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第2章:飛び立て!てつお
第16話「望み通りに」
しおりを挟む「さぞかし待ちくたびれたことだろう。この儂、魔女チトセを待ち侘びたことだろうね!」
空いっぱいの魔法文字はそう叫ぶと、たちまち辺り一面に稲妻を放った。
間一髪“オマジャ”で街への被害は防いだが、この一撃で早くも耐久限界に近かった。
「誰もお前なんか呼んでねーよ……っと!」
俺はこの文字に向かって【分解】をかけた。
【マナイバ】と【電撃魔法】、それと【防御魔法】を組み合わせたものらしい。
「……小賢しい真似をする者がいるねぇ。魔法陣を破ったのもこの男だ、伝説の勇者様だよ」
例によって、この文字を完全に【分解】することはできなかった。
まーそれは別にいい。俺のことはバレてる訳か。
「儂は招かれざる客かい?とんでもない!儂は招かれてここへ来た……儂を望んだのはこの国の民なんだよ!」
さて、この魔法は予め唱えておいたものじゃなくて、どこかから生中継で唱えられてるものらしい。
相手は俺の動向を把握している。
どこかそう遠くないところから見ているに違いない。
「街を焼かれて悲しいかい?家族を燃やされ気も狂いそうかい!?だがこれはお前達が望んだことさ!儂は願いを叶えたまで!」
……くそ!勝手なこと言いやがって!
どう考えてもお前がいきなり爆撃しただけじゃねーか!
「よく思い出してみるがいい。儂が来る前は……お前たちは力を合わせていたか?一つの思いで結びついておったか?互いに助け合い思いやっていたか?」
ものすごく不愉快だ。
きっとこの国の人たちは俺以上にそう感じてるはずだ!
これ以上この文字に喋らせちゃダメだ!
「もう黙ってろこの野郎!“ルブルブル”!」
俺の全力の【氷結魔法】だ。
たちまち文字は凍りつき、その形が分からないほど分厚い氷に覆われた。
しかしすぐに、氷の奥底の文字が紫色に光った。
すると文字から赤い稲妻が走り、巨大な氷塊を吹き飛ばしながら叫んだ。
「無礼者めが!儂の言葉を阻むことはできぬ!!」
俺の出した氷塊が街に降り注ぐ……ヤバい!
俺は慌てて“ルブルブル”の残骸を一つ残らず【分解】した。
さっきの文字の稲妻で、俺の魔法障壁は砕け散っていた。
それを見て、俺は思いついた。
もう一度こっそりと“ルブルブル”を唱えて【分解】しておいた。
「よくお聞き……この焼け野原はお前達が望んだことだ。五年前とそっくりな景色だろう?あの戦争の時のように……あの時、お前達は……王族も貴族も平民も手を取りあって、お前達は何を目指していたのかえ?」
俺は次々と現れる文字を殴りまくった。
もちろんこんなことで文字が消えるとは思っていない。
「この儂を倒すことだろう!儂の壊した街を取り戻すことだっただろう!儂への憎しみで、怒りで、敵対心で!お前達はひとつだったろう!?」
俺はちょこまかと飛び回って、どうにか文字をどうにかしようと足掻いていた。
誰がどう見てもそう見えただろう。
「五年間の平和な暮らしがお前達にもたらしたのは何じゃ?“自由”じゃったか?“安寧”じゃったか?“幸福”じゃったか?全て違う!それはたった一つ!“闘争”じゃ!」
俺は足掻いてるように見せながら、街の様子も確認していた。
街の人たちがほとんど城壁の外へ避難できてるのが見える。
王宮前公園に、タキオくんとハヤさんがいるのが見える。
街を駆け回ってるのは……メロンジ?
あいつまた何か企んでるのか?
と思ったら瓦礫の下の子供を助け出し始めていた。
「共通の敵がいなくなればすぐにお前達は互いに憎み合い争いを始める……お前達人間どもを結びつけるのは“愛”や“平和”などではない!“憎悪”じゃ!“敵”じゃ!“悪”無しに“正義”は成り立たぬ!!」
……そろそろこの演説も聞き飽きたな。
本気を出すか。
【分解】の網目を拳に絡めて殴れば、多分この文字を欠けさせることぐらいはできるはずだ。
「ならば儂らがなってやろう!絶対の“悪”として君臨してやる!我らが魔王様が!お前達全ての敵として降り立つのじゃ!お前達の望み通りにな!ククク、ハーッハハハ!」
いくぞ……せぇ……のッ!!
「ハハハ……ハ……バチバチッ……ハ……」
俺の【分解】パンチで、とうとう文字が欠けた。
本気で殴ったのに、二文字ぐらいがバチバチ言ってるだけだった。ちょっとショック。
「まズは……そこノ勇者ヲ……バチッ……血祭り……バチバチッ……してな!!」
文字はそう叫ぶと稲妻の塊になって空へ消えて、俺の右斜め後方が一直線に凍りついた。
よし、狙い通り。
俺が邪魔をし続けてれば、必ず俺を狙う魔法が飛んでくるはずだ。
もう俺を守る魔法障壁はない。
だけど俺の周りには、【分解】しておいた“ルブルブル”がある。
どんな魔法が俺に向けられようと、その魔力が飛んできた方向が凍りつく訳だ。
どうやら“マナイバ”が唱えられたらしい。
……王宮の、西の塔!
「……そこか!!見つけたぞッ!」
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