【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第五章 それは日々の話

185 新年の宴4  朱実

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「ありがとう。よく分かった。新しい九条家を歓迎しよう」

 内面は押し殺して、にっこり笑って告げると、五人はもう一度頭を下げてから腰を下ろした。

「これほどあきらかな偽装結婚を認めるのか?」

 赤虎せきとらは、つけ入る隙を見つけたらしい。
 とりあえず、と料理に手をつけ始めた周りをよそに、上がりそうになる口角を抑えながらまだ声を上げる。
 偽装結婚、ねえ。
 わざわざ男同士で?
 知らん顔をして料理に手をつけていると、七条の席の作治さくじが、すみません、と声を上げた。戦場で緋色ひいろの後始末を引き受けていた男は、初参加の場にも動じているようには見えない。緋色ひいろの部下であった後、緋見呼ひみこ叔母上の義理の息子となるような男は肝の座りかたが違う。

「偽装結婚とは、何故そのように思われるので?」
「はっ」

 赤虎せきとらが、向かい側の席の下座近くに座る男を見て、言葉を吐き捨てた。行儀の悪いことだ。

「お前ごときに、口を開く許可を出した覚えはない」

 作治さくじは、気にした風もなく口を閉じたが、気にした人は他にいた。赤虎せきとらの馬鹿は死ぬまで治らないものなのか。お前ごとき、と言った人物が、どこの親族として参加しているのか見えないのかな。まだ酒も一口しか飲んでいないのに。

「うちの婿をお前ごときとは、口が過ぎる。赤虎せきとら、ちいとこっちゃ来い」
緋見呼ひみこさま。主人が失礼を致しました。まずは心尽くしのお食事を済ませてから、そちらへ責任を持ってお連れ致します」

 叔母上の声に険しい響きが含まれかけるのを、寧子やすこがとりなす。赤虎せきとらが身を縮めて、寧子やすこの陰に隠れる。情けない。

寧子やすこちゃん、今日の着物、とっても素敵。凉乃絵すずのえさんの見立てかしら?似合ってるわ。ああ、やっぱり赤虎せきとらはいらないわ。食事の後、あなただけこっちにおいで」
「はい、ありがとうございます」
「五条はどう?あれ?お茶なの?もしかして?」

 叔母上の言葉に驚いて、斜め向かいの寧子やすこを見れば、温かい茶を淹れた器が手元に置いてある。

「あ、いいな。私も、温かいお茶を貰おう。なるもいる?」
「いる」

 どうせ温かいうちには飲めないくせに、この人形は。

「もう少ししてからお知らせしようと思っていたのですが」

 寧子やすこが、いつものように淡々と言葉を紡いだ。

「懐妊致しました」
「まあ!おめでとう!」
「なんと、めでたい!」

 叔母上と利胤としたねの弾んだ声。他からも、おめでとう、の声がかかって、場は一気に盛り上がった。寧子やすこの義母の凉乃絵すずのえが、すっかり相好を崩している。

「知っていたのか?」
「うちの子と同級生ね。心強いわ」

 けろり、と答える赤璃あかり。むっとわき上がる不快感を抑えて、

「教えて欲しかったな」

 と、笑う。知らないことがあるということが、不快だ。今日は、何ともやられっぱなしのようで気分が悪い。赤璃あかりには、不快感を抱いていることは知られているのだろう。ごめんね、と柔らかく笑んだ後、そっと腕を絡められた。

「私も、まだ聞いたばかりだったの。気付いた母上にびっくりよ」

 少し息を吐く。
 私は、まだまだ修行が足りない。
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