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生配信26 20万人記念 Part2

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 メンバーが集まり、このサーバー内で家を作ることにした俺たち。

 家は、合計で7つ作ることにする。

 え、メンバーは8人じゃなかったかって?

 んな、馬鹿な。

 じゃあ、数えてみるよ?

 俺、聡太さん、サキサキさん。絵茶さんに、シオンさん、レモンさん。あと、ゼロス&ワンス。

 ほら、7人じゃん。

「待て待て、おかしい! なんでゼロスと一緒なんだよ⁉︎」

 ワンスさんが意義を申し立ててくるが、何故異議があるのか分からない。だって、

「いやいや。夫婦なんだし、別に良くない? ワンスさんはゼロスさんが嫌なの?」

 夫婦なんだし良くないか? それとも、やっぱり嫌だったのか?

 ワンスさんの言葉を聞いたゼロスさんは、しゃがみながら下を向き、ショックを受けているかのような体勢を取った。

 それをチラッと見たワンスさん。そして、

「………いやじゃあないけど」

 その言葉を聞き、ゼロスさんはジャンプをして喜んでいるかのようなモーションを取る。

「「「「「ひゅー、ひゅー!」」」」」

『これが夫婦愛か』
『これが愛か』
『ツンデレか?』
『ツンデレだな』

 ちょっとした夫婦愛を見た俺を除いた5人と、俺のところのリスナーさん達が騒ぎ立てる。

 それが恥ずかしかったのか、ワンスさんは近くにいた人を殴り、殴り殺す。

 このサーバーに来て2度目の死を味わう、サキサキさん。

 さて、良い夫婦愛を見れた事だし、そろそろ家造りを開始する。

 家は基本みんなの近場に作ることを提案し、各自動き始める。

 資材の方は、前回のマイクラ配信での残りが多くあるのでそれを使えば大丈夫だと思う。

「足りなかったら各自で用意してください」

 こうしてマイクラサーバーで自宅を作るのだが、

「どんな家が良いだろうか?」

 正直迷う。

 2階建の家か、1階しかないが広い家か。うんん、1階しかないが地下に部屋があるのはどうだろうか?

 秘密基地っぽくて良いような気がする。

 我ながら良いアイデアじゃん!

「よし、じゃあ作るかな」

 コンセプトは決まり、秘密基地風の家になった。

 やることは、まず地上に家を作ること。

 秘密基地っぽく作りたいから、材料は木材。

 家の形は………どんなのが良いだろうか?

 そもそもみんなはどんな形の家を作るつもりだろうか?

 周囲を見渡し、ちょっと観察してみる。

「聡太さんは普通の家だね」

 俺が観察していることがバレないように、通話アプリをミュートにして話す。

 俺の独り言はリスナーさん達にしか聞こえていない。

『2階建の家かな?』
『ブロックの積み方からして、2階建?』
『木造なのは同じかな?』
『広さはどんな感じだろう?』
『そこまで広くは見えないね』

 確かに広くもなく大きくもない、マジで普通の家。

 シンプルで良いとは思う。

 俺もあんな感じにすれば………いや、コンセプトは変えない!

