ来客に駆け寄って【回復魔法】をかけようとした時、外で爆発があった。

「何事だ!?いったい何が起きている!」

こう言う間にも、二、三回の爆発があった。

「ヤバい!タキオくんは大丈夫だろな!?」



ここで三人目の来客がノック無しに入り口に倒れ込んできた。

「ハヤ様……!も、申し上げます……!魔女……が……!」

そこまで言うと、黒焦げの兵隊さんは気を失った。
すぐさま回復をして、どうにか一命はとりとめた。
そこにタキオくんが帰ってきた。
その周りには、“マナイバ”で表示した誰かのステータス画面が浮かんでいた。

「タキオ!よかった無事だったか!」

外で爆発。

「てつおさん!た、大変だよ!エマエがさらわれた!!」

また外で爆発。今度は二連続だった。

「何ィ!?マジか!?」

タキオくんは、慌ててステータス画面を指差した。

「魔女だよ!魔女チトセが!!この街に来てるんだ!!」

「魔女!?チトセ!?」

俺とハヤさんは、ほぼ同時に叫んでステータス画面を覗き込んだ。
とうとう二人の距離はゼロになった。
頬が触れ合っていたが、ハヤさんの言う通りだった。
男同士とか会ったばかりとか気にしていられなかった。
ハヤさんはその名前を、俺は能力値とスキルを見て目を見開いた。

名前:チトセ・シノノメ
レベル:99
HP:8750
MP:999
攻撃力:5210
守備力:3800
素早さ:1640
魔力:99
魔法耐性:25
器用さ:31
スキル:
【マナイバ:レベル50(マスター)】
【炎熱魔法:レベル50(マスター)】
【氷結魔法:レベル50(マスター)】
【電撃魔法:レベル50(マスター)】
【防御魔法:レベル50(マスター)】
【回復魔法:レベル50(マスター)】
【支援魔法:レベル50(マスター)】
【召喚魔法:レベル50(マスター)】
【飛行:レベル50(マスター)】
【分解:レベル46】
【調合:レベル45】
【潜伏:レベル20】
【逃走:レベル38】

この世界で初めて見た、俺よりも上の能力値だった。

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