24 / 61
24 見極めるために
しおりを挟む
「兄上。」
やっぱり来たか、というのがシリルの感想だった。話した方が良いのだろうが、先延ばしにできるものなら、したい。
昼の食事は、見つかりにくいようにわざと、一番値段の安いメニューが置いてある食堂にしたというのに。
シャルルが現れたことで騒然としてしまった食堂の隅で、シリルは溜め息をついた。
「何故、その死神はまだ、兄上の隣にいらっしゃるのでしょうか?」
相変わらずの大所帯で近づいてきたシャルルは、険しい顔で、座っているシリルとその隣のリュシルを見下ろす。
「何の話だ?」
「死神リュカは、何故まだ兄上の侍従をしているのかと聞いているのです。」
「死神?リュカが?め……守り神の間違いじゃないか?」
女神と言いかけた。危ない。
「人殺しが、守り神?」
「お前は、新聞は毎日読んでいるか?」
シャルルは、首を傾げる。今日も、話が噛み合っていないような気がする。
「最近は、読んでおりませんでした。」
「毎日、目を通すようにしろ。私と話したいなら、先週の新聞だけでも目を通してから来い。」
「新聞には虚偽があふれております。」
「虚実入り交じっている。どれが本当の情報かを見極める力をつけることだ。新聞を読まなければ、その訓練もできない。そして、噂話というものも、虚実入り交じっているものだ。新聞よりも、調べたりしていない分、虚偽が混じりやすい。」
む、とシャルルが口をつぐんだ。
「結局あなたは、シャルル殿下の質問にお答えになっておられない!」
いつものように、侯爵令息ジャンが割り込んでくる。
「シャルル殿下の質問は、殿下の調べが足りていないため、答えることができない、と申し上げていらっしゃいます。」
当然のようにシリルと一緒にいた子爵令息ジュストが、答えた。
「なんだ、お前は。お前ごときが、口を挟むな。」
「シャルル殿下とシリル殿下のお話のお邪魔をする気はございません。俺は、貴方の担当です。」
「出ていけ。」
「俺は、シリル殿下とリュカと友人になったので、一緒に昼休みを過ごそうとここにいます。貴方には、関係ない。」
かっとしたジャンが上げた手は、シリルの護衛騎士ドミニクに掴まれた。
「新聞を読んできます。」
シャルルが、小さな声で言って踵を返す。慌てて、侍従、護衛騎士、側近候補が後を追い、掴まれていた手を忌々しげに振り払ったジャンも後を追って行った。
はあ、とシリルが溜め息をつくと、リュシルが肩を竦めて立ち上がった。
「今日の昼食は、何になさいますか?私は、サンドイッチとオレンジジュースにします。」
「私は日替わり定食にするよ。デザートはいいのか、リュカ。」
「食べてから、入るようなら追加します。」
「リュカは、やっぱり少食なんですね。予想通りです。」
「ジュスト様の昼食は?」
「あー、いや。今日は無理かな。」
ジュストはそう言いながら、頭をかく。
「いつも、寮の掃除や教授の手伝いをしたり、ノートを貸したりして稼いでいるのですが、試験の前はさすがにあまり時間が取れなくて。更にその後で、学園が一週間休みになったから、今日はまったくお金がないんです。明日は、今日、寮に帰ってからの仕事次第ですね。」
何でもないことのように言って笑う。確かに先ほど、昼休みを一緒に過ごす、と言っていた。昼食を食べるとは言っていなかった。
「……一週間、学園が休みになった責任を取ろう。好きな物を頼むといい。」
少し考えたシリルが言った。
「……殿下、このような生活は私だけではありませんよ。寮の掃除も教授の手伝いも取り合いです。朝晩の食事が保証されているのだから、恵まれているのです。」
「見知らぬ者のことまで考えたりはしない。見える範囲で、自分のしたいことをする。私たちは、友人なのだろう?」
ジュストが目を大きく見開いた。口を開きかけて、また閉じる。
「気になるなら、貸しにするか?」
「こ、この食堂で一番高いメニューを頼んだら、呆れますか?デ、デザートも食べてみたいって言ったら、友人やめてしまう?」
「王子の小遣い、馬鹿にしてるのか?」
シリルは、同年代の友人というのが初めてだったので、楽しくなってきて、少し口元が緩みながら言った。
「デザートは、リュカが食べるなら一緒に頼んでもらったらいい。リュカがいらなかったら、今日は無し。」
その後の食事は、目を輝かせて食堂のスペシャルボリューム定食を食べながら、デザートまで食べような、とリュカに頼み込むジュストと、とても美味しく楽しく食べることができた。
