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48 命尽きるまで忠誠を
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シャルルの浄化をしようという王の言葉に、リュシルは嬉しそうに頷いた。シリルは心配気な視線を向ける。
「最近、体調は?食事はきちんと食べている?」
「はい。」
躊躇いなく返ってくる返事へ、はあ、とため息をつくと、シリルは立ち上がってリュシルを抱きしめた。
「王宮へ来てから痩せている。私が気付かないとでも?」
「体調は、悪くないです。その、食事もその、それなりに食べて……。」
シリルはリュシルを離さないまま父の方を見た。
「浄化はひどく疲れるもののようで、私を浄化した後、倒れてしまったのです。リュカは、もともと体力が無い上、見張っていないとちゃんと食べない。王宮に来てから、なかなか一緒に食事が取れないから心配してたんだが……。学園と違って座っていられる時間も短いし。」
ふむ、と王は息子を見た。報告は受けている。この侍従は本当は令嬢ではなかったか。
うん、まずいな。
早急に、婚約者選びを始めないと。
そんな心の中は見事に隠して、王は話を進めた。
「つまり、お前はどうしたいのだ?」
「浄化はしましょう。ただ、浄化の後しばらくでもいいので、なるべくリュカとジュストと共に食事する許可がほしい。」
「ジュスト?ああ、モーリスのところの。」
「私も、その方がたくさん食べられますし。とにかく王宮に帰ってから、リュカがいつ倒れるかと不安で。」
「分かった。少しくらいなら、お前の息抜きになるだろう。リュカ、できるのなら早急にシャルルの浄化を頼む。」
「はい。」
三人でシャルルの部屋へと訪れると、病み上がりに王妃の部屋での話で疲れ果てたのだろう、ベッドで真っ青な顔で寝ていた。
ちょうど良いので、すぐにリュシルはベッド横に跪き、シャルルの手を取った。
人払いをしてあったので、王とシリルだけが見守る中、しばらくしてリュシルが口元に手をやる。う、うえ、と苦しそうな声がして手のひらに小さな丸い玉が出てきた。禍々しい紫と黒の斑色だ。
シャルルの顔が呼吸が、すっと穏やかになるのを王は驚いて見つめていた。疑っていたわけではないが、これは凄い技だな。
「終わりました。」
紙のように白い顔色になって、リュシルが言った。手の上の玉を差し出す。
「もう大丈夫です。」
よほどほっとしたのだろう。薄く笑っている。シリルが近寄って、その玉を摘まんだ。
「私のよりだいぶ小さい。一つだし。」
「はい。シリル殿下のは、本当に酷うございました。よく、ご無事でした。」
リュシルが言うのへ苦笑で返す。
「ありがとう、リュカ。父上、リュカを休ませたいので部屋へ戻ってもよろしいか?」
王は、その声にはっとした。
「ああ、もちろんだ。リュカ、ご苦労。報酬は考える。私はもう少しここにいよう。」
「報酬。楽しみにしております。ありがとうございます。」
頭を下げたリュシルは、もう立ち上がれなかった。シリルが脇の下に手を入れて肩を貸す。
王は部屋の外にいたマクシムを呼んだが、シリルは素知らぬ顔でリュシルを支えて出ていった。
シャルルが、とてもすっきりと目を覚ますと、王がベッドの側に椅子を置いて座っていた。仕事をしているらしく、手に書類を持って読んでいる。
父上と兄上はよく似ているのだな、とその横顔を眺めて思ってから、先ほどの母の話を思い出して、落ち込んだ。そうだった、もう……。
ふいに王と目が合う。
にこりと笑って王は言った。
「体調はどうだ?高度な秘密の治療をしたのだが、効いているか?」
高度な秘密の治療。私などのために。シャルルは涙が滲むのを止められなかった。
「どうして。どうして私などのために。」
「子どもの治療をしたいと思うのは当然だろう?」
「でも、私は。」
体を起こしたシャルルは、背筋を伸ばして頭を下げた。
「お願いします、陛下。私を王宮からお出しください。父がどこの誰とも知れない、素性の分からない子どもです。こんなところでお世話をされていて、よい訳がない。私が、耐えられない……。」
「……跡取りのいない伯爵家へ養子となるか。お前の血筋は、公爵家の孫なのだから、気にすることはない。養子にもらう筈だった遠縁の子どもを、事故で亡くして落ち込んでいる方がいてな。しばらくそちらでお世話になって、戻れそうなら学園へ戻るがよい。名も、変えたいなら変えてよい。」
シャルルは、深く深く頭を下げた。
「……もし、もし色々なことが落ち着いたなら。」
父と思っていた人の優しい声。
「シリルの仕事を手伝ってやってほしい。何十年先でもいい。どんな形でもいい。味方で、いてやってくれ。」
シャルルは、頭を下げたまま静かに涙をこぼした。
私のことが好きか、と聞いた兄。好きだと答えたら、私もだと言ってくれた人。
血の繋がった母よりずっと、愛してくれていた人々。
「約束します。この命尽きるまで、シリル殿下に忠誠を。」
「最近、体調は?食事はきちんと食べている?」
「はい。」
躊躇いなく返ってくる返事へ、はあ、とため息をつくと、シリルは立ち上がってリュシルを抱きしめた。
「王宮へ来てから痩せている。私が気付かないとでも?」
「体調は、悪くないです。その、食事もその、それなりに食べて……。」
シリルはリュシルを離さないまま父の方を見た。
「浄化はひどく疲れるもののようで、私を浄化した後、倒れてしまったのです。リュカは、もともと体力が無い上、見張っていないとちゃんと食べない。王宮に来てから、なかなか一緒に食事が取れないから心配してたんだが……。学園と違って座っていられる時間も短いし。」
ふむ、と王は息子を見た。報告は受けている。この侍従は本当は令嬢ではなかったか。
うん、まずいな。
早急に、婚約者選びを始めないと。
そんな心の中は見事に隠して、王は話を進めた。
「つまり、お前はどうしたいのだ?」
「浄化はしましょう。ただ、浄化の後しばらくでもいいので、なるべくリュカとジュストと共に食事する許可がほしい。」
「ジュスト?ああ、モーリスのところの。」
「私も、その方がたくさん食べられますし。とにかく王宮に帰ってから、リュカがいつ倒れるかと不安で。」
「分かった。少しくらいなら、お前の息抜きになるだろう。リュカ、できるのなら早急にシャルルの浄化を頼む。」
「はい。」
三人でシャルルの部屋へと訪れると、病み上がりに王妃の部屋での話で疲れ果てたのだろう、ベッドで真っ青な顔で寝ていた。
ちょうど良いので、すぐにリュシルはベッド横に跪き、シャルルの手を取った。
人払いをしてあったので、王とシリルだけが見守る中、しばらくしてリュシルが口元に手をやる。う、うえ、と苦しそうな声がして手のひらに小さな丸い玉が出てきた。禍々しい紫と黒の斑色だ。
シャルルの顔が呼吸が、すっと穏やかになるのを王は驚いて見つめていた。疑っていたわけではないが、これは凄い技だな。
「終わりました。」
紙のように白い顔色になって、リュシルが言った。手の上の玉を差し出す。
「もう大丈夫です。」
よほどほっとしたのだろう。薄く笑っている。シリルが近寄って、その玉を摘まんだ。
「私のよりだいぶ小さい。一つだし。」
「はい。シリル殿下のは、本当に酷うございました。よく、ご無事でした。」
リュシルが言うのへ苦笑で返す。
「ありがとう、リュカ。父上、リュカを休ませたいので部屋へ戻ってもよろしいか?」
王は、その声にはっとした。
「ああ、もちろんだ。リュカ、ご苦労。報酬は考える。私はもう少しここにいよう。」
「報酬。楽しみにしております。ありがとうございます。」
頭を下げたリュシルは、もう立ち上がれなかった。シリルが脇の下に手を入れて肩を貸す。
王は部屋の外にいたマクシムを呼んだが、シリルは素知らぬ顔でリュシルを支えて出ていった。
シャルルが、とてもすっきりと目を覚ますと、王がベッドの側に椅子を置いて座っていた。仕事をしているらしく、手に書類を持って読んでいる。
父上と兄上はよく似ているのだな、とその横顔を眺めて思ってから、先ほどの母の話を思い出して、落ち込んだ。そうだった、もう……。
ふいに王と目が合う。
にこりと笑って王は言った。
「体調はどうだ?高度な秘密の治療をしたのだが、効いているか?」
高度な秘密の治療。私などのために。シャルルは涙が滲むのを止められなかった。
「どうして。どうして私などのために。」
「子どもの治療をしたいと思うのは当然だろう?」
「でも、私は。」
体を起こしたシャルルは、背筋を伸ばして頭を下げた。
「お願いします、陛下。私を王宮からお出しください。父がどこの誰とも知れない、素性の分からない子どもです。こんなところでお世話をされていて、よい訳がない。私が、耐えられない……。」
「……跡取りのいない伯爵家へ養子となるか。お前の血筋は、公爵家の孫なのだから、気にすることはない。養子にもらう筈だった遠縁の子どもを、事故で亡くして落ち込んでいる方がいてな。しばらくそちらでお世話になって、戻れそうなら学園へ戻るがよい。名も、変えたいなら変えてよい。」
シャルルは、深く深く頭を下げた。
「……もし、もし色々なことが落ち着いたなら。」
父と思っていた人の優しい声。
「シリルの仕事を手伝ってやってほしい。何十年先でもいい。どんな形でもいい。味方で、いてやってくれ。」
シャルルは、頭を下げたまま静かに涙をこぼした。
私のことが好きか、と聞いた兄。好きだと答えたら、私もだと言ってくれた人。
血の繋がった母よりずっと、愛してくれていた人々。
「約束します。この命尽きるまで、シリル殿下に忠誠を。」
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