不安になるから穴をあけて

森 うろ子

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 残念なことで、どんなに嫌なことがあっても日は昇るようで。さらに残念なことで、ただでさえ就職の難しいオメガはできるだけいい大学を卒業しておかないといけないわけで。落ち込みながらもしっかりと一限に間に合うように家を出る俺。もっと後先考えずに行動できる馬鹿だったら楽だったのになと自分の間違っていない行動にげんなりしながら授業を受ける。

最近は茉莉とばかり遊んでいたから、久しぶりにと声をかけてくるアルファもいたけど、そんな気分にもなれずに授業が終わるとサッサとアパートに帰ってきた。

「こんなんじゃ、そのうち愛想つかれるだろうなぁ。」

独り言を言いながらアパートの階段を登る。アルファに相手にしてもらえなくなるのは俺にとって死活問題だ。茉莉を好きだと思いながらも茉莉に番にしてもらえないなら、その他のアルファに縋らないといけない。茉莉に愛してもらいたいと思う反面、不確定な未来に保険をかけるのはいけないのだろうか。誠実ではない。でも、そうしないと今の生活を維持するのは難しいとわかる中途半端にお利口な自分が嫌になる。

「あーあ、もっと後先考えないバカだったらよかったのに。」

そう呟きながらアパートの鍵を開けようとするとすでに鍵は開いていた。閉め忘れたか、と大して深く考えず部屋に入ると「やっと帰ってきたか。」とのんきに俺の部屋でコーヒーを飲みながらニュースを見ている茉莉がいた。

「……なんでいるんだ。」

驚きすぎて玄関で突っ立てしまう。え、いや、ほんとに、なんで。

「怒らせたから、仲直り~、しよ?」

ふざけたようにそう言って、ニカッと笑い俺に手を振ってくる茉莉。正直、俺はもうあれが最後になると思っていたから、アルファに逆らうオメガなんて、都合の良くないオメガなんて捨てられると思っていたのに……。

「玲、なに突っ立ってんだよ、早くこっちに来いって。」

気まずくて突っ立っていることしかできない俺に呆れて、茉莉が手を引いてくる。……ここ、俺の部屋なんだけど。

茉莉のそばに座らされると茉莉は満足といった感じで立ち上がり、例のコーヒーもどきをキッチンからもってきて俺の前に置いた。

「ほら、飲みなって。なに、緊張してるの?」

悪戯に笑いながら、我が家のように振る舞う茉莉に「ここ、俺の家。」と小さく反論すると、「知ってる。」と笑いを堪えるように茉莉が言った。

「別にさ、フェロモン使って玲を無理矢理座らせてもよかったし、ヤるだけならフェロモン使って言うこと聞かせてもよかったんだけど…。」

コーヒーカップを持ったまま俯いている俺の首輪を撫でながら茉莉が言う。茉莉の言葉に怯えて、でも茉莉の手が気持ちよくて、首輪を触るのをやめてほしいと目で訴えようと茉莉を伺うように見る。

「玲のことが好きだから。」

茉莉を見る俺の目線と茉莉の目線が合う。

「…えっ……。」

びっくりして目を見開く俺を茉莉が柔らかく微笑みながら見てくる。

「玲のことが好きだから。優しくしようと思ったけど、やきもち妬いてできなかったし。他のアルファと同じ扱いされて意地悪した。ごめんな、仲直りしてくれる?」
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