やっぱり来たか、というのがシリルの感想だった。話した方が良いのだろうが、先延ばしにできるものなら、したい。
昼の食事は、見つかりにくいようにわざと、一番値段の安いメニューが置いてある食堂にしたというのに。
シャルルが現れたことで騒然としてしまった食堂の隅で、シリルは溜め息をついた。
「何故、その死神はまだ、兄上の隣にいらっしゃるのでしょうか?」
相変わらずの大所帯で近づいてきたシャルルは、険しい顔で、座っているシリルとその隣のリュシルを見下ろす。
「何の話だ?」
「死神リュカは、何故まだ兄上の侍従をしているのかと聞いているのです。」
「死神?リュカが?め……守り神の間違いじゃないか?」
女神と言いかけた。危ない。
「人殺しが、守り神?」
「お前は、新聞は毎日読んでいるか?」
シャルルは、首を傾げる。今日も、話が噛み合っていないような気がする。
「最近は、読んでおりませんでした。」
「毎日、目を通すようにしろ。私と話したいなら、先週の新聞だけでも目を通してから来い。」
「新聞には虚偽があふれております。」
「虚実入り交じっている。どれが本当の情報かを見極める力をつけることだ。新聞を読まなければ、その訓練もできない。そして、噂話というものも、虚実入り交じっているものだ。新聞よりも、調べたりしていない分、虚偽が混じりやすい。」
む、とシャルルが口をつぐんだ。
「結局あなたは、シャルル殿下の質問にお答えになっておられない!」
いつものように、侯爵令息ジャンが割り込んでくる。
「シャルル殿下の質問は、殿下の調べが足りていないため、答えることができない、と申し上げていらっしゃいます。」
当然のようにシリルと一緒にいた子爵令息ジュストが、答えた。
「なんだ、お前は。お前ごときが、口を挟むな。」
「シャルル殿下とシリル殿下のお話のお邪魔をする気はございません。俺は、貴方の担当です。」
「出ていけ。」
「俺は、シリル殿下とリュカと友人になったので、一緒に昼休みを過ごそうとここにいます。貴方には、関係ない。」
かっとしたジャンが上げた手は、シリルの護衛騎士ドミニクに掴まれた。
「新聞を読んできます。」
シャルルが、小さな声で言って踵を返す。慌てて、侍従、護衛騎士、側近候補が後を追い、掴まれていた手を忌々しげに振り払ったジャンも後を追って行った。
はあ、とシリルが溜め息をつくと、リュシルが肩を竦めて立ち上がった。
「今日の昼食は、何になさいますか?私は、サンドイッチとオレンジジュースにします。」
「私は日替わり定食にするよ。デザートはいいのか、リュカ。」
「食べてから、入るようなら追加します。」
「リュカは、やっぱり少食なんですね。予想通りです。」
「ジュスト様の昼食は?」
「あー、いや。今日は無理かな。」
ジュストはそう言いながら、頭をかく。
「いつも、寮の掃除や教授の手伝いをしたり、ノートを貸したりして稼いでいるのですが、試験の前はさすがにあまり時間が取れなくて。更にその後で、学園が一週間休みになったから、今日はまったくお金がないんです。明日は、今日、寮に帰ってからの仕事次第ですね。」
何でもないことのように言って笑う。確かに先ほど、昼休みを一緒に過ごす、と言っていた。昼食を食べるとは言っていなかった。
「……一週間、学園が休みになった責任を取ろう。好きな物を頼むといい。」
少し考えたシリルが言った。
「……殿下、このような生活は私だけではありませんよ。寮の掃除も教授の手伝いも取り合いです。朝晩の食事が保証されているのだから、恵まれているのです。」
「見知らぬ者のことまで考えたりはしない。見える範囲で、自分のしたいことをする。私たちは、友人なのだろう?」
ジュストが目を大きく見開いた。口を開きかけて、また閉じる。
「気になるなら、貸しにするか?」
「こ、この食堂で一番高いメニューを頼んだら、呆れますか?デ、デザートも食べてみたいって言ったら、友人やめてしまう?」
「王子の小遣い、馬鹿にしてるのか?」
シリルは、同年代の友人というのが初めてだったので、楽しくなってきて、少し口元が緩みながら言った。
「デザートは、リュカが食べるなら一緒に頼んでもらったらいい。リュカがいらなかったら、今日は無し。」
その後の食事は、目を輝かせて食堂のスペシャルボリューム定食を食べながら、デザートまで食べような、とリュカに頼み込むジュストと、とても美味しく楽しく食べることができた。
92
あなたにおすすめの小説
乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!
ユウ
恋愛
平凡な伯爵令嬢のリネットは優しい婚約者と妹と穏やかで幸福な日々を送っていた。
相手は公爵家の嫡男であり第一王子殿下の側近で覚えもめでたく社交界の憧れの漆黒の騎士と呼ばれる貴族令息だった。
結婚式前夜、婚約者の妹に会いに学園に向かったが、そこで事件が起きる。
現在学園で騒動を起こしている第二王子とその友人達に勘違いから暴行を受け階段から落ちてしまう…
その時に前世の記憶を取り戻すのだった…
「悪役令嬢の兄の婚約者って…」
なんとも微妙なポジション。
しかも結婚前夜で傷物になる失態を犯してしまったリネットは婚約解消を望むのだが、悪役令嬢の義妹が王子に婚約破棄を突きつける事件に発展してしまう。
「貴女じゃ彼に不釣りあいだから別れて」と言われたので別れたのですが、呪われた上に子供まで出来てて一大事です!?
綾織季蝶
恋愛
「貴女じゃ彼に不釣りあいだから別れて」そう告げられたのは孤児から魔法省の自然管理科の大臣にまで上り詰めたカナリア・スタインベック。
相手はとある貴族のご令嬢。
確かに公爵の彼とは釣り合うだろう、そう諦めきった心で承諾してしまう。
別れる際に大臣も辞め、実家の誰も寄り付かない禁断の森に身を潜めたが…。
何故か呪われた上に子供まで出来てしまった事が発覚して…!?
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!!
お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。
皆様、お気に入り登録ありがとうございました。
現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…
ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。
一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。
そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。
読んでいただけると嬉しいです。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
愛のない結婚をした継母に転生したようなので、天使のような息子を溺愛します
美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
目が覚めると私は昔読んでいた本の中の登場人物、公爵家の後妻となった元王女ビオラに転生していた。
人嫌いの公爵は、王家によって組まれた前妻もビオラのことも毛嫌いしており、何をするのも全て別。二人の結婚には愛情の欠片もなく、ビオラは使用人たちにすら相手にされぬ生活を送っていた。
それでもめげずにこの家にしがみついていたのは、ビオラが公爵のことが本当に好きだったから。しかしその想いは報われることなどなく彼女は消え、私がこの体に入ってしまったらしい。
嫌われ者のビオラに転生し、この先どうしようかと考えあぐねていると、この物語の主人公であるルカが声をかけてきた。物語の中で悲惨な幼少期を過ごし、闇落ち予定のルカは純粋なまなざしで自分を見ている。天使のような可愛らしさと優しさに、気づけば彼を救って本物の家族になりたいと考える様に。
二人一緒ならばもう孤独ではないと、私はルカとの絆を深めていく。
するといつしか私を取り巻く周りの人々の目も、変わり始めるのだったーー
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる