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4章
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魔王様は、元天帝が姿を表すかどうかを決めたらいいと、何も言わずに待っていた。
「くそっ……!」
魔王様を掴んでいた手を離すと、サイは剣を抜き、その剣からも黄金の光が現れた。
以前、ナンタラードがサイに与えた力は宝珠の力で、その時から記憶が戻りつつあるのだと魔王様は察知した。
「待ってください!皆さん一度落ち着きましょう」
魔王様はそう言うが、ここにいるナンタラードとサイは少なくとも魔王様を殺したいほど憎んでいるようだった。
どう落とし所をつけるべきなのか悩み込む。
「ふふふ……サイ、一緒にこの魔王を倒さないか?」
ナンタラードはサイと協力して魔王様を殺そうと目論んだ。
「ふざけるな!お前が神官時代の私にした事も忘れてはいない!シュエイシカ様を殺して一緒に魔界へ堕ちろなどと、よく言えたな!私を誑かし高みの見物は楽しかったか?」
ここも一筋縄の関係ではないようだった。
「それは過去の話だ。今は力を合わせてあの魔王を殺すべきだ!その後にシュエイシカ様の記憶を奪えば良い」
魔王様は、彼らがどうやって元天帝の力を奪うのか分からなかった。
魔王様の表情を窺い見たジオレライが説明した。
「以前、主はサイとの約束があり免除となりましたが、追放されるのであれば記憶は奪うべきです」
それは至極真っ当ではあったが、魔王様も忘れてはいなかった。
「ですが、そもそも宝珠の力を預かるという名目でしたよね?本当ならばランシュエに力を一度戻すべきではありませんか?」
「今、天帝の力を持たない主に、その力を返す必要がありますか?」
魔王様はこのジオレライの立場がどこか分からなかった。魔王様の記憶では、ジオレライとジークサイスは元天帝の補佐官だったはずだ。特にジークサイスは元天帝の信奉者だと思っている。
「ジオレライとジークサイスはどうしてサイと?貴方達の狙いは何ですか?」
魔王様の質問にジオレライが答えた。
「どうやら彼は魔王城での出来事を見ていたらしく、結界の外で彷徨いていたのを見つけて連れてきました」
「私は、魔王……貴方に決闘を申し込む!」
突然の発言で、その場の全員が固まった。
だが、1番に反応したのはナンタラードだった。
「サイ、そう言う事なら私の力を一時的に貸そう」
金色の光がサイを包み、一瞬身体がふらつくが、直ぐに持ち直した。
魔王様としては2対1よりは楽だと思った。
「分かりました。先に貴方と決着をつけましょう」
魔王様は難しく考えることを止めた。
戦って決着を付ける方が簡単で、魔王様にとっても好都合だった。
ナンタラードは剣を納めて、2人から距離を取った。ジークサイスもジオレライも同じようにした。
緊張の糸が張り詰めており、数秒の間が数分の間にも感じる。
魔王様も右手を握って構える。
四神官として戦った時や、魔王城に挑んできた時の事を思い出す。
そして今は、宝珠の力もあるため力を抜くわけにはいかない。
突然、金色の閃光は魔王様の右腕を狙って切り掛かった。
魔王様は冷静にその剣を右手で受け止めるが、力負けしそうになる。これには魔王様も僅かに顔を顰めた。
魔力を最大に通わせ押し返すと、ぶわっと衝撃波が起こり、サイは距離を取ろうとする。
だが、風と共に魔王様はその距離を詰めて右手でサイの剣を狙って拳を振り下ろした。
その拳を剣で受け止めるが、魔王様は勢いを殺さずに、くるりと身体を丸めて踵落としをサイの頭手がけて落とした。
それをギリギリのところで避けようとするが間に合わず掠める。だが、バランスを崩しながらも剣を構えてその剣を魔王様の腹部へと突き刺そうとした。
魔王様は腹部への剣戟に備えて魔力で防御し、赤と金の光がぶつかり合い、辺りは一瞬光に包まれた。
四神官の3人は眩しさに、目を腕で覆う。
そして、次にその目に映ったのは血まみれで倒れた魔王様と、血を滴らせた剣を持ったサイだった。
「よく、よくやったぞ!」
「よし!」
ジークサイスは声を上げ、ナンタラードは喜び駆け寄ろうとするが、サイの剣鋒はナンタラードへとまっすぐに伸びた。
