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しおりを挟む「ねえ、なんでいきなり同居したいなんて言い出したの?」
真新しい、新築の匂いがする新居での荷解き中。溢れる段ボールと格闘していた私はそうちゃんに尋ねる。
「このまま、放っておいたら、絶対にきょうちゃんが先に死ぬ未来しか見えなかったから。すぐご飯抜くし、寝ないし、昼夜逆転してるし」
「うっ! なんも言い返せねえ……」
「だから、僕が見張ることにしたの」
そうちゃんは邪悪な顔でにっこりと笑う。すごい! 闇堕ち主人公みたいなセリフだ!
「……そんなに私が先に死ぬのが嫌なの? 年齢差考えたら、順当じゃん」
「僕は女性長寿説を推す」
私とそうちゃんは歳が四歳離れているから、きっと私の方が早くあの世にお呼ばれするに違いないのに。そうちゃんはいかにしても運命に抗いたいらしい。
やれやれ、とも思ったが、彼に愛されてるなあとも思えたので、許容することにした。
「僕に死に花を用意させるなんて真似、絶対許さない」
そうちゃんはポロリと一粒、涙を流した。
「あらあ」
「ごめん、人前では泣かないって決めてたのに、気持ちが昂ったら涙が………」
「いいじゃん、一緒に暮らすんだから、私の前では存分に泣いちゃって! それに男の涙って、色っぽい! 最&高!」
そう親指をグッと立てながら、あっけらかんと言い放つと、彼は「何それ……」と、力が抜けたようにヘニョりと笑った。
「いつも泣き言言っちゃってごめんね……」
「いいや、そうちゃんが泣き言言わなくなったら、そっちの方がやばいなって思うもん」
「じゃあ反対に、いつも泣き言言わないきょうちゃんが言い始めたら、本格的にやばいってことだ。」
「それはそうかも」
「なるほど……これも一つバロメーターだね」
そうちゃんが思案するような表情を見せる。
「ん?」
「相手が大丈夫か、すぐにわかるバロメーター」
「なるほどね!」
はっはーん、と納得していると、そうちゃんは素敵な物憂げ顔で私の顔を見つめている。
「なるべく、負担をかけないようにするから、長生きしてね、きょうちゃん……」
へにょへにょ顔のそうちゃんに向かって、私は力強い笑顔を向ける。
「仕方ないから、長生きしてあげるよ!」
泣き虫そうちゃんに死に花を用意させないためにも、長生きをしなくちゃいけない。
私は同居を機に生活を改め、人間らしい生活を手に入れた。
朝、ちゃんと起きるようになったし、部屋も綺麗になった。それに、ご飯も抜かなくなったことで体重が安定しだした。今までは食事って面倒で、作る気にもならなかったけれど、そうちゃんにも食べてほしいなって思えるようになったから、二人で作って、二人で食べるようになった。
そうちゃんと生活をしていく中で、誰かを大切にすることは自分を大切にすることなんだなあってことが、やっとわかった気がする。
きっとそうちゃんがいなかったら、私は早死にしてたと思う。彼の存在に感謝しなくっちゃ。
自分の人生が幸か不幸か。バロメーターみたいに一目瞭然だったら簡単なのにと思うけれど、そうはいかないのが人生だ。それを決めるには多角的視点が必要で、一つの面だけを見て、簡単に幸福だとか、不幸だとか、判断するのは難しいから。
だけど大切な人と、お互いに幸せでいるための努力を怠らずにいられたら。
きっと、いい方向に作用しあって、より複雑で味のある人生という物語を紡げると、私は信じているのだ。
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