 このまま見続けていると、同じものが出来そうで怖いので、次の人と見ようと思う。

 次は、ゼロス&ワンスの夫婦の家。

「結構広く作るんだな。まあ、2人分だからそうはなるか」

 何階建かは分からないが、1階になりそうな場所を広く作っている。

『確かに』
『ゼロスさんかわいかったな』
『あれ?』
『あれ?』

 コメント欄の不穏な空気を感じ、改めてゼロス&ワンスを見てみると、

「………ゼロスさんしか働いてないような気がするんだけど」

『やっぱり?』
『あれはどう見ても』
『尻に轢かれてるんだな』
『いや、ワンスさんは内装をしているのかも!』

 まさか、まさかねぇ、そんな訳ないよ。うん。

「多分、ワンスさんのセンスが無さすぎるから、ゼロスさんが働いてるんだよ」

『なるほど』
『確かにありそう』
『ガサツそう』
『美術1とか?』

「ちょっ、ふふっ、それは言い過ぎでしょ! ガサツそうではあるけど、ひひひ」

 ひとしきり笑い、次の人の家を見てみる。

 ちなみに、1、ミュート中なのでワンスさんには聴こえていない。

 さて、今度はサキサキさんのを見てみましょう。

 サキサキさんの家は俺の隣。

 なので、横を見ればサキサキさん家となる訳だが、

「………なんだ、あの、家は?」

 横に建てられている建物はどう見ても家というよりかは、マンション。

『マンションが建ってる』
『細長いマンション』
『え、何あれ』
『マンションか、あれ?』

 確かにアレは、マンションぽい何か。だって、細長すぎるんだもん。

 螺旋階段で上に上がる、そうアレは塔。塔だよ、アレは。

 家の真横に塔とか………なんか最悪。

 もう見ないどこ。

 んで、次は絵茶さんのところ。

「絵茶さんは………聡太さんとこと一緒な感じがするな」

 2階建ての一軒家だね。

 次は、シオンさんなんだが、

「この人、何もしてないじゃん? 何してんの?」

 棒立ち状態で、何もしてない。

『なんかこっち見てない?』
『なんか待ってない?』
『シオンさん、どうしたんだろ』
『聞いてみたら?』

 確かになんかこっち見てて、待ってるようにも見える。

 でも、なんか問題があって動いてないようにも見える。

 1回、聞くか。

 ミュートを解除して聞いてみる。

「シオンさん、どうかしました? 動いてないっすけど?」

「うん、同棲しようかと」

 家を作らないで、一緒に住むと。ところで、

「へぇ、誰と?」

「滝さんと」

 ん?

「誰と?」

「滝さんと」

「………誰と?」

「滝さんと」

 3回聞いたけど、聞き間違いじゃないよね。

 俺と住むって言ってんの、この人。

「うーん。自分の家を作った方が快適ですよ、多分」

「いや、いい」

 そんなこと言われても、作ってくれや。

「俺の家作り終わったら手伝うんで、作ってください」

「いや、いい。だって」

 だって、なんだよ。

 続きを待ってみると、

「だって、夫婦は1つの家なんでしょ? だったら、私は滝さんの家に住めばいい」

「「はあ⁉︎」」

 何故か、同タイミングでサキサキさんが叫ぶ。叫び、そして介入してくる。

「なんで、滝くんとシオンさんが夫婦なんですか?」

「夫婦………いい響き」

「聞いてますか、シオンさん!」

「聞いてる。なんでかって、滝さんはお尻フェチ。私、良いお尻してるから結婚できる」

「意味が分かりません!」

 本当に意味が分からない。別に結婚相手を良いお尻だからって理由で決めないから俺。

「それに、私だって良いお尻してます!」

 そんで意味分からん事が増えた。

 なんで、サキサキさんもそこで張り合うの? あとその発言、俺は女性をお尻で判断する男みたいになってんだけど!

