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猫なので綺麗好きです3
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それはそうと、この毒を入れた犯人を探さなければならない。
エイベッド公爵家に恨みや妬みを持つ貴族はたくさんあるだろうが、第一に疑われるのは、ミラジェの生家である、アングロッタ男爵家だ。
(一応、元お姉様には釘を刺しておいたけれど、彼女たちがその後どう処理されたのか聞いていないのよね)
「ちなみになんですが……。今回の毒を盛ったのはアングロッタ男爵家の人間ではないのですか?」
ミラジェは臆せず問う。
まさかあんな末端の男爵家の人間を引き入れてしまうほど、緩い警備を敷いていないでしょうね、という考えの元、ミラジェが乾いた笑みを浮かべながらいう。シャルルは硬い表情のまま、首を横にゆっくりと振った。
「それはあり得ない。なんたって、アングロッタ男爵家は取り潰しになってもうあの場所に残っていないのだから」
「……まあ」
ミラジェは目を見開く。
誰も__使用人も、家庭教師も、そんなことは教えてくれなかったのに。
しかし思い返してみれば、婚姻の儀式が終わった頃。ミラジェの周りにいた人間たちの様子が、あまりにもよそよそしいというか……ギクシャクとしていた期間があった。あれは、ミラジェが正式にこの家の女主人になったことで生まれた戸惑いに近い感情かと思っていたが、生家が跡形もなく消えてしまったミラジェに対する憐れみの感情だったのかもしれない。
「男爵は娘達の教育が及ばなかったことの責を問われた際に、もともと存在していた余罪を暴かれ爵位を返上することになった。そこで釈放されたわけではなく、彼に恨みがある貴族に引き渡されたと聞いている。……送られた先の貴族のことは知っているが……あそこに送られたら生きてはいないだろうな」
ミラジェはその言葉を聞いて、父が送られた貴族がどの家なのか、検討がついてしまった。
「もしかしたら、父が送られたのはサイラム家ではありませんか?」
「そうだが……。なんでわかった?」
「以前、アングロッタ男爵家にいた頃、サイラム家で働いていた使用人に護身用を習ったことがあったのです。護身用とは言っても……どちらかというと、酷く実用的な……拷問に近い類のことで、とっても勉強になったのですが、同時に手慣れているな、とも感じていて」
ミラジェの言葉に、シャルルは顔を青くする。
「待て待て待て! ミラジェ……。君は一体、サイラム家の人間から何を学んだんだ!」
「生きていく上で便利なことを一通りですかね……。拷問に用いられる国内で用いられる毒の種類を教えてくれたのも彼でしたし」
やけに毒に毒に詳しい様子であるミラジェの知識の源が気になっていたシャルルだったが、まさかこんなところで意外な貴族との繋がりが露見するとは思っていなかった。
「彼にはもっといろんなことを教えて欲しかったのですが……。三年ほど前にアングロッタ家を離れてしまって……」
その言葉にシャルルはおや、と目を見開く。
シャルルはミラジェの身辺をジャンに調べさせていた。その情報の中には、三年前までのミラジェは、たびたび折檻を受けることはあっても、栄養状態はさほど悪くなかったそうだ。もしかしたら、ミラジェがいう、サイラム家出身の使用人という男がミラジェを影ながら守っていたのかもしれない。
「君が余計な武器を増やす前に、その使用人が離れて行ったことは幸運だったのかもしれない……」
「私は武器を持てるだけ持っておきたい性質の人間ですけれど。それで? 義母様とお姉様たちは?」
「娘と母親は辺境にある修道院に送られた。戒律が厳しいと有名な修道院だから、外に出ることは二度とないだろう」
「そうなんですね……」
ミラジェは淡々と呟く。
「……驚かないんだな」
そう言ったシャルルの声は沈んでいた。きっと、彼は自分の年若い女性らしくない、乾いた部分に辟易しているのかもしれないとミラジェは思ったが、これは長年の諦めで作られたミラジェの性格なのだから、すぐに変わることはない。
「まあ、陛下の前であんな醜態を晒しておきながら、のうのうとこれから生きるのは難しいのではないかと思っていましたから。あの場には国内の有力貴族が集まっていたでしょう? でしたら、陛下への反逆罪で、その場にいた誰かが、自主的に片付けているんじゃないかなって思ってました」
