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絆
⑭ 〝魔女〟との再会
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二週間経った後も、学校での状況は相変わらずだった。
相も変わらず晴子達グループからは無視をされ続け、スマホでの連絡も取れない。学校での昼休みもそそくさとみんなどこかへ出かけ、私は一人教室で食べ、帰りも一人で家路に着く。
変わらない、学校での変わってしまった日常。
しかし――家庭での状況は、変わりつつあった。
「お母さんね……再婚しようと思うの」
「……っ!」
その母の言葉に――私は一瞬硬直し、母の顔を凝視した。
(あ………………)
沈黙が、しばし二人の間に舞い降り……。
「い……いんじゃない……かな」
歯切れの悪い肯定の言葉を私は振り絞る。
「そう? ありがとう!」
私の言葉の歯切れの悪さなど意にも介さず、母は手を叩いて喜んだ。
そして――笑顔のまま、言葉を続ける。
「それでね、希津奈。雄二さんから提案されているんだけど……雄二さんの家に引っ越そうかっていう話になったんだけど……」
「え……」
予想外な提案に、思わず呆けてしまう。
引っ越す。その言葉を理解するのに数秒かかった。しかし言われてみればそうだ。再婚するとは……〝家族〟になるということで……一緒に住むのは至極当然のことなのだ。
「そっ……か」
歯切れの悪い言葉が漏れる。しかし母は全く気にも留めず、笑顔で話し続ける。
「雄二さんの家はね、一戸建てで希津奈の部屋も用意出来るって。夢のマイホームよ、マイホーム!」
「う、うん……」
夢見る少女のように語る母に私はぎこちなく頷く。引きつった笑顔の下で、私はどんどんと暗い感情に支配されていく。
一緒に住む。木田雄二さんと。あの男と――。
『希津奈ちゃんは、可愛いね……』
「………………っ!」
ぞくりとした悪寒が全身に走った。
「ちょ、ちょっと外に出るね! 再婚とか、一度独りになって心の準備したいから!」
慌てて私は愛想笑いを作り、そのまま踵を返して扉を開けてアパートを後にする。母が何か言ったような気もするが、無視して私は外へと駆け出して行った。
「はっ……はっ……!」
駆ける、駆ける。空気を裂いて、走り続ける。脇目も振らず、一心不乱に走る。
夜のとばりが下りた街の中を、照らす街灯を抜いていく。めちゃくちゃに駆けていく私。
何も考えない。否、何も考えないで済む。一心不乱に駆けているこの瞬間だけは、先の見えない不安に苛まれなくて済む。
怖かった。学校でグループから無視され続けることが。
怖かった。木田さんと……あの男と一緒に住む未来が。
怖かった。私の大事にして来た〝絆〟が――
「………………ぁ」
何時の間にか、私はとある見覚えのある公園まで走って来ていた。
「こ、こ……」
忘れもしない。此処は、此処は――
「こんばんは、音無さん」
「っ!」
かけられた声。私はその聞き知った声の方を向き――予想通りの人物が前と同じように半球型の遊具に立っているのを見つける。
「大丈夫かしら?」
三日月に裂ける口。黒の、魔女が着込むようなローブ。夜と月を背景にした不思議な少女。
〝回る夜を歩く者〟。あるいは、〝魔女〟と呼ばれるクラスメイト。
「回夜さん……!」
「また夜に、会えたわね」
驚く私に、回夜さんは薄ら笑みで此方を見下ろした。
相も変わらず晴子達グループからは無視をされ続け、スマホでの連絡も取れない。学校での昼休みもそそくさとみんなどこかへ出かけ、私は一人教室で食べ、帰りも一人で家路に着く。
変わらない、学校での変わってしまった日常。
しかし――家庭での状況は、変わりつつあった。
「お母さんね……再婚しようと思うの」
「……っ!」
その母の言葉に――私は一瞬硬直し、母の顔を凝視した。
(あ………………)
沈黙が、しばし二人の間に舞い降り……。
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歯切れの悪い肯定の言葉を私は振り絞る。
「そう? ありがとう!」
私の言葉の歯切れの悪さなど意にも介さず、母は手を叩いて喜んだ。
そして――笑顔のまま、言葉を続ける。
「それでね、希津奈。雄二さんから提案されているんだけど……雄二さんの家に引っ越そうかっていう話になったんだけど……」
「え……」
予想外な提案に、思わず呆けてしまう。
引っ越す。その言葉を理解するのに数秒かかった。しかし言われてみればそうだ。再婚するとは……〝家族〟になるということで……一緒に住むのは至極当然のことなのだ。
「そっ……か」
歯切れの悪い言葉が漏れる。しかし母は全く気にも留めず、笑顔で話し続ける。
「雄二さんの家はね、一戸建てで希津奈の部屋も用意出来るって。夢のマイホームよ、マイホーム!」
「う、うん……」
夢見る少女のように語る母に私はぎこちなく頷く。引きつった笑顔の下で、私はどんどんと暗い感情に支配されていく。
一緒に住む。木田雄二さんと。あの男と――。
『希津奈ちゃんは、可愛いね……』
「………………っ!」
ぞくりとした悪寒が全身に走った。
「ちょ、ちょっと外に出るね! 再婚とか、一度独りになって心の準備したいから!」
慌てて私は愛想笑いを作り、そのまま踵を返して扉を開けてアパートを後にする。母が何か言ったような気もするが、無視して私は外へと駆け出して行った。
「はっ……はっ……!」
駆ける、駆ける。空気を裂いて、走り続ける。脇目も振らず、一心不乱に走る。
夜のとばりが下りた街の中を、照らす街灯を抜いていく。めちゃくちゃに駆けていく私。
何も考えない。否、何も考えないで済む。一心不乱に駆けているこの瞬間だけは、先の見えない不安に苛まれなくて済む。
怖かった。学校でグループから無視され続けることが。
怖かった。木田さんと……あの男と一緒に住む未来が。
怖かった。私の大事にして来た〝絆〟が――
「………………ぁ」
何時の間にか、私はとある見覚えのある公園まで走って来ていた。
「こ、こ……」
忘れもしない。此処は、此処は――
「こんばんは、音無さん」
「っ!」
かけられた声。私はその聞き知った声の方を向き――予想通りの人物が前と同じように半球型の遊具に立っているのを見つける。
「大丈夫かしら?」
三日月に裂ける口。黒の、魔女が着込むようなローブ。夜と月を背景にした不思議な少女。
〝回る夜を歩く者〟。あるいは、〝魔女〟と呼ばれるクラスメイト。
「回夜さん……!」
「また夜に、会えたわね」
驚く私に、回夜さんは薄ら笑みで此方を見下ろした。
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