次はお前だと言わんばかりだった。
「待て、よく考えろ。こいつを殺したということは、今シュエイシカ様を手に入れるまたとない機会だ」
四神官の3人は、魔王様は元天帝と一緒に来ると思っていた。隠れて見ているのだろうと思っていた。
だがこうして魔王様が倒れた以上、その姿を現さないのであればここに居ないということになる。
「今この力を得た以上、神官共に手伝ってもらう必要はない」
そう言葉を発すると、四神官を順番に睨みつけた。
「とにかく、魔王を始末するという全員の目的が達成されたのです。あまりいがみ合う必要はありません」
ジオレライが微笑んでサイを宥めようとする。
その言葉にナンタラードは訝しんだ。
「何故お前達まで魔王を狙う必要がある?」
「ロージは主を誑かした魔王を嫌っており、私は……どちらでもない」
ジオレライはチラリとジークサイスを見遣るが、彼は気まずそうに床を見つめた。
「後は主を見つければ……」
ジオレライがそう呟いた時、サイは魔王様の死体の心臓に向かって剣を突き刺した。
あまりの出来事に、ナンタラードは声を上げた。
「何を……」
サイがゆっくり顔を上げて微笑んだ。
四神官はその橙色の目に浮かぶ狂気を見て、身震いした。
「切った時の感触があまり無かったように感じたから、確かめただけだ」
サイは「気のせいか」と呟いてその剣を引き抜いた。
「シュエイシカ様は私が気長に探す」
サイはそう言って笑うが、四神官3人は納得がいくはずなかった。
「サイ、まずは宝珠の力を返してもらう」
ナンタラードは貸しただけだと言うが、それを聞くサイではない。また、彼は元の記憶を思い出している。
「神官共は、これが本当に宝珠の力だと?大半はまだシュエイシカ様が持っているはずだ」
サイは自分の掌にその金色の光を集めた。
その言葉にナンタラードは眉を顰め、ジオレライとロージはそう予感していたようにため息を吐いた。
サイは飛び立とうとした時、ジオレライの目が光り氷の剣がサイを襲った。サイはすぐに剣を抜いて、応戦する。
だが、ジークサイスも剣を抜いて、その剣に青白い光を宿らせて切り掛かる。
「神官が人間に手を出して良いのか?」
「殺さなければ問題はない」
ジークサイスは剣を交え、一瞬でこの宝珠の力の凄まじさを体感した。
「邪魔をするなぁ!!」
叫ぶと、サイの周りには金色の剣が数十本現れ、その剣は四神官の3人に襲いかかる。
「スウジオ!」
ジオレライは氷の壁を召喚して守りを固めるが、金色の剣の威力は凄まじかった。
ジークサイスは自分に襲いかかる金の剣を弾きながら、ジオレライの所まで引く。
飛んでくる金の剣の勢いはいよいよ増して、氷の壁も砕け散り、2人を防ぐものはジークサイスの剣だけとなった。
最後の剣が振り下ろされる時、ジークサイスは膝をついて受けようとしたが、ジオレライが前に出て氷の剣を召喚し、剣戟を受けた。
だが受けきれず、ジオレライの腹部に深く突き刺さった。
「スウジオ!」
ジークサイスは、残された神力でジークサイスの腹部を治療しようとする。
1人で凌ごうとしたナンタラードは防ぎきれておらず、身体中から血が流れている。あまりにも傷が多く、致命傷があるかすらわからない。
サイはその姿を見て笑うと、今度は大きな剣を召喚し、その剣を地面に突き立てた。
「私はこの天界がどうなろうと興味がない。人間だからな」
そう言い捨てて、宮殿から去っていった。
突き刺さった金の剣は深く深く沈んでゆき、天界全体が揺れ、ゆっくりと落ちるような感覚があった。
ジオレライは傷が塞がり、命に別状はないようだったが、このままでは天界全体が落ちる。
ジークサイスは、どうするべきか分からなかった。
「スウジオ、神力は残っているか?」
「いいや。私のことは放っておいて、神官達を連れて逃げるんだ。このままだと地上も魔界も終わってしまう」
天界がそのまま落ちてしまえば、天雷の比ではないだろう。
ジオレライは目を閉じて覚悟を決めているようだった。
「そんなことできるわけ……」
「なぜ?」
そうジオレライに言われ、ジークサイスは何と答えて良いか分からなかった。
だが、今はあまり時間がない。ジークサイスは頭を左右に振った。
「とにかく、今は逃げなければ」
