【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第九章 礼儀を知る人知らない人

162 これでよし  成人

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 末良すえよしに呼ばれたので、亀吉かめきちの後に香月かづきと一緒について行った。末良すえよしはまっすぐ俺たちの方に向かって……あ、末良すえよし、そんなに急いだらあぶな……。

「危ねー。やると思ったよ」

 転びそうになった末良すえよしを受け止めようとして、そのまま一緒にひっくり返りそうになった亀吉ごと、力丸りきまるが、あっという間にまとめて抱え上げる。

「あ、香月かづきさん、すみません」

 しっかり手を出していた香月かづきの邪魔をするみたいになった力丸が謝った。

「いえ。ありがとうございます」

 少しだけ、ぽかんとした顔になった香月かづきが、すぐに口元を引き締めて言った。ほんまに速い、って眉間に皺を寄せて呟いた。ん? なんで、眉間に皺?

「すえーしー」

 亀吉は、力丸の腕の中でにこにこで末良すえよしを抱えている。末良すえよしは、あれ? って顔できょろきょろしていた。
 転ばなくて良かったね。

「あ。なりゅしゃま」
末良すえよし。こんにちは」
「こんちゃ」

 力丸に下ろしてもらってからも、亀吉が末良すえよしにくっついて離れない。

「かめちちしゃま。や」
「すえーし。ちょちちょちある。ちょちちょちしよねー。ねー?」
「かめちちしゃま。や」

 末良すえよし、亀吉のこと覚えてたんだね。ちゃんと名前呼んでる。

末良すえよし、すごいねえ」

 頭を撫でたら末良すえよしは、んふーって笑った。あ、って亀吉がこっちを向いた。

「なーひとでんか、かめも」
「ん?」
「かめも」

 ん? なんだろ? あ、なでなでするの? 

「亀吉もすごい」

 末良を受け止めようとしてくれて、ありがと。
 亀吉の頭もなでなでしたら、亀吉も、んふーって笑った。
 それから亀吉は、末良を離して俺の足に、きゅってしがみついた。末良も、俺の反対の足にしがみついた。
 ふふ。仲良しだねえ。

「なんっにも話が繋がってねえのに、丸くおさまってるのはなんでだ?」

 力丸が呟いたら、香月かづきが横を向いて肩を震わせた。

「うちのが早速すまねえ、なる坊……っとええっと、成人なるひと殿下」  
広末ひろすえ!」

 待ってた。ここ、美味しい食べ物がいっぱいあるんだ。うちでも食べたい。

「元気そうで良かったよ」

 広末は、にこにこ笑って言った。

「本当ですね。元気そうだ」
睦峯むつみね!」

 さいが来るなら一緒に来ると思ってた。睦峯むつみねがいたら、皆安心だ。睦峯むつみねの隣を歩いてきたさいも元気そう。良かった。

「俺は元気」
「おや。元気じゃない方がいらっしゃるんですか?」
「たぶん?」

 俺は会ってないけど、目の下に隈のある人がいるらしいよ? 昨日寝たから元気になってるといいけど。

「なるほど。それは、来た甲斐があります」
「うん」

 そんな事を話していたら、周りで城に入るのを待っている人たちがざわざわと揺れた。なんだろ?
 それにしても、待っている人が減らないなあ。城の中に、少しずつ入れているはずなのにな。
 あ、乙羽おとわ斑鹿乃むらかのに支えられながら、車から降りてきてる。

「おと……」
乙羽おとわ!」

 びゅんって常陸丸ひたちまるが俺たちの横を駆け抜けていった。
 おお。あっという間に乙羽おとわを抱え上げた。
 今、常陸丸ひたちまる、力丸より速くなかった? 

「こら、ちび共」

 緋色ひいろもお迎えに来たんだ? あ、俺は疲れてないから、抱っこしなくてもいいってば。もー。
 俺の足にしがみついていた亀吉と末良すえよしが、手を離さなくちゃならなくなって、あーって言っている。

成人なるひとは俺のだって言ってるだろ」

 緋色ひいろ、また言ってる。そんなこと、皆知ってるのにねえ。
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