不安になるから穴をあけて

森 うろ子

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「怖っ。怒んなって、玲。ただ聞いてみただけだろ?」

イライラすることはよくあるけど、普段は怒ったりしない俺に茉莉が焦ったように言ってくるがもう遅い。

「デリカシーがどうとかいう問題以前だろ。それ。なに?茉莉は俺のこと誰とでも見境なくヤる淫乱なオメガだと思ってたわけ?まぁ、そう思われるようなことしてたのは俺なんだけどなっ!」

ガンッと音を立てて空になったコーヒーもどきのコップを机に叩きつける。

「そんなこと言ってないだろ。言い方が悪かったのは謝るから…。」

「…別に、謝らなくていい、事実だから。淫乱じゃないとアルファは楽しんでくれないだろ?楽しんでくれないと金はくれないだろ?アルファに恵んでもらわなければ自由になる金がない生活は想像できないだろ?」

茉莉の目を見て捲し立てる。

「今の生活は俺が淫乱なオメガだからできてる生活なんだよ。それなりに楽しんでるし、それでもいいって思うくらいにはふざけた性格してるけどな、俺がオメガじゃなかったら中学の同級生と仲良くできただろうし、俺がオメガじゃなかったら母親は今も俺のそばにいた。アルファの好きな淫乱なオメガを捨てて、それが帰ってくるなら俺はオメガなんかすぐに捨ててる。そう言う気持ち、わかんねぇだろ…。」

「……玲……。」

茉莉が俺の名前を呟くが、続く言葉は出てこないらしい。俺はそのままスッと立ち上がりベッドの布団に顔を埋める。小さな声で「今日はもう帰れよ。」ともう一度言うとしばらくして茉莉は帰っていった。律儀に俺と茉莉が飲んだあとのマグカップを洗って帰る茉莉の、そういうところが嫌いだ。

あーあ、なんであんなこと言ったんだろ。オメガの俺を一番利用しているのは俺で、アルファのことを利用しているのも俺なのに。

茉莉に贔屓にされて勝手に喜んで、勝手に好きになって。勝手に好きになって、遊ばれてたらよかったのに、やっぱりオメガしか愛されないのが辛いとわがままになったのは俺だ。

また俺の部屋で茉莉のコーヒーを飲む姿が見たい。また茉莉と冗談を言いたい。また茉莉とコーヒーを飲みたい。よかったら茉莉に愛して欲しい。

「茉莉、もう俺のこと抱いてくれないだろうなぁ。」

オメガの自分が嫌いなのに、オメガじゃなかったらもっと幸せでいられたのに、結局オメガの自分に縋ることしかできない自分が情けない。

深いため息をついて、もう何も考えないようにして、俺はそのまま目を閉じた。






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