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水族館デート その2
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「髪、上げてるのも可愛い」
そう言って藤澤君はお団子にした私の髪に軽く触れた。私の身長は160センチを少し超えるくらいだから、藤澤君との身長差は10センチ以上ある。話をしようとすると少し上目遣いになるその身長差が少しでも私を可愛く見せてくれるといいなと心の中で密かに願う(乙女か)。
水族館の中に入ると、大きな水槽の中で色とりどりの魚が泳いでいた。
「すごい数だね」
「ほんと、怖いくらいいっぱいいるね」
これまでも男の人と二人で水族館に来たことは何度かある。意外と水族館での話題って難しくて魚の感想を言い合ってもすぐに会話が終わってしまうし、雰囲気は好きだけど水族館でのデートって正直なんだか気づまりだなと感じることも多かった。
でも今日は違った。藤澤君とは無理に会話をしなくても並んで歩いているだけで幸せな気持ちになれた。
藤澤君が子どもみたいな表情を浮かべて一生懸命魚を眺めている様子を見ているだけでとても楽しい。
彼氏と行く水族館というのは魚を観に行くところではなくて、魚を観ている彼氏を観に行く場所なんだな、ということを二十九歳にして初めて知った。
「あ、あそこ見て。一匹だけ離れてる奴がいる」
「え、どこどこ?」
藤澤君が水槽の端のほうを指さした。その魚をなかなか見つけることができずにいる私に、藤澤君が顔を近づけて言った。
「ほら、あっち」
「ほんとだ」
藤澤君のマンションの部屋でもっと近い距離で話したりそれ以上のことをしたりしているのに、水族館で少し顔が近づいただけでやっぱりドキドキしてしまう。一体いつになったら慣れるのだろう?
「何してるのかな?」
藤澤君は子どものようにキラキラと目を輝かせて、一匹だけ群れから離れて岩陰に隠れている小さな青白い魚を見つめていた。
「お昼寝かな?」
横に倒れたまま揺れているその魚がまるで眠っているように見えて私はそう言った。
「だとしたら俺とおんなじだ。俺、眠るのが大好きだもん」
藤澤君が言った。そういえば藤澤君は休日の朝、本当に幸せそうな顔をして眠っている。そんなことを思い出しながら藤澤君を見つめているのに気づかれると、また妄想してた? と言われそうなので、私は魚を見るふりをしながら気づかれないようにこっそり藤澤君の横顔を見ていた。
「……今、見てたでしょ」
気づかれないように見ていたつもりだったのに、突然藤澤君がこちらに視線を送ってきたのでびっくりした。藤澤君って鋭い。
「み、見てません」
「嘘ばっかり。バレバレだよ? もー、本当に俺のことが好きなんだから」
茶化すように藤澤君はそう言うと私の頬を指で軽くつついた。思わず照れてしまう。どうして藤澤君はこんなに素直に自分の感情を表現できるんだろう。私は正直言って怖い。うんと藤澤君を好きになって、自分をさらけ出して油断しすぎた後で、藤澤君がもしいなくなってしまったら自分はどうなるんだろう、と考えると不安で自分の気持ちを抑えてしまう。
順路どおりに二人で小さな水槽を一つ一つ眺めながら歩いた。土曜日の水族館は家族連れやカップルで賑わっていた。人にぶつかりそうになるとさりげなく私を引き寄せる藤澤君の手が、私は藤澤君の彼女なんだということを改めて実感させた。
「これ、可愛い」
水族館のお土産屋さんにアザラシのぬいぐるみがあった。少し怒った顔が可愛らしい、手のひらサイズのぬいぐるみだった。
ピンクのボールを抱いたアザラシとブルーのフラフープにしがみついている二体がペアのようだ。私はそれなりにいい歳をした大人だけど可愛いものは可愛い。
「本当だ」
そう言って藤澤君はお団子にした私の髪に軽く触れた。私の身長は160センチを少し超えるくらいだから、藤澤君との身長差は10センチ以上ある。話をしようとすると少し上目遣いになるその身長差が少しでも私を可愛く見せてくれるといいなと心の中で密かに願う(乙女か)。
水族館の中に入ると、大きな水槽の中で色とりどりの魚が泳いでいた。
「すごい数だね」
「ほんと、怖いくらいいっぱいいるね」
これまでも男の人と二人で水族館に来たことは何度かある。意外と水族館での話題って難しくて魚の感想を言い合ってもすぐに会話が終わってしまうし、雰囲気は好きだけど水族館でのデートって正直なんだか気づまりだなと感じることも多かった。
でも今日は違った。藤澤君とは無理に会話をしなくても並んで歩いているだけで幸せな気持ちになれた。
藤澤君が子どもみたいな表情を浮かべて一生懸命魚を眺めている様子を見ているだけでとても楽しい。
彼氏と行く水族館というのは魚を観に行くところではなくて、魚を観ている彼氏を観に行く場所なんだな、ということを二十九歳にして初めて知った。
「あ、あそこ見て。一匹だけ離れてる奴がいる」
「え、どこどこ?」
藤澤君が水槽の端のほうを指さした。その魚をなかなか見つけることができずにいる私に、藤澤君が顔を近づけて言った。
「ほら、あっち」
「ほんとだ」
藤澤君のマンションの部屋でもっと近い距離で話したりそれ以上のことをしたりしているのに、水族館で少し顔が近づいただけでやっぱりドキドキしてしまう。一体いつになったら慣れるのだろう?
「何してるのかな?」
藤澤君は子どものようにキラキラと目を輝かせて、一匹だけ群れから離れて岩陰に隠れている小さな青白い魚を見つめていた。
「お昼寝かな?」
横に倒れたまま揺れているその魚がまるで眠っているように見えて私はそう言った。
「だとしたら俺とおんなじだ。俺、眠るのが大好きだもん」
藤澤君が言った。そういえば藤澤君は休日の朝、本当に幸せそうな顔をして眠っている。そんなことを思い出しながら藤澤君を見つめているのに気づかれると、また妄想してた? と言われそうなので、私は魚を見るふりをしながら気づかれないようにこっそり藤澤君の横顔を見ていた。
「……今、見てたでしょ」
気づかれないように見ていたつもりだったのに、突然藤澤君がこちらに視線を送ってきたのでびっくりした。藤澤君って鋭い。
「み、見てません」
「嘘ばっかり。バレバレだよ? もー、本当に俺のことが好きなんだから」
茶化すように藤澤君はそう言うと私の頬を指で軽くつついた。思わず照れてしまう。どうして藤澤君はこんなに素直に自分の感情を表現できるんだろう。私は正直言って怖い。うんと藤澤君を好きになって、自分をさらけ出して油断しすぎた後で、藤澤君がもしいなくなってしまったら自分はどうなるんだろう、と考えると不安で自分の気持ちを抑えてしまう。
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「これ、可愛い」
水族館のお土産屋さんにアザラシのぬいぐるみがあった。少し怒った顔が可愛らしい、手のひらサイズのぬいぐるみだった。
ピンクのボールを抱いたアザラシとブルーのフラフープにしがみついている二体がペアのようだ。私はそれなりにいい歳をした大人だけど可愛いものは可愛い。
「本当だ」
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