そうジークサイスが言った時、2人の影が部屋の隅から現れた。
隠蔽術で隠れていた魔王様と元天帝だった。
「くそっ……!」
魔王様を掴んでいた手を離すと、サイは剣を抜き、その剣からも黄金の光が現れた。
以前、ナンタラードがサイに与えた力は宝珠の力で、その時から記憶が戻りつつあるのだと魔王様は察知した。
「待ってください!皆さん一度落ち着きましょう」
魔王様はそう言うが、ここにいるナンタラードとサイは少なくとも魔王様を殺したいほど憎んでいるようだった。
どう落とし所をつけるべきなのか悩み込む。
「ふふふ……サイ、一緒にこの魔王を倒さないか?」
ナンタラードはサイと協力して魔王様を殺そうと目論んだ。
「ふざけるな!お前が神官時代の私にした事も忘れてはいない!シュエイシカ様を殺して一緒に魔界へ堕ちろなどと、よく言えたな!私を誑かし高みの見物は楽しかったか?」
ここも一筋縄の関係ではないようだった。
「それは過去の話だ。今は力を合わせてあの魔王を殺すべきだ!その後にシュエイシカ様の記憶を奪えば良い」
魔王様は、彼らがどうやって元天帝の力を奪うのか分からなかった。
魔王様の表情を窺い見たジオレライが説明した。
「以前、主はサイとの約束があり免除となりましたが、追放されるのであれば記憶は奪うべきです」
それは至極真っ当ではあったが、魔王様も忘れてはいなかった。
「ですが、そもそも宝珠の力を預かるという名目でしたよね?本当ならばランシュエに力を一度戻すべきではありませんか?」
「今、天帝の力を持たない主に、その力を返す必要がありますか?」
魔王様はこのジオレライの立場がどこか分からなかった。魔王様の記憶では、ジオレライとジークサイスは元天帝の補佐官だったはずだ。特にジークサイスは元天帝の信奉者だと思っている。
「ジオレライとジークサイスはどうしてサイと?貴方達の狙いは何ですか?」
魔王様の質問にジオレライが答えた。
「どうやら彼は魔王城での出来事を見ていたらしく、結界の外で彷徨いていたのを見つけて連れてきました」
「私は、魔王……貴方に決闘を申し込む!」
突然の発言で、その場の全員が固まった。
だが、1番に反応したのはナンタラードだった。
「サイ、そう言う事なら私の力を一時的に貸そう」
金色の光がサイを包み、一瞬身体がふらつくが、直ぐに持ち直した。
魔王様としては2対1よりは楽だと思った。
「分かりました。先に貴方と決着をつけましょう」
魔王様は難しく考えることを止めた。
戦って決着を付ける方が簡単で、魔王様にとっても好都合だった。
ナンタラードは剣を納めて、2人から距離を取った。ジークサイスもジオレライも同じようにした。
緊張の糸が張り詰めており、数秒の間が数分の間にも感じる。
魔王様も右手を握って構える。
四神官として戦った時や、魔王城に挑んできた時の事を思い出す。
そして今は、宝珠の力もあるため力を抜くわけにはいかない。
突然、金色の閃光は魔王様の右腕を狙って切り掛かった。
魔王様は冷静にその剣を右手で受け止めるが、力負けしそうになる。これには魔王様も僅かに顔を顰めた。
魔力を最大に通わせ押し返すと、ぶわっと衝撃波が起こり、サイは距離を取ろうとする。
だが、風と共に魔王様はその距離を詰めて右手でサイの剣を狙って拳を振り下ろした。
その拳を剣で受け止めるが、魔王様は勢いを殺さずに、くるりと身体を丸めて踵落としをサイの頭手がけて落とした。
それをギリギリのところで避けようとするが間に合わず掠める。だが、バランスを崩しながらも剣を構えてその剣を魔王様の腹部へと突き刺そうとした。
魔王様は腹部への剣戟に備えて魔力で防御し、赤と金の光がぶつかり合い、辺りは一瞬光に包まれた。
四神官の3人は眩しさに、目を腕で覆う。
そして、次にその目に映ったのは血まみれで倒れた魔王様と、血を滴らせた剣を持ったサイだった。
「よく、よくやったぞ!」
「よし!」
ジークサイスは声を上げ、ナンタラードは喜び駆け寄ろうとするが、サイの剣鋒はナンタラードへとまっすぐに伸びた。
次はお前だと言わんばかりだった。
「待て、よく考えろ。こいつを殺したということは、今シュエイシカ様を手に入れるまたとない機会だ」
四神官の3人は、魔王様は元天帝と一緒に来ると思っていた。隠れて見ているのだろうと思っていた。
