魔王様と禁断の恋

妄想計のひと

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3章

42

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魔王様と元天帝の唇が離れ、見つめ合っている最中、やっとのことで魔族軍団の一部は、呆然としていた所から立ち直り始めた。

そして衝撃的なシーンの詳細は次々に伝搬し、姿が見えない魔族達にもその話は広まりつつあった。

「あの戦闘狂が結婚だって」

「相手は誰だ?」

「初めて見る顔だが、噂では聞いたことあるぞ」

「やっぱり魔王様は面食いだったのか」

その一言には魔王様は納得しなかったが、元天帝の容姿を褒められているのだから構わないかと思った。

「こうしちゃいられない!他の連中にも教えてやろう」

「詳細が決まったら教えてください!」

ざわざわと騒いでいる連中は、しばらくすると魔界へも話を伝えるべく戻って行き、また結婚式に興味のない連中も帰っていった。

そして、その場には最初の3分の1近くが残った。

その頃には魔王様はドレスを戻していつもの衣へと戻っていた。

「レイリン、披露宴はどうするの?」

元天帝はその気である。
微笑んで、未だにその腰を抱きとめている。

「事が済んだら行いましょう」

「そう、ならすぐに済ませないと」

見つめ合いながら完全に2人の世界に入り浸っている。

グランは既に諦めた様で、眉を寄せて項垂れてしまい、リタとセナはやっとその腕を解放した。

魔王様は、数回わざと咳をすると、元天帝は腕を離した。
魔王様は残った群団へ目を向けて言った。

「貴方達は、本気で天界へ侵略しようとしているのですか?」

いったい魔族が何の恨みがあって、天界に侵攻したいと思っているのか。
先ほどと同じように、誰が話し始めるのかお互いを見合って譲り合っているようだった。

その時、ある魔族が叫び始めた。

「俺たちは、天界から追放された元神官だ!前世で罪を犯したからと魔界へ堕とされ、挙げ句力も殆どない!元神官だからと魔力もない!これは天界への復讐だ!」

魔王様は少し眉を顰めた。

「何故そう思うのですか?誰かからその話を聞いたのですか?」

誰かから聞かない限り、彼らがその様に結論を出すことは殆どないだろう。そう魔王様は思った。

「そうだ!俺たちを導いてくれた恩人がそう言ったんだ!」

「誰ですか?」

魔王様の目に鋭さが宿った。

「恩人を売る奴がいると思うか?」

群団から大勢の声が上がり、これはいよいよ止められなくなると魔王様は予感した。
落ち込んでいるグランを除き、リタとセナは警戒心を強めた。

「これだけの数がいれば天界に攻め入る事も容易だ!邪魔をするつもりか?魔王も天帝へ殴り込みに行きたいと聞いたぞ!」

「天帝と私の件は、2人の問題であって、天界や魔界が関与する話ではありません」

魔王様は息を吐いて、諌める様に言った。

ナンタラードが自分に対して私怨を抱いているのだから、他の人は手出し無用だ。

だが、それで止まる連中ではないため、声を荒げて何やら反発している。

彼らは弱者であり、縋るものなんて何でもよかったのだろう。理由よりも、今この現状を改善する為に後先考えずにただ行動しただけだ。

魔族として魔王と共に天界を討てば、その地位が上がるとでも思っているのだろうか。

魔王様は右手で髪をみみにかけると「仕方がない」と呟いた。魔王様は武力行使をする事にした。

「全員で私にかかってきてください。それで勝てたら勝手にすると良いでしょう。ただし、私に勝てないようでしたら素直に魔界へ帰ってください」

この言葉に狼狽したのは何も魔族群団だけではない。リタやセナも魔王様を注視して、止めようとした。

「陛下、下手なことを言わないでください」

リタは負けるとは思っていないが、数が数だった。

「何故ですか?1人で乗り込めない愚か者達に負けるとお思いですか?」

魔王様の煽りは彼らを焚きつけるのに十分だった。

