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生配信28 師匠vs弟子 Part1

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「今日もゲーム配信。配信者はお馴染み、Takiチャンネルの滝です」

『お疲れ様』
『お疲れ』
『じゃあ、また夜配信で』

「はい、じゃあみんな夜配信で』

 俺は配信の枠を閉じた。

 ………

 ……

 …

 そして、すぐさま新しい配信の枠を作り、

「この馬鹿リスナー! 面倒臭いことさせやがって!」

『したのはお前や!』
『人のせいにするな』
『さっき来たばっかりなのにすぐ終わった』
『人のせい?』

 馬鹿なノリをしたのは確かに俺だが、そうさせたのはリスナーさんたち、お前らだ!

 なんて言ったら、またなんか言われそうなので、何も言わずに配信を始める。

 今日プレイするゲームは、俺の好きな格ゲー『DOAデッド オア アライブ』。

 Twitterでも配信のサムネタイトルにもそう記載されているので、リスナーさん達も理解しているはず。

 今までの『DOA』と違うところは、というところだ。

 ここは説明せねば。

「ええ、今回は、配信の概要欄にも書いてある通り、リスナー参加型ではありません。今回は格ゲーに興味を持った人がいるらしく、その人とコラボするつもりです」

『サキサキさんでしょ?』
『サキサキさんも今説明してた!』
『サキサキさんなの?』
『サキサキさん、格ゲー上手くなるかな?』

 せっかくコラボする人をボカしていたのに………ネタバレするかね?

 そこは空気読んで、知らないふりしておいて欲しかったな。

「コメント欄に書かれているように! そうですよ! サキサキさんですよね! サキサキさんが俺の格ゲー配信見て、やってみたいんだって!」

『知ってるよー』
『怒ってるの?』
『サキサキさんです、って言いたかったんだろうな』
『残念だったなw』

 クソ、リスナーさん達は決して謝らないか。いつも通り、俺を弄って遊んでやがるな。

 流れるコメント欄に対して言いたいことは色々あるが、構っていたら配信時間が終わってしまうため、ここは我慢。

 時間は有限なので、そろそろサキサキさんを呼んでいく。

「あっ、お待たせしました」

「いえいえ、こっちもダウンロード、今終わったので!」

 サキサキさんは、今日が『DOA』初見プレイとなる。

 なので、まずは操作方法からだ。

 操作方法を教えたら、格ゲーマーの洗礼を受けてもらおう。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「と、このように操作するわけですよ」

