【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第二章 人として生きる

12 成人 9

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 お昼ご飯は、美味しい雑炊を乙羽おとわが持ってきてくれた。

「なる。一人で食べられる?」

 もちろん。

「そう? 一緒にいなくても、大丈夫なの? 食べ終わるまで、いてあげようか?」

 なんで?
 ふる、と首を横に振ると、乙羽おとわは困ったような顔をして立ち上がった。

「ちゃんと食べるのよ?」

 食べるよ。もう、自分で食べられるようになったよ。
 乙羽が出ていった静かな部屋で、湯気の上がった雑炊をふーふー冷ます。
 一口食べて、喉が詰まった。ちっとも味がしない。なんで? 水を飲んでみる。冷たいのに、美味しくなかった。
 お腹空いてなかったかなー。スプーンを置いて、ソファにもたれかかる。胸の辺りがすーすーする。
 よく分からない。
 静かだなあ、と目を閉じたら、いつの間にか寝ていたらしい。

「調子悪いのか」

 そっと、体に毛布が掛けられて目を開けた。さい? 元気だよ。

「ご飯、食べてないのか? 俺では、分からないな。生松いくまつさまを呼んでくるから、待っててくれ」
「元気」
「寝ててもいいから。待ってな」

 起き上がって言ったけれど、さいが出ていって、生松いくまつが来てしまった。帰ってきてたの?

「おかえり」

 最近覚えた言葉を言ってみる。出かけてた人が帰って来たら、おかえりって言うんだって。

「はい。ただいま」

 で、帰ってきた人は、ただいまって言う。俺は、出かけないから、おかえりばっかりだけど。
 生松いくまつは、そっと俺の頬を手で挟んで、右目の下を引っ張った。口を開けて、って言われてあーんと開ける。服をめくって、全身をチェック。

「元気」

 って言ったんだけど、優しく笑うだけだ。

「元気な人は、ご飯を食べるんですよ」

 食べてなかったっけ?
 ま、いいや。生松いくまつに聞きたいことあったんだー。

「ちちって何?」
「ちち。……ああ、父ですか。九条さまかな。あの方は、私の養い親になってくださったのですよ。私は大人なので、書類上のお話ですが」
「やしない親?」
「お父さん、ですね。子どもの生活の面倒を見る人。私は大人ですが、名字をくれて、家族になってくれたのです。そのお陰で医師免許も取ることができて」

 ちち、が知りたかっただけなのに、謎が増えた……。仕方ないので、曖昧に笑っておく。

「……どこが、分からなかったかな。困りましたね。私は、この年齢としになって初めて父ができたので、上手く説明できていないのかもしれませんね」

 別に、いいよ。
 九条さまのお話は、元気で面白かっただけ。

「食べませんか?」

 困り顔の生松いくまつが、雑炊をスプーンにのせて俺の口へ持ってくる。
 好きなんだけどなー。
 俺も、自分の口が開かないことを困ってた。
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