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第八章 郷に入っては郷に従え
87 問題ない 成人
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「先ほども名乗りましたが改めまして。九鬼の家臣、七宝佐兵衛と申します。これは我が娘の一人、杜若にございます」
かきつばた。長いな。ん?常陸丸とおんなじくらいか。
「いやいや、是非とも両殿下とゆっくりお話したいと思うとった所に、六車殿がお話に行かれるんが見えましてな。慌てて駆け付けた次第。いやはや、六車殿には油断も隙もありませんな。家督を継いだばかりやのに、流石はやり手の六車家ですわ。その行動力は見習わなあきません。あ。そういうたら、ご両親と妹御の体調は如何です?急に体調を崩されて領地で静養されとると聞いて、心配しとったんですわ。妹御など若奥様の側近くにお仕えされとって、栄華は今からやいうとこでしたのに、ほんまにお気の毒でしたなあ。今度、領地の方へお見舞いに行かしてもろてええやろか。おって文を送りますさかい、都合のええ日を教えてくだされ。あ、緋色殿下、これはいけません。御酒が切れとりますがな。杜若、お酌して差し上げえ。成人殿下では、緋色殿下のお相手をされるに当たって難しいこともぎょうさんあります事やろ。是非、うちの娘を使てやってください。手も足も目も、ぜえんぶ綺麗に揃とりますでな。ささ、杜若」
ほええ。
俺は、口をぽかんと開けてしまった。すごい。よくそんなにぺらぺら、ぺらぺらと喋れるなあ!あんまりにぺらぺらと喋るから、言葉が俺の頭の中に届かずに、頭の上を滑っていったよ。
うん。つまり、何言ってるかよく分からなかった!
ぽかんとしていたら、緋色の膝の上に持ち上げられていた。あれ?
振り向くと、少し楽しそうな緋色が見える。俺はよく分からなかったけど、緋色が楽しかったのなら、まあいいか。
金魚のお菓子を手に持っていたから良かった。俺は、お菓子をまた一口、あむと食べる。金魚を半分にしてしまわないように、大きな口でかじった。
うん。おいしい!
杜若が立ち上がろうとするのが見えて驚く。俺も緋色もまだ、いいよって言っていないのに包拳礼をやめて立ち上がるの?勝手に包拳礼して、勝手にやめるのは一番駄目なんじゃない?六車はまだ形を崩していないのに、七宝は二人とも手を外した。
「捕らえよ」
緋色は、いつも通りの声で言った。
じいやと鼓与が、二人の両手を背中に回して纏めてテープで止め、肩を押さえて座らせる。杜若のことは女の子の鼓与が押さえてあげたんだね。優しい。二人とも、九鬼の使用人の服を着ているのが面白い。
「きゃあ」
「ひっ。痛っ。な、なんや、これは?で、殿……」
勝手に話そうとした七宝の頭を、じいやが押さえて畳に押しつけた。大きなお腹が押されて、むぐぐと唸っている。うるさい……。
「六車、謝罪はしかと受けた。これからも変わらず、九鬼を支えよ」
「はっ。ありがとうございます。肝に銘じておきます」
「もういいよ」
「ははっ」
六車が包拳礼をしたままだったから、金魚のお菓子を飲み込んでから急いで言ってあげた。あの姿勢、ずっとしてると大変だよね?頑張ったね。
「緋色殿下!席を外しており、申し訳ない!」
家臣の一人の、白いお髭のおじいさんを部屋から見送っていた壱鷹が気付いて、慌てて戻ってきたけれど、緋色はいつも通りの声で言う。
「いや、問題ない。ゆっくり見送りしてこい」
かきつばた。長いな。ん?常陸丸とおんなじくらいか。
「いやいや、是非とも両殿下とゆっくりお話したいと思うとった所に、六車殿がお話に行かれるんが見えましてな。慌てて駆け付けた次第。いやはや、六車殿には油断も隙もありませんな。家督を継いだばかりやのに、流石はやり手の六車家ですわ。その行動力は見習わなあきません。あ。そういうたら、ご両親と妹御の体調は如何です?急に体調を崩されて領地で静養されとると聞いて、心配しとったんですわ。妹御など若奥様の側近くにお仕えされとって、栄華は今からやいうとこでしたのに、ほんまにお気の毒でしたなあ。今度、領地の方へお見舞いに行かしてもろてええやろか。おって文を送りますさかい、都合のええ日を教えてくだされ。あ、緋色殿下、これはいけません。御酒が切れとりますがな。杜若、お酌して差し上げえ。成人殿下では、緋色殿下のお相手をされるに当たって難しいこともぎょうさんあります事やろ。是非、うちの娘を使てやってください。手も足も目も、ぜえんぶ綺麗に揃とりますでな。ささ、杜若」
ほええ。
俺は、口をぽかんと開けてしまった。すごい。よくそんなにぺらぺら、ぺらぺらと喋れるなあ!あんまりにぺらぺらと喋るから、言葉が俺の頭の中に届かずに、頭の上を滑っていったよ。
うん。つまり、何言ってるかよく分からなかった!
ぽかんとしていたら、緋色の膝の上に持ち上げられていた。あれ?
振り向くと、少し楽しそうな緋色が見える。俺はよく分からなかったけど、緋色が楽しかったのなら、まあいいか。
金魚のお菓子を手に持っていたから良かった。俺は、お菓子をまた一口、あむと食べる。金魚を半分にしてしまわないように、大きな口でかじった。
うん。おいしい!
杜若が立ち上がろうとするのが見えて驚く。俺も緋色もまだ、いいよって言っていないのに包拳礼をやめて立ち上がるの?勝手に包拳礼して、勝手にやめるのは一番駄目なんじゃない?六車はまだ形を崩していないのに、七宝は二人とも手を外した。
「捕らえよ」
緋色は、いつも通りの声で言った。
じいやと鼓与が、二人の両手を背中に回して纏めてテープで止め、肩を押さえて座らせる。杜若のことは女の子の鼓与が押さえてあげたんだね。優しい。二人とも、九鬼の使用人の服を着ているのが面白い。
「きゃあ」
「ひっ。痛っ。な、なんや、これは?で、殿……」
勝手に話そうとした七宝の頭を、じいやが押さえて畳に押しつけた。大きなお腹が押されて、むぐぐと唸っている。うるさい……。
「六車、謝罪はしかと受けた。これからも変わらず、九鬼を支えよ」
「はっ。ありがとうございます。肝に銘じておきます」
「もういいよ」
「ははっ」
六車が包拳礼をしたままだったから、金魚のお菓子を飲み込んでから急いで言ってあげた。あの姿勢、ずっとしてると大変だよね?頑張ったね。
「緋色殿下!席を外しており、申し訳ない!」
家臣の一人の、白いお髭のおじいさんを部屋から見送っていた壱鷹が気付いて、慌てて戻ってきたけれど、緋色はいつも通りの声で言う。
「いや、問題ない。ゆっくり見送りしてこい」
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