1人の魔族が剣を抜き、叫び声を上げながら魔王様に斬りかかった。

魔王様は右手を握ると、顔には何も浮かべずに、剣を左手で掴んで、右手の拳を腹部に埋めた。

魔族はその一撃で気を失い、魔王様がその身体を抱える羽目に陥った。

1人が先頭を切ったため、自分も前に出ようとしていた魔族は、その姿を見て踏み止まった。

「これは困りましたね。私は非情ではないので、気絶した方を放り出すような真似はできません」

魔王様は抱えていた魔族を群団の方に放り投げ、面倒そうに言った。

「復讐して何になりますか?その意欲は、自分達の立場を改善させる為に使うべきではありませんか?その為にも、私に戦う意志を見せてください」

魔族群団の息を呑む音が聞こえてくるようだった。
一体、この魔王と恐れられる存在に自分達が何ができると言うのだろうか?

「貴方達が見せる意地は、そんなものなのですか?」

リタやセナは気が気じゃなかった。何故こんなにも魔王様は煽りたがりなのだろうか?
魔王様は不敵な笑みを浮かべながら、もう一度右手を握って構えた。

震えながら、1人の魔族が剣を抜いて振りかぶってくる。

それを魔王様は軽く避けて右の肘で背中を突いた。

今度は2人がかりで斬りかかろうとするが、彼らよりも早く迫り、右手の裏拳と、左の膝で軽く蹴った。

十数人が魔王様へと順に襲いかかるが、当然ながら誰一人として魔王様に傷をつけることは出来なかった。

元天帝はそれを興味もなさそうに見つめ、セナやリタは目を伏せてため息をついた。

空中で気を失ってもらっては困ると、魔王様は最大限に手を抜くしかなく、段々と億劫になってきた。

そして、魔族群団は魔王様に手を出せず、遂に尻込みし出した。

魔王様はひとつ溜息をついた。

自身にとって最も厄介な連中は、戦おうとするがその力が弱い存在だった。

やり過ぎて仕舞えば血が流れ、下手をすれば死んでしまう。本当に面倒だ。

そして、魔王様の機嫌は最悪だった。彼らの弱みにつけ込んで、騙し、操った黒幕がいる。

魔王様は右手を前に出すと、赤い光が集まり、その光がふわりと浮いた途端に弾け飛んだ。

「もう結構です。お帰りください」

そう魔王様が呟くと、魔族の群団は自我を失ったかのように呆けて、ぞろぞろと魔界の大穴へと戻っていく。

「レイリン?何をしたの?」

このような魔術は見た事がなく、元天帝以外の3人も僅かに驚いていた。
魔王様は驚いたように見せて答えた。

「おや?リタから聞いていませんでしたか?」

リタは眉を僅かに上げた。

「私は、自分の魂が入った存在を操れるのですよ?」

そう言うと、魔王様は薄く笑った。その笑顔に4人はゾッと、背筋が凍る感じがした。

「どういう意味?何故彼らにレイリンの魂が入っているの?」

元天帝は顔を引き攣らせながら魔王様に訊いた。

「魔族には、洗礼式という魔力を得る為の儀式があります。その時に少しだけ私の魂をその身体に入れる事で、魔力をより使えるようになるのです」

魔王様は変わらず笑顔で元天帝に答える。そしてその洗礼式というのは、層主の2人にはとても馴染みのある行為だった。

「レイ?まさか私たちにさせていたのは……」

セナは魔王様に恐怖を感じているようだ。

「もちろん、彼らを操るのが私の目的ではありませんよ?魔族はみんな家族のようなものですよね?」

この笑顔が逆に魔王様の狂気を物語っていた。

「それは、貴方達がよく知っていることではありませんか?」

魔王様は首を傾げながら、グランに近づいた。

「ねぇ、私の可愛いグラン?」

「は、はい!」

元天帝は魔王様とグランの関係をよく思っていなかったが、そもそも彼らは一体なんなのだろうか?結局聞けずにここまで来てしまった。

「レイリン、詳しく知りたいんだけど」

「そうですね、一度魔王城に降りて落ち着きましょうか」

魔王様はゆっくりと魔王城へ戻っていった。
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