【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第四章 西からの迷い人

63 どこかにきっと  成人

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 披露宴って、楽しい。色んな人が前に立って、お話したり、歌を歌ったり踊ったり、あちこちで楽しくお話していて、笑い声が聞こえる。おめでとう、の声が溢れて、明るかった。
 お料理も美味しい。熱すぎないから食べやすいし、緋色ひいろが食べられるものを教えてくれるから安心。こんなに美味しいのに野花のばなは全然食べなくて、もったいない。
 茶碗蒸しをスプーンですくって、ふーふーする。湯気が出てるのは熱い。いつも広末ひろすえが作ってくれる茶碗蒸しより具が多くて、卵の部分をたくさん食べたい俺は、具を避けてすくう。

「堅いものがあるかもしれないから、気を付けろよ。」  

 大丈夫。避けてる。
 緋色ひいろはもう茶碗蒸しを終わって、次の炊き込みご飯をぱくぱく食べてる。何か匂いが強い。

「松茸ご飯か。成人なるひとには、匂いがきついかな。」

 さすが緋色ひいろ。俺のこと分かってるなあ。大好き。

「殿下!聞いていらっしゃるのか?」

 同じ机のおじさんは、勝手にしゃべって、笑ったり怒ったりしてうるさい。お酒、飲みすぎたんじゃない?

「ああ?何だ?」
「単刀直入に言いましょう。野花のばなを殿下の嫁に差し上げます。これ以上の縁はありますまい。どちらにも益のある話です。」
「狂ったか?」
「おかしいのは殿下の方です。いつまで、その人形を嫁だという狂言を続けられるおつもりか!」
「へえ?いつまでと言われたら、死ぬまで、だな。」

 ん?何が?
 緋色ひいろを見上げると、額にちゅっと口がつけられた。へへ。嬉しいけど、どうしたの?

「茶碗蒸し食べられたか?デザートがきてるぞ。」

 デザート、食べる。何かな。アイスクリームかな。
 お皿の上には、大きな粒のぶどうが、やわらかそうなゼリーの中に閉じ込められてきらきらしてる綺麗なものが乗っていた。

「うわあ、きれい。」
「これなら俺も食えるなあ。」

 ぶどうの甘味は自然な甘さ。緋色ひいろも美味しい。いいねえ。

「殿下!」

 お酒の所為なのか真っ赤になったおじさんが大きな声を上げる。
 従業員が困ったように近くに寄ってきたけど、声をかけられずにいる。
 食事が終わった人が、立ち歩いて結婚した二人に挨拶に行ったり、他の人に挨拶したりする時間のようだ。こちらにも、にこやかに近付いてくる格好いい人がいた。わ、すごく格好いい。見たことある顔に似てる。横にいる女の人は伴侶さんかな。

緋色ひいろ殿下。お久しぶりです。」

 二人で、綺麗な包拳礼をしてからすぐに手を下ろす。

朱可しゅかさん。久しぶりだ。茉璃まつりも。」
「はい、殿下。お久しぶりでございます。」

 俺もご挨拶しなきゃ。
 スプーンを置いて、立ち上がる。

「こんにちは。成人なるひとです。緋色ひいろの伴侶です。」

 ぺこり、と頭を下げると、まあ、と茉璃まつりさんの声がした。

「はじめまして。七条朱可しゅかです。」
「はじめまして。朱可しゅかの伴侶の茉璃まつりと申します。」

 二人とも、にこにこと俺を見ている。この笑顔は好き。
 あ、分かった。

緋見呼ひみこさま!」
「よく母に似てると言われます。」
赤璃あかり緋椀ひまりの兄上だよ。」

 親子や兄弟は、どこか似てる人が多い。繋がってるよ、と全身で示しているようでいいなあ、と思う。
 俺にも、似てる誰かが居たのかな……。
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