【完結】第一王子と侍従令嬢の将来の夢

かずえ

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38 変わったお方なのですね

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 王妃からの手紙を読み終えたシリルは、あまりに面白いので、ジュストの部屋まで行って見せることにする。
 宰相府は今、とんでもなく忙しいのでジュストは疲れきっていた。

「聞きましたよ、シリル殿下。文官になるんじゃなかったっけ?」

「父上がな、王様も文官みたいなものだって。」

「あー、そう。シリル殿下がいいなら、それでいいですけど。」

「仕方ない。それで、私が王様になったらジュストは宰相になるから、この仕事は休みの度にすることで、いい勉強になるだろうと思って。」

「え?」

「約束しただろ?」

 少し考えこんだジュストへ、後ろに控えていたリュシルがそっと口を出す。

「あの、学園でのお食事の時に。」

「え?あ、あー!」

 ジュストは頭を抱え込んだ。

「友人同士の軽口じゃないですか。」

「でも、私はこれで安心だ。リュカも三人でずっと一緒にいよう。」

「……あー、もう。」

「私もですか?」

「もちろん、リュカもだよ。」

 そっと微笑むリュシルを見て、上機嫌なシリルを見て、ジュストも何となく楽しい気分になる。

「で、今日の用件は?」

「そうそう、これ読んで。」

 シリルは王妃からの手紙をジュストに見せる。シリルが如何に王太子に向いていないかを書き連ねてある手紙を。最後に、貴方から陛下にこのことを申し上げて辞退されるのが一番穏便にすんで良いのではないかと綴られていた。

「……は?」

「面白いだろ?一緒に笑おうかと思って。」

「……変わったお方なのですね。」

「ぶっ。ふっ、ふはははははは。」

 ひとしきり大笑いしてからシリルは、だらしなくソファにひっくり返った。

「リュカ、紅茶出せる?」

「はい。」

「三つ出したら座って。」

「はい。」

 紅茶が置かれて、リュシルもソファに座る。シリルは座り直してジュストをひた、と見た。

「直接聞いたことがあるのは、シャルルが父上の子ではないということと、父上は王になる前に母上と結婚していたということ。」

 あまりの内容に目を丸くするジュストを他所にシリルは続ける。

「知っているのは、王妃は父上の兄上の婚約者だったこと。その伯父上が王太子であり、父上は爵位をもらって王家から離れる予定であったこと。不幸な事故があり、王が亡くなり、王太子が下半身不随の怪我を負ったため、急遽、父上が王となったこと。」

 紅茶を飲んでシリルは続ける。

「ここからは、色々な所で聞いた話からの想像。王妃は、王妃教育もしていない子爵令嬢が王妃になるなど無理だから、自分がシビリアン様の妃となるしかないだろう、と言った。父は、自分も王としての教育を受けてきている訳ではない、兄に教わりながら頑張るので、妻も一緒に頑張ろうと思っている、と断った。すでに私がお腹にいることを知った王妃は、では、王妃としての役割を果たしてあげましょう、と言ったらしい。その女は側室にして、王妃という役職に就いて差し上げる、と。公爵家の娘であるから、実家とその繋がりの有力貴族の突き上げもひどく、何の後ろ楯もない父は、その提案を断り切れなくなった。仕方なく、王妃という役職に就いてもらうことにした。夫婦として過ごすことはない、との魔力を込めた誓いもたてた。実際、二人きりで過ごすところを見たことがない、との噂だ。しかし、シャルルは生まれた。父は、自分の子で無い自信がある。王妃とその実家はシャルルを王子だと言い張り、王とするべく様々な手を尽くしてきた。父は、私と母上を守るために、国と民を守るために、頑張った。」

 シリルが言葉を切って紅茶を飲んだので、ジュストとリュシルも紅茶を啜る。

「モーリスは父上の友人で、宰相府を動かしてくれているが、爵位が低いので苦労している。父上は、立太子の儀に合わせて起こるだろう騒動に乗じて、何とか宰相にしたい、のだと思う。私がジュストを連れてきたから、二人はとても喜んでいる。」

「……俺なんて、まだ何にもしていないです。子どもだし、入ったばかりだし。デュラン様の後ろでうろうろしているだけのような。」

「手伝いを付けてもらえなかった、何かを頼んでもしてもらえなかったモーリスからすれば、一緒に仕事してくれる子どもは可愛くて仕方ないみたいだよ。」

 はー、と息を吐いてシリルは伸びをした。

「私も、その手紙を君に一緒に読んでもらえなかったら、地味に落ち込んでいたと思うよ。」

「私も読んでもよろしいですか?」

「もちろん。」

 リュシルの珍しいおねだりに驚きつつ、シリルは手紙を渡す。読み終えたリュシルは、くすくす笑った。

「変わったお方なのですね。」

「リュカ。」

 シリルはリュシルを近くに呼んで抱きしめた。

「お茶会の時は、頼んだよ。きっと生きて帰ろう。」

 王妃の手紙に一緒に入っていたお茶会の案内に目を落として、ジュストはため息をついた。
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