30 / 1,325
第二章 人として生きる
12 成人 9
しおりを挟む
お昼ご飯は、美味しい雑炊を乙羽が持ってきてくれた。
「なる。一人で食べられる?」
もちろん。
「そう? 一緒にいなくても、大丈夫なの? 食べ終わるまで、いてあげようか?」
なんで?
ふる、と首を横に振ると、乙羽は困ったような顔をして立ち上がった。
「ちゃんと食べるのよ?」
食べるよ。もう、自分で食べられるようになったよ。
乙羽が出ていった静かな部屋で、湯気の上がった雑炊をふーふー冷ます。
一口食べて、喉が詰まった。ちっとも味がしない。なんで? 水を飲んでみる。冷たいのに、美味しくなかった。
お腹空いてなかったかなー。スプーンを置いて、ソファにもたれかかる。胸の辺りがすーすーする。
よく分からない。
静かだなあ、と目を閉じたら、いつの間にか寝ていたらしい。
「調子悪いのか」
そっと、体に毛布が掛けられて目を開けた。斎? 元気だよ。
「ご飯、食べてないのか? 俺では、分からないな。生松さまを呼んでくるから、待っててくれ」
「元気」
「寝ててもいいから。待ってな」
起き上がって言ったけれど、斎が出ていって、生松が来てしまった。帰ってきてたの?
「おかえり」
最近覚えた言葉を言ってみる。出かけてた人が帰って来たら、おかえりって言うんだって。
「はい。ただいま」
で、帰ってきた人は、ただいまって言う。俺は、出かけないから、おかえりばっかりだけど。
生松は、そっと俺の頬を手で挟んで、右目の下を引っ張った。口を開けて、って言われてあーんと開ける。服をめくって、全身をチェック。
「元気」
って言ったんだけど、優しく笑うだけだ。
「元気な人は、ご飯を食べるんですよ」
食べてなかったっけ?
ま、いいや。生松に聞きたいことあったんだー。
「ちちって何?」
「ちち。……ああ、父ですか。九条さまかな。あの方は、私の養い親になってくださったのですよ。私は大人なので、書類上のお話ですが」
「やしない親?」
「お父さん、ですね。子どもの生活の面倒を見る人。私は大人ですが、名字をくれて、家族になってくれたのです。そのお陰で医師免許も取ることができて」
ちち、が知りたかっただけなのに、謎が増えた……。仕方ないので、曖昧に笑っておく。
「……どこが、分からなかったかな。困りましたね。私は、この年齢になって初めて父ができたので、上手く説明できていないのかもしれませんね」
別に、いいよ。
九条さまのお話は、元気で面白かっただけ。
「食べませんか?」
困り顔の生松が、雑炊をスプーンにのせて俺の口へ持ってくる。
好きなんだけどなー。
俺も、自分の口が開かないことを困ってた。
「なる。一人で食べられる?」
もちろん。
「そう? 一緒にいなくても、大丈夫なの? 食べ終わるまで、いてあげようか?」
なんで?
ふる、と首を横に振ると、乙羽は困ったような顔をして立ち上がった。
「ちゃんと食べるのよ?」
食べるよ。もう、自分で食べられるようになったよ。
乙羽が出ていった静かな部屋で、湯気の上がった雑炊をふーふー冷ます。
一口食べて、喉が詰まった。ちっとも味がしない。なんで? 水を飲んでみる。冷たいのに、美味しくなかった。
お腹空いてなかったかなー。スプーンを置いて、ソファにもたれかかる。胸の辺りがすーすーする。
よく分からない。
静かだなあ、と目を閉じたら、いつの間にか寝ていたらしい。
「調子悪いのか」
そっと、体に毛布が掛けられて目を開けた。斎? 元気だよ。
「ご飯、食べてないのか? 俺では、分からないな。生松さまを呼んでくるから、待っててくれ」
「元気」
「寝ててもいいから。待ってな」
起き上がって言ったけれど、斎が出ていって、生松が来てしまった。帰ってきてたの?
「おかえり」
最近覚えた言葉を言ってみる。出かけてた人が帰って来たら、おかえりって言うんだって。
「はい。ただいま」
で、帰ってきた人は、ただいまって言う。俺は、出かけないから、おかえりばっかりだけど。
生松は、そっと俺の頬を手で挟んで、右目の下を引っ張った。口を開けて、って言われてあーんと開ける。服をめくって、全身をチェック。
「元気」
って言ったんだけど、優しく笑うだけだ。
「元気な人は、ご飯を食べるんですよ」
食べてなかったっけ?
ま、いいや。生松に聞きたいことあったんだー。
「ちちって何?」
「ちち。……ああ、父ですか。九条さまかな。あの方は、私の養い親になってくださったのですよ。私は大人なので、書類上のお話ですが」
「やしない親?」
「お父さん、ですね。子どもの生活の面倒を見る人。私は大人ですが、名字をくれて、家族になってくれたのです。そのお陰で医師免許も取ることができて」
ちち、が知りたかっただけなのに、謎が増えた……。仕方ないので、曖昧に笑っておく。
「……どこが、分からなかったかな。困りましたね。私は、この年齢になって初めて父ができたので、上手く説明できていないのかもしれませんね」
別に、いいよ。
九条さまのお話は、元気で面白かっただけ。
「食べませんか?」
困り顔の生松が、雑炊をスプーンにのせて俺の口へ持ってくる。
好きなんだけどなー。
俺も、自分の口が開かないことを困ってた。
2,203
あなたにおすすめの小説
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる
水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。
「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」
過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。
ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。
孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。
イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした
天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです!
元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。
持ち主は、顔面国宝の一年生。
なんで俺の写真? なんでロック画?
問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。
頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ!
☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。
炊き出しをしていただけなのに、大公閣下に溺愛されています
ぽんちゃん
BL
希望したのは、医療班だった。
それなのに、配属されたのはなぜか“炊事班”。
「役立たずの掃き溜め」と呼ばれるその場所で、僕は黙々と鍋をかき混ぜる。
誰にも褒められなくても、誰かが「おいしい」と笑ってくれるなら、それだけでいいと思っていた。
……けれど、婚約者に裏切られていた。
軍から逃げ出した先で、炊き出しをすることに。
そんな僕を追いかけてきたのは、王国軍の最高司令官――
“雲の上の存在”カイゼル・ルクスフォルト大公閣下だった。
「君の料理が、兵の士気を支えていた」
「君を愛している」
まさか、ただの炊事兵だった僕に、こんな言葉を向けてくるなんて……!?
さらに、裏切ったはずの元婚約者まで現れて――!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる