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第九章 礼儀を知る人知らない人
15 五十歩百歩 成人
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「生松いなくて、大変だった?」
「そりゃまあ。でも、幸い大きな怪我をした者もなく、重篤な病気にかかった者もなく、無事に乗り切りました!睦峯先生は呼んだんですがね……」
栄は途中まで元気だったのに、最後は、はあとため息を吐く。
「あの方は本当に、一人で置いとくとどんどんと机の上に物を積み上げていって、何がどこにあるのか分からなくなってしまうのですよ」
あはは、見たことある。でも睦峯、自分では分かってるんだって言ってた。だから、このまま置いといてほしいって、いつもお掃除係にお願いしてる。水瀬も乙羽も、絶対早く片付けてくださいよってお返事する。睦峯は、はいって言うだけで早く片付いたことないんだけど。
それで、お掃除係が本気で怒りそうになったら斎がどんどん片付ける。いいの?って睦峯に聞いたら、斎は、睦峯が分かるように片付けてくれるから触ってもいいんだってさ。
「人の振り見て我が振り直せですよ、栄先生」
話しながら生松の部屋の前に着くと、扉を叩く前に生松が部屋から顔を出した。栄の元気な声が聞こえていたみたいだ。
「成人、いらっしゃい。おやつですか?おや、患者さん。足かな」
おやつもだけど。源さんもだけど、それより。
「人の振り見て我が振り直せって何?」
「ああ。それは部屋に入ってもらえば分かります」
栄の方を向くと、ぱちっと瞬きした後で、はっとした顔になった。
「ああ、あれはあれです、生松先生。ほら、私には分かっているんです。だから、そのままにしておいてもらえば大丈夫なんです」
「睦峯とおんなじこと言ってる」
「そうでしょう?」
中に入ると、三つある机の一つだけ、机いっぱいに本や書類が散らかっていた。あとの二つはそんなに散らかっていない。ちゃんとまとめて置いてある。
「積んでない。私は積んでないから睦峯先生とは違います!」
「これはね、成人。同じ穴のムジナと言うんですよ」
「同じ穴のムジナ」
「違うように見えて同じってことです」
「違うようにも見えない」
「なるほど、確かに。では、少し違いますね。五十歩百歩かな?」
「おんなじってこと?」
「そうです、正解」
「やった!」
「あーあーあー。はいはい、すみませんでした。片付けます、片付けますよ」
栄が、机の上の本を部屋の端にある本棚の中に戻した。その後、書類を確認しながら片付けていく。
「人の振り見て我が振り直せ、というのは、他の人の良いところは見習って悪いところは直しなさいということです」
おお。なるほど。
「睦峯の机、綺麗だけど」
「そんなの、すぐ斎さまに来てもらったに決まってるでしょ!」
片付けながら、栄が言った。
「栄は自分で片付けるから賢い」
「そうでしょう?」
生松が、くつくつ笑った。
「そりゃまあ。でも、幸い大きな怪我をした者もなく、重篤な病気にかかった者もなく、無事に乗り切りました!睦峯先生は呼んだんですがね……」
栄は途中まで元気だったのに、最後は、はあとため息を吐く。
「あの方は本当に、一人で置いとくとどんどんと机の上に物を積み上げていって、何がどこにあるのか分からなくなってしまうのですよ」
あはは、見たことある。でも睦峯、自分では分かってるんだって言ってた。だから、このまま置いといてほしいって、いつもお掃除係にお願いしてる。水瀬も乙羽も、絶対早く片付けてくださいよってお返事する。睦峯は、はいって言うだけで早く片付いたことないんだけど。
それで、お掃除係が本気で怒りそうになったら斎がどんどん片付ける。いいの?って睦峯に聞いたら、斎は、睦峯が分かるように片付けてくれるから触ってもいいんだってさ。
「人の振り見て我が振り直せですよ、栄先生」
話しながら生松の部屋の前に着くと、扉を叩く前に生松が部屋から顔を出した。栄の元気な声が聞こえていたみたいだ。
「成人、いらっしゃい。おやつですか?おや、患者さん。足かな」
おやつもだけど。源さんもだけど、それより。
「人の振り見て我が振り直せって何?」
「ああ。それは部屋に入ってもらえば分かります」
栄の方を向くと、ぱちっと瞬きした後で、はっとした顔になった。
「ああ、あれはあれです、生松先生。ほら、私には分かっているんです。だから、そのままにしておいてもらえば大丈夫なんです」
「睦峯とおんなじこと言ってる」
「そうでしょう?」
中に入ると、三つある机の一つだけ、机いっぱいに本や書類が散らかっていた。あとの二つはそんなに散らかっていない。ちゃんとまとめて置いてある。
「積んでない。私は積んでないから睦峯先生とは違います!」
「これはね、成人。同じ穴のムジナと言うんですよ」
「同じ穴のムジナ」
「違うように見えて同じってことです」
「違うようにも見えない」
「なるほど、確かに。では、少し違いますね。五十歩百歩かな?」
「おんなじってこと?」
「そうです、正解」
「やった!」
「あーあーあー。はいはい、すみませんでした。片付けます、片付けますよ」
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「人の振り見て我が振り直せ、というのは、他の人の良いところは見習って悪いところは直しなさいということです」
おお。なるほど。
「睦峯の机、綺麗だけど」
「そんなの、すぐ斎さまに来てもらったに決まってるでしょ!」
片付けながら、栄が言った。
「栄は自分で片付けるから賢い」
「そうでしょう?」
生松が、くつくつ笑った。
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