『ケツ魔人』
『ケツ好きマン』
『サキサキさんのお尻、、、』
『お尻見せて欲しい!』

 誰がケツ魔人、ケツ好きマンだよ。あと、キモい発言してる奴ら全員ブロックな。

 変なところで争いに巻き込まれている俺。

 ここは知らんぷりをする必要があるので、ミュート。

 ミュートをしつつ、まず地下部屋を作っていく。

「リスナーさん達、どれぐらい掘った方がいいと思う?
横何マス、縦何マス、高さ何マスの順番で教えてほしい」

『えっ、アレを無視するの?』
『てか、滝ってモテモテなの?』
『炎上案件ですか?』
『燃えるの、滝は?』

 おいおい、古参は何年俺の配信見てんだよ。最近見始めてくれたリスナーさん達も、色んな人の配信見てるんでしょ? なら分かるでしょ。

「あのね、これは別に俺がモテてるわけじゃなくて、そういう風に見せて、俺の反応で遊ぼうとしてるだけ」

『えっ、本当に?』
『確かにモテないよな、滝は』
『本当かよ』
『分からないじゃん!』

 はあ、何を期待してんのか………あと、モテないって言った奴、覚えてろよ。

「会話の内容聞いてた? 完全にじゃん。もう1度、考えてみてよ」

 リスナーさん達に会話を思い出させる。

『、、、確かになんかおかしいな』
『滝ならやりかねない。まあおかしな会話だけど』
『滝ならやりかねないから、不思議じゃないような』
『でも言われてみれば、、、おかしい?』

 おいおい、俺ならやりかねないって、俺をどんな男だと思ってんだか。
 
 はあ、そこらへんの道にでも歩いててくれないかな、殴りに行くから。

 まあ、可笑しいってことには気づいてくれたと思う。

「ね、可笑しいでしょ? 完全におふざけなの。分かったら、横、縦、高さの順番でどれくらい掘った方が良いか教えてくれない?」

『うん、、、分かった』
『これ滝が鈍感とかじゃないよね』
『これが好意ならド直球過ぎるか』
『確かに。いや2人がポンコツ説ない?』

「誰が鈍感でポンコツじゃ! もういいです。適当に掘って地下部屋作っちゃいますから」

『やめとけ』
『建築の才能ないんだから』
『任せとけって』
『30、40、20ぐらいで作ってみて』

「30、40、20ね。狭かったら5ずつ増やしていくわ」

 疑り深いリスナーさん達の疑いを晴らし、地下部屋を作っていく。

 シオンさんとサキサキさんが俺を好きとかあり得ないでしょ。

 シオンさんはコラボしたばっかだし、会ったことすらないんだよ。

 サキサキさんに関しても、いくらコラボしていて、いくら対面で会っているからといって、好きになるのに早すぎでしょ。

 まあ、2人とも俺を嫌ってないってだけは分かったから、嬉しいけどね。

 ちなみに、地上に残してきた2人は殴り合いまで発展していて、キルログに『サキサキはワンスに殺害された』『シオンはワンスに殺害された』と流れてきた。

 どうやら、ワンスさんが喧嘩両成敗をしてくれたようだ。

「ナイス、ワンスさん」

 ミュートの状態でほめとく。

『草』
『うるさかったんだろうな』
『暇だったんだよ』
『動いてなかったしね』

「まあ、暇だったんだろうな。センスが無さすぎてゼロスさんに全て任せるほどだもん。ははははは」

 言いたい放題ではあるが、この会話はミュート中。なので、ワンスさんには一切聞こえてな、



「っ!」

『えっ!』
『なんで!』
『ミュートは?』
『終わったなw』

 何故? ミュートのし忘れ?

 確認するがミュートにはなっている。

「ちなみに最初っから聞いてたから、

 ………おう。やっちまったよ、みんな。

「リスナーさん達も、散々言ってくれたね。私が聞いてない見てないと思って」

『、、、』
『すみません』
『悪ふざけが過ぎました』
『滝が責任を持ちます』

「おい、人に責任をなすりつけんな!」

 なんて酷いリスナーだ。

「最初に言い始めたにはリスナーさん達です!」

『最初に言ったのは滝!』
『お前こそ、責任を押し付けるな』
『滝は全て悪い』
『滝が諸悪の根源!』

 ええ、俺が最初だっけ? 

 ………記憶にございません。

「滝君、今、私は剣を持っています。この剣の錆になりなさい」

 そう言いながら、1つしかない入り口からワンスさんが降りてくる。

「やめて、やめてぇえええ!」

 ピコン。

『滝はワンスに殺害された』

 キルログに俺の名前が載った。


 



 
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