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生配信28 師匠vs弟子 Part2

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「どうです? 慣れました?」

 配信を初めて1時間半。5戦して感じたことといえば、やっぱりサキサキさんってゲームが上手い。

 飲み込みが早い分、教えてないのにコンボ技を打ってくる。

「最初の頃よりは慣れてきたと思います。自信はあまりないけど」

 そうは言うが、今日始めたばかりのサキサキさんに、今さっき1ラウンド取られたんだが?

 本気は出してないし、カウンターとガードはあまり使用しなかったとはいえ、結構凄いことだと思う。

 ちなみに、その時使ったキャラは、『バース』といういつも俺が使っている『ティナ』の父親。

 もちろん、格闘スタイルはプロレス。

「結構いい感じに操作出来てましたけどね。もう何戦か練習します?」

「お願いします!」

 やる気と熱意のある返事。

 これは上手くなりますね。

「分かりました。じゃあ、サキサキさんの苦手なカウンターを重点的に行いましょう」

「………」

「返事がないぞ、弟子よ」

「………はい」

 カウンターは本当にタイミングと相手の行動を読むのが大事。

 カウンターが決まらなければ、相手に隙を見せてしまい、そこからコンボ技が………なんてことがよくある。

 なので、読みは後々で、タイミングだけは掴めるようにしてあげたい。

「じゃあ、攻撃方法とか言ってから攻撃するので、カウンターをお願いします」

「分かりました」

 よし、じゃあ、

「中段のパンチ」

 そして、言った通りに中段のパンチを行う。

「あっ!」

「タイミング早いですね」

 カウンターのタイミングが早く、パンチをもとに喰らってしまう。

 今度は、

「上段キック」

「んっああ!」

「………タイミングが遅かったですね」

 蹴りを喰らった後に、カウンターの動作が。これでは遅い。

「上段パンチ」

「あっ、んんん!」

「中段キック」

「なっ、ああん!」

「下段キック」

「んっくぅうう!」

 ………ん? 

 いや、違う違う。

 な訳ない、な訳ない。

 サキサキさんは真面目にプレイしている。決して、そういう声を、ワザと出しているわけではない。

 だから、

『えっっっっRo』
『えっ』
『HHHHHHHHHHH』
『もっと喘がせろ!』

 リスナー諸君、騒ぐな!

「滝くん、次は?」

「ええ? ああ! 次は、下段キックです」

「よしゃ、こい!」

 前、後ろと動きながら、下段キック。

「っん、ああああああ!」

『いったか』
『俺もいった』
『トイレ、トイレ』
『コメ欄、地獄じゃん』

 本当に地獄だよ。

 ちょっとミュートにして、リスナーさん達のお説教。

「次、下ネタだと俺が思ったコメントはブロック対象です。気をつけろよ」

 ミュート解除し、サキサキさんにアドバイスする。

「来そうだな、でカウンターするのではなく、来るって思ったらカウンターの方がいいと思います。カウンターのタイミングが感覚なんで、良いアドバイスじゃないかもしれないですけど」

 俺の場合はそうしていると伝えると、

「なるほど。来るって時にカウンター」

 呟きながら、頭に叩き込んでいるサキサキさん。

「じゃあ、さっきと同じ、下段キック」
 
 先程と同じように行動して、キックをする。

 すると、

「おっしゃあ!」

 カウンターが決まり、俺にダメージが入る。

『そのまま滝を殺せ!』
『畳みかけろ!』
『やっちゃえ、サキサキさん!』
『もっと声聞きたかったな』

 俺にダメージが入るとリスナーさん達は騒ぎ始める。

 おっと、いけない。

 1人、ブロックしとかないと。

「そんな感じです。じゃあ、どんどん行きますよ。上段パンチ」

「ほい!」

「中段パンチ」

「てい!」

「上段キック」

「んん、ほいや!」

 最後の上段キックでは、前、後ろと動き、しゃがみを入れた後、キック。

 しかし、冷静に状況を判断したサキサキさんは上段キックを喰らうことはなく、カウンターで対処して見せた。

『フェイントとか卑怯』
『おいおい、サキサキさんは初心者なんだぞ!』
『フェイントとか、性格悪いのか?』
『あと少しで、1ラウンド取れる!』

 なんとでも言えばいいさ。

 だが、言わせておくと調子に乗るので、

『Takiチャンネル : サキサキさんと1対1で話しながらゲームできないなんて………可哀想』

 仕返しだけはしとこう。

『表でろ!』
『ちょっと家の住所よこせよ!』
『ブッコロ案件ですね』
『外に出たら背後に気をつけておくんだな、滝よ!』

 おお、こわ。

 煽り性能はあるのに、煽り耐性がないリスナーさん達は嫌ね。

 リスナーさん達に構っていたら時間だけ過ぎていくので、次の課題をサキサキさんに与える。

「じゃあ、次は中段の連打攻撃するので、ガードを使いながらカウンターしてみてください」

「難しそうですね」

「カウンターのタイミングが掴めているサキサキさんなら大丈夫ですよ」

 実際、連打攻撃の方が簡単。

 いつ来るか分からない単発攻撃より、連打攻撃の方が読みやすいので、カウンターが取りやすいのだ。

「じゃあ、行きますね」

「はい」

 中段のパンチ、3回。

「んっ、んっ、ほい!」

 今度は中段のキック、3回。

「あっ、ほい!」

 タイミングが分かってきたらしく、カウンターが使えるようになっている。

 この2回のカウンターで俺の体力は0になり、サキサキさんは1ラウンド取ることができた。

『雑魚』
『よわ』
『サキサキさん強い』
『もう、滝に負ける要素がなくなった』

 煽ったことまだ怒っているらしい。

 苦手なカウンターを使えるようになったので、この課題は終了。

 今度は、ちゃんとした実践をしていく。

「サキサキさん。今度は何も言わない、ただの対戦をしますか」

 そう言うと、サキサキさんは「師匠、まだ練習が必要であります」と対戦をしたくないような様子。

 なので、

「黙りなさい、対戦しますよ」

 と、無理やり対戦をすることにした。












 
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