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第三章 幸せの行方
56 成人 64
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息が苦しい。口が痛い。手を口に突っ込んでいるのに気付いて、そろそろと取り出す。手も痛い。
また、絨毯の上かな。
すぐに、抱き上げられる感触がした。目を開けなくても分かる。嗅ぎ慣れた匂いに、ほっとしてすり寄る。体中に、力が入っていたのだろう。疲れて、くたりともたれかかると、ぎゅうぎゅうと抱き締めてくれた。
「ひいろぉ。」
「おう。」
「ひいろぉ。」
「はいよ。」
喉が痛い。
「こおり、食べる。」
「水にしろ。」
誰かが、緋色に水を渡したのか、すぐに唇が触れあって、口に水が入ってきた。あんまり冷たくない。口のあちこちが痛い。
「痛い……。」
「生松呼ぶから待ってろ。」
「いい。こおり食べたい。」
目を開けると、泣きそうな顔の緋色が見えた。
もう一回、水を口に含んでちゅーしてくれる。
美味しい。
口を離すと、緋色の口に血が付いていた。
「緋色、血が。」
「お前のだよ。」
「なら、いいや。」
怒ったように、唇がべろべろと舐められた。
痛い。
「痛いー。」
そういえば、まだ寝間着に着替えてない。お風呂は……?どうしたっけ?俺、寝ちゃったんだっけ?
「殿下。」
常陸丸の声がした。
「ああ、下がれ。」
そちらを向こうとすると、見れないように頭を押さえられた。
なんで?
部屋から、人の出ていく気配がした。常陸丸が誰かを引きずって出て行ったようだ。ずっと、部屋の中にいたの?珍しいね……。
入れ替わりに生松が来た。俺の服を脱がして、温かいお湯で絞ったタオルで、丁寧に体を拭いてくれた。気持ち良くて、うとうとしてくる。
「殿下……。」
生松が緋色に何か言った。緋色が少し考えてから、部屋を出ていく。
「何……?」
「すぐに帰って来られますよ。」
「ん……。」
右手に何か塗られて、包帯が巻かれた。大袈裟だなあと、ちょっと笑っちゃう。
「そんなに、痛くないのに……。」
「心に巻けないから、ここに。せめて、ここに……。」
生松の、囁くような小さな声を聞きながら、気持ちいい布団に寝転がっていたら、いつの間にか眠っていた。
また、絨毯の上かな。
すぐに、抱き上げられる感触がした。目を開けなくても分かる。嗅ぎ慣れた匂いに、ほっとしてすり寄る。体中に、力が入っていたのだろう。疲れて、くたりともたれかかると、ぎゅうぎゅうと抱き締めてくれた。
「ひいろぉ。」
「おう。」
「ひいろぉ。」
「はいよ。」
喉が痛い。
「こおり、食べる。」
「水にしろ。」
誰かが、緋色に水を渡したのか、すぐに唇が触れあって、口に水が入ってきた。あんまり冷たくない。口のあちこちが痛い。
「痛い……。」
「生松呼ぶから待ってろ。」
「いい。こおり食べたい。」
目を開けると、泣きそうな顔の緋色が見えた。
もう一回、水を口に含んでちゅーしてくれる。
美味しい。
口を離すと、緋色の口に血が付いていた。
「緋色、血が。」
「お前のだよ。」
「なら、いいや。」
怒ったように、唇がべろべろと舐められた。
痛い。
「痛いー。」
そういえば、まだ寝間着に着替えてない。お風呂は……?どうしたっけ?俺、寝ちゃったんだっけ?
「殿下。」
常陸丸の声がした。
「ああ、下がれ。」
そちらを向こうとすると、見れないように頭を押さえられた。
なんで?
部屋から、人の出ていく気配がした。常陸丸が誰かを引きずって出て行ったようだ。ずっと、部屋の中にいたの?珍しいね……。
入れ替わりに生松が来た。俺の服を脱がして、温かいお湯で絞ったタオルで、丁寧に体を拭いてくれた。気持ち良くて、うとうとしてくる。
「殿下……。」
生松が緋色に何か言った。緋色が少し考えてから、部屋を出ていく。
「何……?」
「すぐに帰って来られますよ。」
「ん……。」
右手に何か塗られて、包帯が巻かれた。大袈裟だなあと、ちょっと笑っちゃう。
「そんなに、痛くないのに……。」
「心に巻けないから、ここに。せめて、ここに……。」
生松の、囁くような小さな声を聞きながら、気持ちいい布団に寝転がっていたら、いつの間にか眠っていた。
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