変態婚約者を無事妹に奪わせて婚約破棄されたので気ままな城下町ライフを送っていたらなぜだか王太子に溺愛されることになってしまいました?!

utsugi

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彼の正体

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「これはこれはルーク様……いかがされました?」

学長室につくと学長が恭しい態度でルークに跪いた。

もしかしてこの人、かなり身分が高いお方なのかしら……? ここまでになにか無礼はなかっただろうかと私は1人不安になる。

「学長、今日、この娘の光魔法が発動した」

「なんと、この少女が光魔法を?!」

「魔法学園に入学させるべきだと思うが?」

「もちろんルーク様のおっしゃる通りです。すぐに入学手続きを取りましょう」





学長室を出て長い廊下を歩く。

「……というわけで、君には来週から魔法学園に通ってもらう」

「はい……」

とても嫌と言える雰囲気ではない。

「たしかご両親はすでに亡くなったと言っていたね?」

「……はい」

魔法学園には貴族の子女が多く通っている。どこかでいずれ身分がバレてしまう可能性は高いが、今はまだ伏せておこうと私は思った。

「両親を亡くして一人でここまで……。随分苦労したのだろうね」

ルーク様と呼ばれていた彼が慈しむような視線をなげかけてくる。改めて間近でじっくりと見ると、本当に整った顔をしている。色素の薄い髪に綺麗な瞳。すらりと伸びた足。彫刻のように整った目鼻立ち。

向かい合っているのが気恥ずかしくなるほどだ。

「とんでもありません。私、カフェの仕事が好きですし、体はすごくじょうぶですから」

私が明るく言うと、彼はにこりと笑った。

「カフェの店主には私が話をつけておこう。これからも困ったことがあれば私を頼るといい」

「ありがとうございます」

「君のことはカフェで見かけて前からいい子だなと思っていたんだ。すごく一生懸命に仕事をするし、誤魔化したり手を抜いたりすることが一切ない」

「そ、そんなことは……」

そんなに見られていたなんて気がつかなかった。そんな風に言われるとなんだか照れてしまう。

「君はきっと素晴らしい魔法使いになるよ。僕が保障する」

「ルーク様!!!」

中庭に出たところで呼び止められた。声のした方を向くと、黒髪ロングヘアの女の子がこちらを見ていた。

「ルーク様、今日の生徒会、どうしていらっしゃらなかったのですか? お待ちしておりましたのに……」

「ああ、すまない。ちょっと色々と用事があったから」

「またそんなことをおっしゃって。私が一体どれだけルーク様を……」

二人の会話が続いていく。

「ルーク、この方は……?」

私が言うと女の子は絶句して私を見た。

「ルーク……ってあなた、失礼ですわよ?!」

「いいんだよイザベラ、この子は僕の友達だから」

「全然よくありませんわ! 殿下!」

……殿下?

「殿下?」

「ま、まさかルーク様のことをご存知ないわけではないですわよね? この方はアレステッド王国第一王子、王太子ルーク・アレステッド様ですわよ?」

「えええええっ?!」

あまりに驚いて私は思わず絶叫してしまった。隣で彼が苦笑している。

侯爵家の娘でありながら王太子の顔すら知らないなんて、私って本当になんて常識知らずなのだろう。

だけど仕方がない。これまで家族中から穀潰し、寄生虫と言われ続けて社交界などには顔を出したこともないのだから。

家ですることと言えば使用人たちに混ざって家事や手仕事、夜の少しの自由時間に蔵書を読む程度のことだった。

「お、王太子様だったとはつゆ知らず大変な失礼を……。申し訳ございません。処罰あらば謹んでお受け致します」

私は跪いて詫びた。

……まあ一応今の私は親を亡くしたみなし子庶民の設定だ。

庶民は王族の顔を見る機会などめったにないから王太子と知らなかったと言ってもおかしなことはない。

(これから彼のことはルーク様と呼ぶべきね……)

跪く私にルーク様が慌てて駆け寄る。

「やめてくれエマ、名乗るのが遅れた俺が悪いんだ。どうか頭を上げてくれ。イザベラ、エマは街育ちなのだから俺の顔など知らなくたって無理はないよ」

ルークの言葉にイザベラは小さく笑った。

「あら、エマさんは街育ちでいらっしゃるのね。たしかにそれは仕方のないことですわ」

庶民の出ということがわかって、先ほどから私に向けられていた敵意のようなものがいくぶんかやわらいだのが感じられた。庶民の出の娘など自分の敵ではないと認知したようだ。

「エマは光魔法所持者なんだ」

「まあ光魔法ですって? 庶民なのにそんなことがあるのですね」

イザベラの言葉にドキリとする。魔法保持者は圧倒的に貴族に多い。疑われているのではないかと一瞬ひやりとしたがそれ以上つっこまれることはなく私はほっと胸を撫でおろした。

なんとしてもあの家に連れ戻されることだけは避けたい。
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