【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第九章 礼儀を知る人知らない人

134 俺の一番大事な仕事?  成人

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 緋色ひいろが、俺に抱きついたまま離れないからお茶が配れなくて、お盆を持っていた力丸が配って回った。俺の仕事だったのに……。
 でも、常陸丸ひたちまる力丸りきまるが、そのままでいろって言うから、緋色ひいろに抱っこされて座ってた。なんか、それが成人なるひとの一番大事な仕事だ、とか二人して言うんだ。弐角にかく鶴丸つるまるも、うんうん頷いてるし。まあ俺も、抱っこされて嬉しくなってたから。うん。それでいいんだけどさ。
 お茶はたくさん運んできたから、常陸丸ひたちまるの分も、鶴丸つるまるの護衛の那月なつきの分も、電球と踏み台を持って帰ってきた才蔵さいぞうの分もあった。電気は、才蔵さいぞうが手早く一つ替えたら部屋がとても明るくなって、点いていると思っていたもう一つの電気がちっとも明るくなかったことに気付いてしまった。才蔵さいぞうはまた走っていって、今度はさっきより素早く帰ってきた。
 二つともの電気を付け替えた部屋は、びっくりするくらい明るくなった。
 
「早かったね」
「え?」

 ちょっと冷めたお茶を、ぐいっと飲んだ才蔵に言う。

「今、早かった」
「ああ。先ほどは、備品置き場がどこにあるのか、親分、いや、荘重むらしげさまに聞きに行ってから取りに行っとりましたので」

 親分? じいやのこと? じいや、色々呼び名があるね。俺のことも、成人なるひとって呼ぶ人と、なるって呼ぶ人と、成人なるひとさまって呼ぶ人と成人なるひと殿下って呼ぶ人がいるから、そんな感じ?  んー? じいやのは、じいやの名前が入っていないから違うか。

「もう分かった?」
「はい、分かりました。もう、いつでもすぐに行けるんで、なんか切れとったら俺にお申し付けください。それに先ほどは、備品係やいう者に、電球をくれ言うたら少々ごねたんで面倒でしたが、ちゃあんと話したら分かってくれました。俺の顔は覚えたみたいで、今、言うたらすぐ出してくれましたんで」
「おお」

 みんな、すごい。
 広いお城は、何がどこにあるか覚えるだけでも大変。働いている人も多いから話を通すのも大変なのに、とんとんと仕事を進めていくんだから、本当にすごいよ。

「後ほど、案内を頼んでもよろしいか」
「もちろん」

 那月なつき才蔵さいぞうに言うと、才蔵さいぞう力丸りきまるを見ながら答えた。

「ああ。俺、しばらくここにいるから、もう行って来たらいいけど」
「助かる」

 あっという間に二人は出かけて行った。
 
「んん?」
「ああ。これから、この城に長くいるのは那月なつきだからな。那月なつきの顔を通しといた方がいいだろ。なんだっけ、その、備品係に?」
「おお」

 なるほど。
 力丸りきまるがここの警備するから、二人が離れても大丈夫って言ってたの? 才蔵さいぞう力丸りきまるを見ただけで通じた? あんまりしゃべってなくても通じてたの、格好いいね。
 俺は、お仕事頑張れって思いながら、お茶を飲む緋色ひいろを、じっと見てみた。

「なんだ? 飲むのか? まだ熱いぞ」

 通じなかったな……。
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