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猫なので綺麗好きです2
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ミラジェの部屋についた途端、シャルルはミラジェをベッドに寝かせる。
なんだかんだでミラジェは毎日シャルルの部屋に出向いて、シャルルのベッドに潜り込んでいるので、自分のために用意された部屋で眠るのは久しぶりだった。
それでも、ベッドのシーツはこの部屋の主人であるミラジェがいつ訪ねてきてもいいように、清潔に保たれていた。
「本当に体調に違和感はないのか?」
ベッドに寝かされたミラジェ。彼女の手をすぐ隣に置かれた一人がけの椅子に座ったシャルルが握りしめる。
「そんなに騒ぎ立てなくても……このくらい、なんの問題もありませんよ。何かあったとしても、こうして一日静かに休んでいればよくなります。猫だって、草食べて吐いたあとはなんともなさそうにしているでしょう?」
「それとこれとは違うだろう……」
大丈夫と答えたのは虚言ではなかった。口に含んだ量も少量だったので体内にはさほど取り込まれていない。
ミラジェが以前その毒を摂取した際は、十分もたたないうちに酷い腹痛が襲ってきたが、今回はそのような予兆も見られなかった。
「どうして毒に気がついたんだ?」
シャルルは聴きにくそうに尋ねる。きっと彼の目にはあまりにも冷静に毒に対処するミラジェの姿にひどく違和感を感じたのだろう。
「男爵家での食事にたまに入れられていたものと同じ味がしたので……」
シャルルはミラジェの言葉に瞠目する。
「……あの家の人間は君の食事の中に、毒を入れていたのか?」
「ええ。でもあの方々の目的はわたくしを亡き者にすることではなく、死なない程度に痛めつけることでしたから。今はこうして、ピンピン生きております」
ミラジェが握り拳を作って気丈な様子を見せると、シャルルは顔を左手で覆うようにして表情が崩れるのを隠した。
「だからといって家族に毒を盛るなんて……許されることではないだろう……」
この人は自分の今までの処遇に胸を痛めて心を揺らしている。それはミラジェの目にも見て取れる動きだった。
(同情されるのは嫌いだったはずなのに……。旦那様が私のことで心を痛めている様子を見るとなぜか心が痛くなるわ……)
ミラジェは初めての感情に戸惑っていた。初夜を工作するような度胸がないヘタレなのに、シャルルのことは嫌いになれない。
シャルルはいつも妻という立場の人間を大切にしているというよりも、大胆不敵な行動をするミラジェ自身を見てくれている気がしていた。
今まで厄介者としか扱われていなかったミラジェは、その真っ直ぐすぎる思いを感じとる度に、心が掻き乱されてしまう。
「そういえば……取り乱していたせいで君にお礼を言っていなかった。本当にありがとう。君が飲むな、と言わなかったらきっと私は毒を口にしていただろう」
「私のどうしようもない経験が旦那様を救えたのなら……。よかったのかもしれません」
「いや……君がされていたことはどう考えても、不当な暴力だ。正当化することはできない。私は……君を傷つけていた君の家族のことを、永遠に許すことはできないよ」
苦いものを噛み締めたような口調で言うシャルルの様子を、ミラジェはぼんやりと眺める。
(どうしてこの人はこんなに他人に寄り添おうとするのだろう。そうやって生きるのは辛くないのかしら)
何もかもを最低保証で考えてしまうミラジェにとって、恵まれた環境に生まれ人を動かす立場として生きてきた、シャルルの思考は理解しきれないことが多い。
わからない人間を理解しようとするには時間と労力がかかる。
(でも、これから時間をかけて理解していけばいいのかしら……って思ってしまう程度には、旦那様に絆されているのよね……)
妻のかつての境遇を想像し、頭を悩ませるシャルルを、ミラジェは優しい目で見つめていた。
なんだかんだでミラジェは毎日シャルルの部屋に出向いて、シャルルのベッドに潜り込んでいるので、自分のために用意された部屋で眠るのは久しぶりだった。
それでも、ベッドのシーツはこの部屋の主人であるミラジェがいつ訪ねてきてもいいように、清潔に保たれていた。
「本当に体調に違和感はないのか?」
ベッドに寝かされたミラジェ。彼女の手をすぐ隣に置かれた一人がけの椅子に座ったシャルルが握りしめる。
「そんなに騒ぎ立てなくても……このくらい、なんの問題もありませんよ。何かあったとしても、こうして一日静かに休んでいればよくなります。猫だって、草食べて吐いたあとはなんともなさそうにしているでしょう?」
「それとこれとは違うだろう……」
大丈夫と答えたのは虚言ではなかった。口に含んだ量も少量だったので体内にはさほど取り込まれていない。
ミラジェが以前その毒を摂取した際は、十分もたたないうちに酷い腹痛が襲ってきたが、今回はそのような予兆も見られなかった。
「どうして毒に気がついたんだ?」
シャルルは聴きにくそうに尋ねる。きっと彼の目にはあまりにも冷静に毒に対処するミラジェの姿にひどく違和感を感じたのだろう。
「男爵家での食事にたまに入れられていたものと同じ味がしたので……」
シャルルはミラジェの言葉に瞠目する。
「……あの家の人間は君の食事の中に、毒を入れていたのか?」
「ええ。でもあの方々の目的はわたくしを亡き者にすることではなく、死なない程度に痛めつけることでしたから。今はこうして、ピンピン生きております」
ミラジェが握り拳を作って気丈な様子を見せると、シャルルは顔を左手で覆うようにして表情が崩れるのを隠した。
「だからといって家族に毒を盛るなんて……許されることではないだろう……」
この人は自分の今までの処遇に胸を痛めて心を揺らしている。それはミラジェの目にも見て取れる動きだった。
(同情されるのは嫌いだったはずなのに……。旦那様が私のことで心を痛めている様子を見るとなぜか心が痛くなるわ……)
ミラジェは初めての感情に戸惑っていた。初夜を工作するような度胸がないヘタレなのに、シャルルのことは嫌いになれない。
シャルルはいつも妻という立場の人間を大切にしているというよりも、大胆不敵な行動をするミラジェ自身を見てくれている気がしていた。
今まで厄介者としか扱われていなかったミラジェは、その真っ直ぐすぎる思いを感じとる度に、心が掻き乱されてしまう。
「そういえば……取り乱していたせいで君にお礼を言っていなかった。本当にありがとう。君が飲むな、と言わなかったらきっと私は毒を口にしていただろう」
「私のどうしようもない経験が旦那様を救えたのなら……。よかったのかもしれません」
「いや……君がされていたことはどう考えても、不当な暴力だ。正当化することはできない。私は……君を傷つけていた君の家族のことを、永遠に許すことはできないよ」
苦いものを噛み締めたような口調で言うシャルルの様子を、ミラジェはぼんやりと眺める。
(どうしてこの人はこんなに他人に寄り添おうとするのだろう。そうやって生きるのは辛くないのかしら)
何もかもを最低保証で考えてしまうミラジェにとって、恵まれた環境に生まれ人を動かす立場として生きてきた、シャルルの思考は理解しきれないことが多い。
わからない人間を理解しようとするには時間と労力がかかる。
(でも、これから時間をかけて理解していけばいいのかしら……って思ってしまう程度には、旦那様に絆されているのよね……)
妻のかつての境遇を想像し、頭を悩ませるシャルルを、ミラジェは優しい目で見つめていた。
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