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生配信28 師匠vs弟子 Part3

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 さて、サキサキさんの練習時間は終わり、今度は実戦。

 ガチンコ勝負の時間が来ました。

「サキサキさんは、そのままで行きますか?」

「はい! ヒトミちゃんの練習してきたんで、こころちゃんで行きたいと思います」

 格闘スタイルが空手の『ヒトミ』をこのまま使っていく様子。

 まあ、練習していたキャラだし、それもそうか。

 俺は当然、

『おいおい、初心者相手だぞ!』
『本業禁止』
『サイテーだぞ!』
『マジかよ、きしょ!』

 当然、ティナ以外のキャラを選択する。

 選択したキャラは『こころ』。格闘スタイルは中国拳法の1つ、八極拳。

 別に、リスナーさん達に言われたから、『ティナ』を使わなかったわけじゃないし?

 カーソル合わせていたけど、だし。

 俺は『こころ』を選び、対戦していく。

 まずは1ラウンド目。

「先手を譲りましょう」

「………」

 ジリジリと距離を詰めてくるサキサキさん。

 お互い、パンチが届くか届かないかの距離。

 先手を譲ると言った手前、こちらから攻撃はしない。

 さあ、どうくる!

「………」

 行動を読ませないためか、ジャンプやしゃがみをして、攻撃するタイミングを伺っている。

 数十秒睨み合いをし、

「っ!」

 動き出す。

 俺の読みでは、サキサキさんの初手はジャンプ攻撃。しかし、サキサキさんの初手は、上段キックだった。

 俺の読みはハズレ。ハズレたのなら攻撃はあるはずだが、今回は実戦での経験が活かされた。

 ジャンプ攻撃を予想していたため、俺はしゃがみを入れ、避ける体勢を取っていたのだ。

 初手はミスし、こっからはこっちも攻撃していいことになっている。

 なので、こちらも反撃と言いたいところだが、サキサキさんの練習成果が出た。

「んんんん!」

 上段キックからの軽いコンボ技で、隙を作らないようにしていた。

 初手は避けることができた俺だが、そのままコンボをしてくるとは思っておらず、HPが削られてしまう。

「おお、今のは良いですよ。めちゃ上手い」

「ふぅ。んん!」

 コンボからの詰め攻撃。

 出来るだけ、俺のHPを削りたいらしい。

 が、そうは問屋が卸さない。

「ほい!」

 サキサキさんの攻撃に合わせてカウンター。

「きぃいいい!」

 カウンターからの軽い追撃。

 攻め攻めのサキサキさんから打って変わって、守りのサキサキさんへとなる。

 近づけば、近づかれた分だけ距離を取り、ダッシュ攻撃をすれば、避けるかガードをする。

 何かを待っているのか?

 そんな気がするので、ワザと罠にハマってみることにする。

 もう1度、ダッシュ攻撃。

 すると、

「くらえ!」

 ダッシュ攻撃に合わせてのカウンター。

 タイミングはバッチリで、カウンター後の追撃もしっかりと決めてくる。

 その後も、隙を作らない事を徹底して動いていたようで、先に倒されたのは俺の方だった。

 倒された俺を見ていたリスナーさん達は、大喜び。

『ざまぁ!』
『雑魚乙!』
『お疲れい!』
『サキサキさん最強!』

 こんな風に。

 倒されるたびに大喜びされていては、ウザったらしいので、

「はい。これで終了!」

「ああああ!」

『ちょっとは手加減をだね』
『これが初狩り』
『うんこやん、滝』
『サキサキさんが可哀想だよ』

「甘いですねぇ。相手の行動を読んでおかないと」

「むむっ、くぅうううう!」

『このクズ!』
『アホ!』
『鬼畜!』
『おたんこなす!』

 2ラウンド連続、取りきる。
 
 あと1ラウンド取ったら俺の勝ち。逆に2ラウンド取られたらサキサキさんの勝ち。

 サキサキさんには悪いが、これが師匠の強さ。

 リスナーさん達には悪い………悪くはないか。まあ、絶望を味わわせてやる。

「むぅ」

「あっああ!」

「っんんんん!」

「………んっああ!」

 ガードを上手く使い、少しの隙も見逃さず、甘い攻撃にはカウンター。

 もちろん、俺の勝ち。

 ダメージは少し、ほんの1センチくらいHPバーが減った程度。

 勝ったことにより、リスナーさん達は、

『負けろよ』
『そうだよ』
『なんで負けないの?』
『もう、最悪じゃん』

 などなど、文句を言うが知ったこっちゃない。

 意気消沈しているのは、リスナーさん達だけでなく、サキサキさんも。

 サキサキさんにはフォローを入れなくては。

「練習すれば、余裕で勝てるようになりますよ。格ゲーは練習あるのみなんで」

「………本当ですか?」

「マジです。サキサキさん、格ゲーのセンス良いですし、俺なんて余裕で越しますよ」

 これ、本音ね。

 マジで初心者か、って疑いたくなるほどセンスある。

 なので、これからも頑張ってほしい。

「じゃあ、練習に付き合ってくれたりします?」

 そりゃあ、

「もちろん。師匠ですもん、あなたの」

「ふふふっ、師匠よろしくお願いします!」

 機嫌も直り、これで一段落。

 時間も良いところなので、

「じゃあ、今日はこの辺にしておきますか」

 そう切り出し、お互いに配信を締めに、マイクをミュートにする。

「んじゃあ、そう言うことで、リスナーさん達には悪いけど、師匠なんでサキサキさんに格ゲーを教える配信が増えるかもですわ! うん、じゃあ、今日もご視聴ありがとうございました。また配信で会いましょう」

 コメント欄が偉く早く流れているような気がするが、無視無視。

 俺はコメント欄に目を通さず、配信を切った。






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DOA6のキャラの名前を間違ってしまったので、書き換えました。

サキサキさんが使ったキャラは、『こころ』ではなく『ヒトミ』です。

よろしくです、以上。





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