【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第七章 冠婚葬祭

123 それでも幸せな朝  成人

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 雨だ。三日目。ずっと少しづつ降っているから、頭が重い。前よりずっと大丈夫になったんだけど、たまに大丈夫じゃなくなる。古傷が痛くなったり、頭が重くなったりする。俺より頭の傷が酷いさいは、昨日から寝込んでいる。
 なかなか起き上がれずにいたら、常陸丸ひたちまる力丸りきまるがお部屋に来た。こんこん、と扉を叩いて、入りますよ、と言うから、いいよって言った。頭に響くから大きい声は出せなかったけど、聞こえたかな。それとも、じいやが戸を開けたのかな。二人は、すぐに部屋に入ってきた。
 緋色ひいろは寝てる。頭の上で、すうすうと寝息が聞こえてる。緋色ひいろはおうちで寝てる時は、誰か来たって気にしないし、朝もなかなか起きないんだ。

成人なるひと、大丈夫か?ああ、無理に起きなくていい。そのままいろ」

 力丸りきまるが、俺のお腹の上にあった緋色ひいろの腕を、ぽいっと避けて、そおっと抱き上げてくれる。

「頭、痛くないか?ちょっとだけ避けてような」
「大丈夫」

 揺れないように気を付けてくれてるから、全然大丈夫だよ。緋色ひいろを起こせなくて、ごめん。

「殿下。朝ですよ」

 常陸丸ひたちまるが、寝起きの悪い緋色ひいろの耳元で声をかけながら、ゆらゆらと緋色ひいろの体を揺らす。

「ああ?」

 俺が起こした時には絶対出さない不機嫌な声。ちょっとだけ、面白い。緋色ひいろは、こんなに揺らされるまで起きないくらい、しっかりぐっすり寝てるんだよね。俺も、毎朝緋色ひいろを起こすために、揺らしたり抱きついてちゅーしたり、くすぐったり色々してる。楽しいよ?俺はね。
 俺も、夜はずっと寝てるなあ。起きてない。時々、目が覚めかけても、緋色ひいろが抱っこしてくれてあったかいから、幸せだなあってまた寝ちゃう。寝てても幸せなんて、すごい。俺は、ずっとずっと幸せだよ。
 緋色ひいろは今、ちょっと幸せじゃないかも、だけど。

「休む」
「却下です」

 緋色ひいろは、常陸丸ひたちまるに甘えてるんだなあ。常陸丸ひたちまるが起こしてるって分かって、あんな声出してるんだから。
 嫌な時に嫌と言えるのは、甘えても大丈夫な相手にだけじゃからな、嫌だと思ったことはちゃんと教えてくれるとじいじは嬉しい、ってじいじが言ってた。俺は、じいじがお酒を飲んでくっついてくるのは臭くて苦手だから、それは嫌って言った。そうしたらじいじは、そうか、気を付けるって笑ってくれた。
 嫌、とか駄目、とか言ってるのに嬉しいのか、ってびっくりした。でも、じいじも笑ってたし、俺も、お酒の匂いを我慢しなくて良くなったから、言って良かった。
 緋色ひいろのは、ちょっと違う気もするけど。

成人なるひと返せ」
「駄目ですよ。顔を洗って来てください。成人なるひとは、今日は休みだぞ」
「んー」

 もう少しだけじっとしてたら、大丈夫な気がする。

「駄目だからな」

 常陸丸ひたちまる力丸りきまるが、そっくりな声で一緒に言った。
 駄目かあ。
 今日は灯可とうかと遊ぶ約束があったのに、残念。
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