「……そうか」
俯くシャルルを見て、ミラジェは薄く微笑む。
エイベッド公爵家に恨みや妬みを持つ貴族はたくさんあるだろうが、第一に疑われるのは、ミラジェの生家である、アングロッタ男爵家だ。
(一応、元お姉様には釘を刺しておいたけれど、彼女たちがその後どう処理されたのか聞いていないのよね)
「ちなみになんですが……。今回の毒を盛ったのはアングロッタ男爵家の人間ではないのですか?」
ミラジェは臆せず問う。
まさかあんな末端の男爵家の人間を引き入れてしまうほど、緩い警備を敷いていないでしょうね、という考えの元、ミラジェが乾いた笑みを浮かべながらいう。シャルルは硬い表情のまま、首を横にゆっくりと振った。
「それはあり得ない。なんたって、アングロッタ男爵家は取り潰しになってもうあの場所に残っていないのだから」
「……まあ」
ミラジェは目を見開く。
誰も__使用人も、家庭教師も、そんなことは教えてくれなかったのに。
しかし思い返してみれば、婚姻の儀式が終わった頃。ミラジェの周りにいた人間たちの様子が、あまりにもよそよそしいというか……ギクシャクとしていた期間があった。あれは、ミラジェが正式にこの家の女主人になったことで生まれた戸惑いに近い感情かと思っていたが、生家が跡形もなく消えてしまったミラジェに対する憐れみの感情だったのかもしれない。
「男爵は娘達の教育が及ばなかったことの責を問われた際に、もともと存在していた余罪を暴かれ爵位を返上することになった。そこで釈放されたわけではなく、彼に恨みがある貴族に引き渡されたと聞いている。……送られた先の貴族のことは知っているが……あそこに送られたら生きてはいないだろうな」
ミラジェはその言葉を聞いて、父が送られた貴族がどの家なのか、検討がついてしまった。
「もしかしたら、父が送られたのはサイラム家ではありませんか?」
「そうだが……。なんでわかった?」
「以前、アングロッタ男爵家にいた頃、サイラム家で働いていた使用人に護身用を習ったことがあったのです。護身用とは言っても……どちらかというと、酷く実用的な……拷問に近い類のことで、とっても勉強になったのですが、同時に手慣れているな、とも感じていて」
ミラジェの言葉に、シャルルは顔を青くする。
「待て待て待て! ミラジェ……。君は一体、サイラム家の人間から何を学んだんだ!」
「生きていく上で便利なことを一通りですかね……。拷問に用いられる国内で用いられる毒の種類を教えてくれたのも彼でしたし」
やけに毒に毒に詳しい様子であるミラジェの知識の源が気になっていたシャルルだったが、まさかこんなところで意外な貴族との繋がりが露見するとは思っていなかった。
「彼にはもっといろんなことを教えて欲しかったのですが……。三年ほど前にアングロッタ家を離れてしまって……」
その言葉にシャルルはおや、と目を見開く。
シャルルはミラジェの身辺をジャンに調べさせていた。その情報の中には、三年前までのミラジェは、たびたび折檻を受けることはあっても、栄養状態はさほど悪くなかったそうだ。もしかしたら、ミラジェがいう、サイラム家出身の使用人という男がミラジェを影ながら守っていたのかもしれない。
「君が余計な武器を増やす前に、その使用人が離れて行ったことは幸運だったのかもしれない……」
「私は武器を持てるだけ持っておきたい性質の人間ですけれど。それで? 義母様とお姉様たちは?」
「娘と母親は辺境にある修道院に送られた。戒律が厳しいと有名な修道院だから、外に出ることは二度とないだろう」
「そうなんですね……」
ミラジェは淡々と呟く。
「……驚かないんだな」
そう言ったシャルルの声は沈んでいた。きっと、彼は自分の年若い女性らしくない、乾いた部分に辟易しているのかもしれないとミラジェは思ったが、これは長年の諦めで作られたミラジェの性格なのだから、すぐに変わることはない。
「まあ、陛下の前であんな醜態を晒しておきながら、のうのうとこれから生きるのは難しいのではないかと思っていましたから。あの場には国内の有力貴族が集まっていたでしょう? でしたら、陛下への反逆罪で、その場にいた誰かが、自主的に片付けているんじゃないかなって思ってました」
「……そうか」
俯くシャルルを見て、ミラジェは薄く微笑む。
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