だがこうして魔王様が倒れた以上、その姿を現さないのであればここに居ないということになる。
「今この力を得た以上、神官共に手伝ってもらう必要はない」
そう言葉を発すると、四神官を順番に睨みつけた。
「とにかく、魔王を始末するという全員の目的が達成されたのです。あまりいがみ合う必要はありません」
ジオレライが微笑んでサイを宥めようとする。
その言葉にナンタラードは訝しんだ。
「何故お前達まで魔王を狙う必要がある?」
「ロージは主を誑かした魔王を嫌っており、私は……どちらでもない」
ジオレライはチラリとジークサイスを見遣るが、彼は気まずそうに床を見つめた。
「後は主を見つければ……」
ジオレライがそう呟いた時、サイは魔王様の死体の心臓に向かって剣を突き刺した。
あまりの出来事に、ナンタラードは声を上げた。
「何を……」
サイがゆっくり顔を上げて微笑んだ。
四神官はその橙色の目に浮かぶ狂気を見て、身震いした。
「切った時の感触があまり無かったように感じたから、確かめただけだ」
サイは「気のせいか」と呟いてその剣を引き抜いた。
「シュエイシカ様は私が気長に探す」
サイはそう言って笑うが、四神官3人は納得がいくはずなかった。
「サイ、まずは宝珠の力を返してもらう」
ナンタラードは貸しただけだと言うが、それを聞くサイではない。また、彼は元の記憶を思い出している。
「神官共は、これが本当に宝珠の力だと?大半はまだシュエイシカ様が持っているはずだ」
サイは自分の掌にその金色の光を集めた。
その言葉にナンタラードは眉を顰め、ジオレライとロージはそう予感していたようにため息を吐いた。
サイは飛び立とうとした時、ジオレライの目が光り氷の剣がサイを襲った。サイはすぐに剣を抜いて、応戦する。
だが、ジークサイスも剣を抜いて、その剣に青白い光を宿らせて切り掛かる。
「神官が人間に手を出して良いのか?」
「殺さなければ問題はない」
ジークサイスは剣を交え、一瞬でこの宝珠の力の凄まじさを体感した。
「邪魔をするなぁ!!」
叫ぶと、サイの周りには金色の剣が数十本現れ、その剣は四神官の3人に襲いかかる。
「スウジオ!」
ジオレライは氷の壁を召喚して守りを固めるが、金色の剣の威力は凄まじかった。
ジークサイスは自分に襲いかかる金の剣を弾きながら、ジオレライの所まで引く。
飛んでくる金の剣の勢いはいよいよ増して、氷の壁も砕け散り、2人を防ぐものはジークサイスの剣だけとなった。
最後の剣が振り下ろされる時、ジークサイスは膝をついて受けようとしたが、ジオレライが前に出て氷の剣を召喚し、剣戟を受けた。
だが受けきれず、ジオレライの腹部に深く突き刺さった。
「スウジオ!」
ジークサイスは、残された神力でジークサイスの腹部を治療しようとする。
1人で凌ごうとしたナンタラードは防ぎきれておらず、身体中から血が流れている。あまりにも傷が多く、致命傷があるかすらわからない。
サイはその姿を見て笑うと、今度は大きな剣を召喚し、その剣を地面に突き立てた。
「私はこの天界がどうなろうと興味がない。人間だからな」
そう言い捨てて、宮殿から去っていった。
突き刺さった金の剣は深く深く沈んでゆき、天界全体が揺れ、ゆっくりと落ちるような感覚があった。
ジオレライは傷が塞がり、命に別状はないようだったが、このままでは天界全体が落ちる。
ジークサイスは、どうするべきか分からなかった。
「スウジオ、神力は残っているか?」
「いいや。私のことは放っておいて、神官達を連れて逃げるんだ。このままだと地上も魔界も終わってしまう」
天界がそのまま落ちてしまえば、天雷の比ではないだろう。
ジオレライは目を閉じて覚悟を決めているようだった。
「そんなことできるわけ……」
「なぜ?」
そうジオレライに言われ、ジークサイスは何と答えて良いか分からなかった。
だが、今はあまり時間がない。ジークサイスは頭を左右に振った。
「とにかく、今は逃げなければ」
そうジークサイスが言った時、2人の影が部屋の隅から現れた。
隠蔽術で隠れていた魔王様と元天帝だった。
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