「なりほど。ガードばかりしていると、投げ技で攻撃を受けると。単調なパンチやキックだとカウンターを受けると」

「そうです、弟子よ」

「カウンターのタイミングが難しいです、師匠」

「慣れなさい」

「分かりました」

 俺とサキサキさんだけのロビーマッチを作り、操作を教える。その小1時間、それぞれ相手のことを「弟子」「師匠」と呼び合い楽しんでいた。

 その光景は、リスナーさん達からも好評のようで、

『調子に乗んな!』
『そこの席変われ!』
『俺は教えたほうが強くなるわ!』
『いや逆に俺も弟子になれば、お姉ちゃんと呼べるのでは?』

 コメント欄には罵詈雑言が流れている。

「頭沸いてんのか、リスナーどもよ。これが友達という席に座っている俺の権利よ。弟子は1人で十分。帰りな!」

 ミュートにして、サキサキさんに聞こえないように暴言を吐く。

『ちょっと対戦しようや!』
『ロビーマッチしようや』
『その性格の悪さ叩き直してやるよ』
『オレ、オマエ、ヤッテヤル』

「やりません。私は、サキサキさんと遊ぶんですぅううううう!」

 さあ、煽りに煽ったところで、

「弟子よ、ちょっと戦ってみますか」

「了解です、師匠!」

 今度は軽く格闘をしてみる。

『あとで殺す』
『Twitter荒らす』
『燃やしてやる』
『コメント欄はもう燃えてるけどね』

 まずはキャラを選ぶところから、サキサキさんには初めてもらう。

 操作方法の時使ったキャラは、お互いにティナというキャラを使った。

 このキャラは女性プロレスラーで、俺がよく使っているキャラだ。

 技を熟知している分、教えやすかったのでこのキャラを使ったのだが、今回は、

「ぱっと見で使いたいキャラ使っていいですよ」

 サキサキさんの使いたいキャラを使わせようと思う。

「そうですね。この人は綺麗な人で使ってみたいし、ああ、この子可愛い! どれもいいな」

『DOA』はどのキャラも魅力的なので、サキサキさんの気持ちが痛いほどわかる。

「あっ、この子、日本人なんですね」

「そうですよ。その子は空手が格闘スタイルですね」

 サキサキさんが選んだキャラは『ヒトミ』というキャラで、言った通り空手の使い手。

「この子にしようかな。可愛いし、強そうだし」

 そう言い、キャラを決め、いよいよ対戦。

「まずは、適当に攻撃してきてください」

 最初は連打の練習。

「こう、こう、こう!」

 ガードやカウンターをせずに素直に受ける。

「その連打は、これくらいダメージが入るので、覚えていてくださいね。大体でいいんで」

「おっす!」

 空手のキャラを使っているからか、サキサキさんの返事が空手家みたいなる。

「今度は上下に動かしながらとか、パンチとキックを織り交ぜながら攻撃してきてください」

「うっす!」

 サキサキさんのサンドバッグになってあげていると、俺の体力ゲージが無くなり、1ラウンド目は負ける。

 2ラウンド目も同様に、動かないサンドバッグになり、攻撃方法を覚えてもらう。

 このままだと、1ゲームがすぐに終わってしまうため、サキサキさんに次の課題を与える。

「こう、こう、こあああああ!」

 さっきと同様に、パンチの連打攻撃をするサキサキさん。連打攻撃を止めるように、俺がカウンターを入れていく。

「単調な攻撃は、カウンターが入れやすいんですよね。なので、こうやって」

 上段攻撃、中断攻撃、下段攻撃を織り混ぜて攻撃していく。

「こうすれば、相手に読まれることなく攻撃することができます」

 本当はちゃんとした技名のあるコンボを教えてあげたいんだが、今のサキサキさんには難しそうなので、普通の攻撃にも種類があることを教えてあげる。

「なるほど。じゃあ、これなら!」

 パンチの攻撃にキックの攻撃を混ぜて攻撃してくるが、

「それは、全部が中段の攻撃なんで、タイミングさえつまめれば「ああああああ!」こうなります」

 カウンターを入れていく。

 サキサキさんの攻撃にカウンターをどんどん入れていくと、サキサキさんの体力ゲージが0になり、1ラウンドを取り返すことができた。

「なるほど、奥深いですね。格ゲーは」

 格ゲーを楽しんでもらえているみたいなので、とても嬉しい。

「今度は、相手の攻撃に合わせてガードやカウンターを入れてみましょう」

 今度はこっちが攻撃する番。

「あっ、ちょっ、んあああ!」

 カウンターはタイミングが命。

 カウンターのタイミングが合わなければ、一方的に殴られる。

 体力が減って、カウンターよりもガードをしてくるサキサキさん。

 なので、

「ガードをしすぎると」

「ああああああ、やめて!」

 投げ技がくる。

 ティナはパンチやキックよりも投げ技の方がダメージは大きい。

 タイミングが掴めないサキサキさんは、パンチの餌食となり、もう1ラウンドを落としてしまう。

 これでお互いに2勝2敗。

 最後のラウンドもサキサキさんには、カウンターやガードの練習をしてもらう。もちろん、初心者のサキサキさんは、

「………負けまし」

 無しすべなく、ラウンドを落とし、1戦目は俺が勝ってしまった。

 まだまだ始まったばかりの格ゲー練習。

 サキサキさんはまだやる気はあるだろうか、心配していると、

「でも、ヒトミちゃん可愛いので、極めたい! 師匠、もう1戦!」

 声のトーンはまだ大丈夫そう。

「よし、じゃあ、もう1戦行きますか」

 サキサキさんとの練習はまだまだ続けられそう。

 配信時間はまだ全然あるので、練習を続けていく。
 

 







 
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