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第四章 西からの迷い人
81 三郎 成人
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「力丸と半助は、私の護衛なんだけどね。」
朱実殿下は、溜め息をつく。
「まあ、今回は仕方ない。貸すよ。緋椀と三雲は七条に帰ってもらうから、遠征はちょっと困る。」
半助って、いつの間に朱実殿下の護衛になってたの?
最近、何か仕事してるな、とは思ってたけど。軍服着てるし。
でも、犯人を見つけるための囮、とか何とか言ってなかったっけ?ん?
「臣も……。」
弐角が、心配そうに呟いた。
「食べ物が成人の口に合わなかった時に、作れる奴を連れていっとけば安心だろ?」
「また緋色は、そんな憎まれ口叩いて。」
朱実殿下が、くすと笑う。
使用人が部屋に入って来はじめた。手に、夜ご飯の盆を持っている者は、お客様の前に置いて、頭を下げて、また取りに行く。
「あ……。」
「三郎、どうかした?」
盆を手に、困ったように立ち止まる三郎に、てきぱきと動いていた乙羽が声をかけた。
「一二三……。」
弐角さまが驚いた顔で、三郎を見る。
頭に、料理中の壱臣みたいに布を巻いて使用人の服を着た三郎は、うつ向いて、盆を朱実殿下の前に置いた。
朱実殿下が、じっとその顔を見ている。
「緋色の名付けって微妙だよね。」
「あら、成人、は素敵よ。」
「たま、と成人の二択でしたけどね。」
朱実殿下と赤璃さまの会話に、盆を持ってきた常陸丸が割り込んだ。
「なる。運が良かったわね……。」
「三郎は他に候補は無かったのか?」
「本当は三番目だっていうから、一も二も入っててややこしいのを、分かりやすい名前にしたんだろうが。」
「三を入れた何か、もう少しこう、無かったか?」
「……何がおかしいんだよ?」
「いや、そもそも三を入れなくても良くない?行方知れずの人間の偽名なんだから、数字入れない方がいいんじゃない?」
「偽名や無いです。」
朱実殿下と緋色の言い争いに、うつ向いてそこに居た三郎が小さな声を挟んだ。
「ん?」
「その……。もうこれが名前です。」
「そう。」
「三を、入れてもろて嬉しかったです。ほんまは、三でも何でもない、どこの馬の骨とも知れん男なんやから。」
顔を上げた三郎は、綺麗な仕草で頭を下げた。
「お目汚しを致しました。」
「話は、聞いていた?」
「……?いえ。」
「事の顛末を、見届ける気はある?」
「それは……。」
三郎が言葉を詰まらせた。
「やはり、一二三も?」
弐角が不安な声を上げると、緋色が面倒臭そうに返事をした。
「だーかーら。三郎だっつってんだろ?そんなに、俺の付けた名前が変かよ?」
あはは。
俺が笑ったら、緋色が頬っぺたをつまんだ。
やめてー。
「一二三なんて、もういないんだっての。」
朱実殿下は、溜め息をつく。
「まあ、今回は仕方ない。貸すよ。緋椀と三雲は七条に帰ってもらうから、遠征はちょっと困る。」
半助って、いつの間に朱実殿下の護衛になってたの?
最近、何か仕事してるな、とは思ってたけど。軍服着てるし。
でも、犯人を見つけるための囮、とか何とか言ってなかったっけ?ん?
「臣も……。」
弐角が、心配そうに呟いた。
「食べ物が成人の口に合わなかった時に、作れる奴を連れていっとけば安心だろ?」
「また緋色は、そんな憎まれ口叩いて。」
朱実殿下が、くすと笑う。
使用人が部屋に入って来はじめた。手に、夜ご飯の盆を持っている者は、お客様の前に置いて、頭を下げて、また取りに行く。
「あ……。」
「三郎、どうかした?」
盆を手に、困ったように立ち止まる三郎に、てきぱきと動いていた乙羽が声をかけた。
「一二三……。」
弐角さまが驚いた顔で、三郎を見る。
頭に、料理中の壱臣みたいに布を巻いて使用人の服を着た三郎は、うつ向いて、盆を朱実殿下の前に置いた。
朱実殿下が、じっとその顔を見ている。
「緋色の名付けって微妙だよね。」
「あら、成人、は素敵よ。」
「たま、と成人の二択でしたけどね。」
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「なる。運が良かったわね……。」
「三郎は他に候補は無かったのか?」
「本当は三番目だっていうから、一も二も入っててややこしいのを、分かりやすい名前にしたんだろうが。」
「三を入れた何か、もう少しこう、無かったか?」
「……何がおかしいんだよ?」
「いや、そもそも三を入れなくても良くない?行方知れずの人間の偽名なんだから、数字入れない方がいいんじゃない?」
「偽名や無いです。」
朱実殿下と緋色の言い争いに、うつ向いてそこに居た三郎が小さな声を挟んだ。
「ん?」
「その……。もうこれが名前です。」
「そう。」
「三を、入れてもろて嬉しかったです。ほんまは、三でも何でもない、どこの馬の骨とも知れん男なんやから。」
顔を上げた三郎は、綺麗な仕草で頭を下げた。
「お目汚しを致しました。」
「話は、聞いていた?」
「……?いえ。」
「事の顛末を、見届ける気はある?」
「それは……。」
三郎が言葉を詰まらせた。
「やはり、一二三も?」
弐角が不安な声を上げると、緋色が面倒臭そうに返事をした。
「だーかーら。三郎だっつってんだろ?そんなに、俺の付けた名前が変かよ?」
あはは。
俺が笑ったら、緋色が頬っぺたをつまんだ。
やめてー。
「一二三なんて、もういないんだっての。」
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