何故か転生?したらしいので【この子】を幸せにしたい。

くらげ

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第一章

生活改善しましょう

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「どうしてこうなった…?」

父親もとい公爵と、まさかの出会いをしてから次の日────

俺の生活は一変した。
今まで生活していた狭くて寒い別邸の部屋からなんと、本邸にある部屋へと移動され、再び会った公爵からはたった一言。

「お前は、もうなにもやらなくていい」

と告げられた。

そして現在────

ふかふかで暖かくて高そうなベッドに、横になりながら俺は、過ごしていた。

(わぁ~ふかふかだぁ~って、なんでやねん?!?いやいや!!!確かに俺は、公爵の実の息子だしね!これが、本来の意味正しい環境なんだろうけど!突然すぎる!あんた〖この子〗の事を嫌い避けてたんじゃないのか?!?!)

「はぁ……訳が分からない。一体、何が起きてるんだ?」

何とか頭を回転させ考えようとするが、どうしてもふかふかで暖かいベッドの威力には敵わない。
これまでの疲れもあり俺は、いつの間にか夢の世界へとブラックアウトしたのだった。

(無念……だが、このベッド…最高!)


そして翌朝────

夢オチという事もなく、昨晩と同じふかふかなベッドで俺は、目を覚ました。

「んーーッ!やばい…めっちゃ寝た気がする!」

ゆっくりと上半身だけ起こし、両腕を上へ伸ばし背筋を伸ばす。その後、俺は部屋の中を見渡した。
何畳分あるか、分からないような広さの部屋に、綺麗なタンス棚に何台もの本棚や立派な机と座り心地の良さそうな椅子まである。

(うわ~!やっぱり、夢じゃなかった!しかし…まさか、あの日公爵様に会っちゃうとは…いつかは会うかもとは思っていたけど突然すぎるだろ!そして……この、いきなりの待遇は一体なに…)

頭を抱え1人もんもんと、ベッドの上で悩んでいると、扉を数回リズムよくノックされた。

「おはようございます。オリヴァーでございます」

低く落ち着きがある聞いたことのある声が、扉の前から聞こえる。返事するのを忘れぽかんとしていると、更に言葉が続く。

「入っても宜しゅうございますでしょうか?」
「へぇ…あッ…は、はい!!どうぞ!」

今までの使用人達は、何も言わず勝手に扉開け怒鳴りつらかしていた為、それに慣れきっていた俺は、ワンテンポ遅れてる。すぐにハッ…!と、気を取り直し急いで返事をしたが声は、裏返り、とても間抜けな返事になってしまった。

ガチャリっと、音と共に扉が開くと、公爵様にオリヴァーと呼ばれていた男性が、凛と背筋を伸ばし立っていた。

「失礼致します」

変な返事をしてしまい大丈夫かと、不安だったがどうやらオリヴァーは、なんとも思っていないようで、俺と目が合うと優しく微笑んだ。部屋へと入ってきたオリヴァーは、ベッド縁までゆっくりと近づく。

俺は、近づいてきたオリヴァーに、視線を向けジッと注視する。

(…この人と会うのは、これで3回目か……ん~?多分、40代くらいかな?凄くかっこよくて、合ってるか分からないけど…)

オリヴァーは、178cmくらいのスラッとした体型に、執事服をきっちり着こなしている。茶色の目に、ブラウン色の髪は、きっちり後ろへ流したオールバックで、イケおじという感じの男性だった。

無言で見つめていると、オリヴァーが静かに口開く。

「………パトリック様が執務室でお待ちです」
「……え?」

(今、なんて言った?公爵様が、俺を待っているって言いました?はぁ?!本当に突然だな!てか、どうして急に…ハッ…!!もしかして、やっぱり俺を追い出すつもりなのか!ん?でも、いきなりこんなに良くしといて俺を追い出すか?…いやでも、信頼しちゃダメだ。最後に、いい思いをさせて突然、追い出すつもりかもしれない…!毎回こうして突然だからな…有り得る!)

俺は、そうだ。そうに決まっていると、1人で頷きながら、そんな事を考え俯く。そんな俺の姿を見たオリヴァーは、どうやら俺が怯えていると、勘違いしたのかその場に、そっと肘を折り俺の片手に、そっと触れる。

「…大丈夫ですよ。パトリック様からは、少しお話がしたいと仰せつかっているだけでございます。貴方様に、私めが何か危害を加える事もございません。…ですので、何も怯える必要はございませんよ」

オリヴァーは、俺の目を真っ直ぐに見つめ優しく告げた。

「あ…はい。……ありがとうございます」

(この人、めっちゃくちゃいい人なんだろうな…。何となくだけど…てか、執事服って事は、この人も執事さんだよな?今まで別邸で見た執事達とは何もかもが違う。って事は、きっと執事長とかまとめ役をしている人なのかも知れないな…)

そんな事を思いながら、オリヴァーを見つめ返していると、オリヴァーはふっと目を伏せ黙り込んだ。

「…………」
「え、あの……どうしました?」
「いえ…私めは貴方様に、1番最初に謝罪をしなければいけません。到底許していただけるとは思っておりませんが、どうか…どうか私めの謝罪をお受け取りくださいませ。」

そう言うとオリヴァーは、ゆっくりと立ち上がり頭を下げた。

「私めは、貴方様が別邸にて、どんな扱いを受けどんな環境でお過ごししていたか、全ての報告を受けておりました。知っていて…私めは、どうする事も出来なかった。お助けできなかった。」
「……………」
「貴方様の報告書を、パトリック様にお渡しする度、何度も読んでほしいと、懇願致しましたが…私めのお力及ばず、パトリック様にこの想いは届く事なく、8年もの時だけが過ぎてしまった」
「オリヴァーさん…」
「あの日……あの日、初めて報告書ではなく直で、貴方様をお見掛けした時…私めは、強い後悔と致しました。もっと早く、例え罰せられる事になってもパトリック様に、報告書を読んでもらえれば、よかった。全ての命令を無視して、貴方様をお助けしていれば、と…今頃、こんな事を告げ謝罪をした所で、許される事ではないと分かっておりますが…………誠に、誠に…申し訳ございませんでした」

そういい終えるとオリヴァーは、更に深く頭を下げる。
その姿から、俺は視線を外し手元を見つめゆっくりと目を閉じた。

(あぁ…この人は、〖この子〗をずっとそこまで、心配して助けようとしていてくれたのか…そっか…俺は、ずっとこの家の全員に、嫌われ蔑まれていて味方などいないと思っていたが、そうじゃなかったのか…1人だけでも〖この子〗を思ってくれる人がいたんだな…)

〖あぁ…〖この子〗は、1人じゃなかった〗

そう思った瞬間────

心が少しだけ、優しい光に包まれた様に暖かくなり軽くなるのを感じた俺は、目を開けもう一度、オリヴァーの方へ視線を向けた。

「オリヴァーさん…ありがとうございます」
「────ッ!そんなッ!罵倒などならともかく、感謝される様な事は、何一つございません!!私めは……」

オリヴァーは、勢いよく頭を上げると焦った様に告げた。そんなオリヴァーの言葉を遮り言葉を重ねた。

「俺は…俺は、この公爵家の全員に、疎まれ嫌われてると思っていました。でも、今の話を聞いて違うのだと知れた。オリヴァーさんは、ずっと俺を心配してくれたのですね…だから、ありがとうございます。それだけで、俺は嬉しいんです」
「……………!」

俺は、心からの感謝と想いを言葉にして伝えると、オリヴァーは目を見開きグッと何かを耐える様な顔をすると、すぐに優しくどこか泣きそうな笑みを浮かべた。


(…うん。大丈夫…大丈夫だ!)

俺は、胸に手を当てこれから会う公爵様を考え始めた。


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