【本編完結】人形と皇子

かずえ

文字の大きさ
835 / 1,325
第七章 冠婚葬祭

124 大丈夫、じゃなかった  成人

しおりを挟む
「ふむ。思うておったより、顔色は良いの」

 ベッドにいると、大丈夫じゃないみたいな気分になるので、自分のお部屋の大きなクッションにもたれてぼんやりしていた。本を読むつもりで近くに持ってきてあるけど、目を使うと何故か頭が痛くなる。目と頭も繋がってるってことかな。今度、生松いくまつに聞いてみよう。
 なんて思いながら、ぼうっとしてたら、緋見呼ひみこさまと灯可とうかがお見舞いに来てくれた。
 ごめんね。今日は俺が、灯可とうかのおうちに行く約束だったのに行けなくて。
 今日は遊びに行けなくなりました、ごめんなさいって手紙を、朝ご飯の後ですぐに書かされた。
 俺は、朝は、もう少ししたら、もしかして大丈夫になるかもしれないと思って、だから、行けるか行けないか後で決めるって言ったんだけど、今日はこの部屋から出るな、と緋色ひいろに言われてしまったんだよ。
 まあ、朝ご飯もあんまり食べれなかったし、ちょっと良くなかった。昼ご飯も残したし。何か噛むとね、それも頭が痛くて。んん?口と頭も繋がってるのかな。え。頭、すごいな。だから、頭が重いと動けなくなっちゃうんだなあ。

「大丈夫」

 って言ったら、緋見呼ひみこさまはふ、と笑った。

「大丈夫、ではないのう」
「んー」

 そうか。大丈夫ではないか。遊びに行けなかったもんね。
 でも、大丈夫だよ。

「なるは直ぐに、大丈夫、などと言うからいかん。大丈夫というのは、いつも通りに動けることじゃ。いつも通りに動けておらんから、大丈夫ではないのう」

 うーん。そうか。
 俺は、クッションにもたれかかったまま、立ち上がりもせずに、いらっしゃいって言ったもんね。

「すみません、成人なるひとさま。心配で、お見舞いに来てしまいました」

 灯可とうかは、手に持っていたバッグから、みかんの閉じ込められているゼリーを取り出して机に置いた。
 きれい。美味しそう。

「程良く旬の果物が手に入らず、缶詰めのみかんなのですが、綺麗に仕上がったので是非成人なるひとさまにと、うちの料理人が」
「きれい。一緒に食べる?」
「あ……。ええ、と……」

 灯可とうかは珍しく、すぐに返事をしなかった。

「なるが、一緒にと言うておるんじゃから、後は灯可とうかの気持ちを言えば良いだけじゃ」

 ん?何だろう?

「はい。あの、もしよろしければ、ご一緒したいです」

 もちろん。せっかくだから、一緒に食べよう。俺、今日はここから出られないから、来てくれて嬉しい。

灯可とうか。来る前も言うたじゃろ。訪ねたら迷惑かもしれん、だの、長居をせんようにせねば、だの、そんなことで悩んでおるくらいなら動いた方が早い、と」
「はい。けれど、おばあさま。心配な気持ちは私の勝手で、ここにまだいたいのも私の勝手です」
「なるは、どうじゃ?私と灯可とうかが来て、迷惑であったか?」
「んーん」

 迷惑なわけない。

「嬉しい」
「ほおら、そういうことじゃ。二人とも、きちんと言葉に出して伝えあえば、どちらも会いたかったし、一緒にいたかったことが分かったろう?灯可とうか、一人で考えておったって答えは出ん。なるが会えんほどの状態なら、見舞いの品を置いて帰ればよい。それだけのことじゃ」
「はい!」
「はい」

 緋見呼ひみこさまは、分かりやすくて好き。
しおりを挟む
感想 2,498

あなたにおすすめの小説

若頭の溺愛は、今日も平常運転です

なの
BL
『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』続編! 過保護すぎる若頭・鷹臣との同棲生活にツッコミが追いつかない毎日を送る幼なじみの相良悠真。 ホットミルクに外出禁止、舎弟たちのニヤニヤ見守り付き(?)ラブコメ生活はいつだって騒がしく、でもどこかあったかい。 だけどそんな日常の中で、鷹臣の覚悟に触れ、悠真は気づく。 ……俺も、ちゃんと応えたい。 笑って泣けて、めいっぱい甘い! 騒がしくて幸せすぎる、ヤクザとツッコミ男子の結婚一直線ラブストーリー! ※前作『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』を読んでからの方が、より深く楽しめます。

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門
BL
 月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。  しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

【完結】期限付きの恋人契約〜あと一年で終わるはずだったのに〜

なの
BL
「俺と恋人になってくれ。期限は一年」 男子校に通う高校二年の白石悠真は、地味で真面目なクラスメイト。 ある日、学年一の人気者・神谷蓮に、いきなりそんな宣言をされる。 冗談だと思っていたのに、毎日放課後を一緒に過ごし、弁当を交換し、祭りにも行くうちに――蓮は悠真の中で、ただのクラスメイトじゃなくなっていた。 しかし、期限の日が近づく頃、蓮の笑顔の裏に隠された秘密が明らかになる。 「俺、後悔しないようにしてんだ」 その言葉の意味を知ったとき、悠真は――。 笑い合った日々も、すれ違った夜も、全部まとめて好きだ。 一年だけのはずだった契約は、運命を変える恋になる。 青春BL小説カップにエントリーしてます。応援よろしくお願いします。 本文は完結済みですが、番外編も投稿しますので、よければお読みください。

借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる

水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。 「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」 過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。 ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。 孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。

【完結】僕の大事な魔王様

綾雅(りょうが)今年は7冊!
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。 「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」 魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。 俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/11……完結 2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位 2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位 2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位 2023/09/21……連載開始

ハイスペックストーカーに追われています

たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!! と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。 完結しました。

起きたらオメガバースの世界になっていました

さくら優
BL
眞野新はテレビのニュースを見て驚愕する。当たり前のように報道される同性同士の芸能人の結婚。飛び交うα、Ωといった言葉。どうして、なんで急にオメガバースの世界になってしまったのか。 しかもその夜、誘われていた合コンに行くと、そこにいたのは女の子ではなくイケメンαのグループで――。

処理中です...