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第八章 郷に入っては郷に従え
21 たくさんあるから 成人
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全部食べたら、紙に茶色か緑か選んで書く。俺は、どっちのが矢渡ので、どっちのが安次嶺のか知ってるから公平じゃない。書くのは緋色に任せよう。
「よいか?美味しいかどうかの判定ではない。見目の良さの判定でもない。どちらがより、見本である村次の品に近いかを判断せよ」
八代が言って、また少しざわりと空気が揺れた。
「各自の判断で書け。書けたら、他の者に見えぬようにして、私のところへ持ってくるように」
緋色が書いてくれた用紙を受け取ると、立ち上がって八代に渡す。
「殿下方にもご協力頂き、誠にありがとうごさいます」
「いいよー」
俺、今楽しい。
三ついっぺんに同じ料理を出されると、こんなにはっきり違いが分かるんだって分かって楽しかった。同じ材料で、同じに見える手順で作っているのに、不思議だ。面白いよ。
こうして小さくして食べたら、ちょっとづつしか食べれない俺でも、味くらべができたし、嬉しい。また何か味くらべをする時には、呼んでほしいな。
集まった用紙を一枚づつ開いていく八代を待っていると、村次がぼそっと言った。
「ほんと、力丸には感謝だな」
「ん?なに?」
「力丸が、壱臣さんの店を見つけて、俺たちを連れて行ってくれたろ?」
「え?」
「え?」
あれ?村次が俺と力丸を連れて行ってくれたんじゃなかったっけ?
「力丸だった?」
「そうだよ。力丸が、仕事場で味見させてもらっただし巻き玉子が美味しくて、俺たちも気に入りそうだからって、壱臣さんの店に連れて行ってくれたじゃないか」
「あれ?あれれ?」
「どうした?」
俺が首を傾げていると、緋色が書類から顔を上げる。
「殿下」
村次が、にこりと笑って緋色に答えた。
「成人様が、俺と力丸と初めてだし巻き玉子を食べた日のことを記憶違いしてたみたいです。力丸の案内だったのですが、俺が壱臣さんの店を見つけて案内したと思っていたようで」
「そうか」
緋色も笑う。
うーん。そう言われてみれば、そうだった気がする。力丸と村次と三人で、たくさんお出かけしたり遊んだりしたから、思い出がいっぱいで頭に収まりきらなくなってきたのかなあ。緋色との思い出なんて、それよりもっといっぱいあるから、こんなことが増えていったら困るなあ。
「ま、どっちでもいいんだけどさ」
俺が、むむむと思っているのに、村次は笑う。
「楽しかった、とか美味しかったって思い出が残ってたら、それでいい。俺が忘れてることもあるかもしれないし、そん時は成人が教えてくれるだろ?」
「うん」
そっか。誰が案内したのでも、まあいいのか。
「俺たちが二人とも忘れてることは、きっと力丸が覚えてるから、それでいいだろ」
「あは」
力丸、覚えてるかなあ。怪しいなあ。
でも、まあ、それでいっか。
「緋色も?」
「なんだ?」
「緋色も、間違えてる思い出あるかな?」
「お前とのことは、全部覚えてるぞ」
ぱちん、と緋色が片目をつぶる。
ぐぅ。格好良い。
俺も。……あ、俺はずっと片目をつぶってた。
「殿下の思い出話は、かなりいい加減ですよ」
常陸丸が、離れて座らせていた安次嶺と矢渡を机に戻して、緋色の後ろに戻っていた。
「そう?」
「そうそう。子どもの頃の話なんて、まあいい加減なもんです」
「お前だって、乙羽が絡んでなきゃ、まあいい加減だ」
「そんなことはないです」
「いいや、ある」
「俺は、殿下ほどいい加減じゃないんで」
「はっ。どの口が」
「この口ですけどー」
うん。親友同士はこんな感じでいいんだな、きっと。
「ま、それだけ、思い出が増えてきたってことだろ」
「そう?」
「そう」
それは、幸せだな。
「よいか?美味しいかどうかの判定ではない。見目の良さの判定でもない。どちらがより、見本である村次の品に近いかを判断せよ」
八代が言って、また少しざわりと空気が揺れた。
「各自の判断で書け。書けたら、他の者に見えぬようにして、私のところへ持ってくるように」
緋色が書いてくれた用紙を受け取ると、立ち上がって八代に渡す。
「殿下方にもご協力頂き、誠にありがとうごさいます」
「いいよー」
俺、今楽しい。
三ついっぺんに同じ料理を出されると、こんなにはっきり違いが分かるんだって分かって楽しかった。同じ材料で、同じに見える手順で作っているのに、不思議だ。面白いよ。
こうして小さくして食べたら、ちょっとづつしか食べれない俺でも、味くらべができたし、嬉しい。また何か味くらべをする時には、呼んでほしいな。
集まった用紙を一枚づつ開いていく八代を待っていると、村次がぼそっと言った。
「ほんと、力丸には感謝だな」
「ん?なに?」
「力丸が、壱臣さんの店を見つけて、俺たちを連れて行ってくれたろ?」
「え?」
「え?」
あれ?村次が俺と力丸を連れて行ってくれたんじゃなかったっけ?
「力丸だった?」
「そうだよ。力丸が、仕事場で味見させてもらっただし巻き玉子が美味しくて、俺たちも気に入りそうだからって、壱臣さんの店に連れて行ってくれたじゃないか」
「あれ?あれれ?」
「どうした?」
俺が首を傾げていると、緋色が書類から顔を上げる。
「殿下」
村次が、にこりと笑って緋色に答えた。
「成人様が、俺と力丸と初めてだし巻き玉子を食べた日のことを記憶違いしてたみたいです。力丸の案内だったのですが、俺が壱臣さんの店を見つけて案内したと思っていたようで」
「そうか」
緋色も笑う。
うーん。そう言われてみれば、そうだった気がする。力丸と村次と三人で、たくさんお出かけしたり遊んだりしたから、思い出がいっぱいで頭に収まりきらなくなってきたのかなあ。緋色との思い出なんて、それよりもっといっぱいあるから、こんなことが増えていったら困るなあ。
「ま、どっちでもいいんだけどさ」
俺が、むむむと思っているのに、村次は笑う。
「楽しかった、とか美味しかったって思い出が残ってたら、それでいい。俺が忘れてることもあるかもしれないし、そん時は成人が教えてくれるだろ?」
「うん」
そっか。誰が案内したのでも、まあいいのか。
「俺たちが二人とも忘れてることは、きっと力丸が覚えてるから、それでいいだろ」
「あは」
力丸、覚えてるかなあ。怪しいなあ。
でも、まあ、それでいっか。
「緋色も?」
「なんだ?」
「緋色も、間違えてる思い出あるかな?」
「お前とのことは、全部覚えてるぞ」
ぱちん、と緋色が片目をつぶる。
ぐぅ。格好良い。
俺も。……あ、俺はずっと片目をつぶってた。
「殿下の思い出話は、かなりいい加減ですよ」
常陸丸が、離れて座らせていた安次嶺と矢渡を机に戻して、緋色の後ろに戻っていた。
「そう?」
「そうそう。子どもの頃の話なんて、まあいい加減なもんです」
「お前だって、乙羽が絡んでなきゃ、まあいい加減だ」
「そんなことはないです」
「いいや、ある」
「俺は、殿下ほどいい加減じゃないんで」
「はっ。どの口が」
「この口ですけどー」
うん。親友同士はこんな感じでいいんだな、きっと。
「ま、それだけ、思い出が増えてきたってことだろ」
「そう?」
「そう」
それは、幸せだな。
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