22 / 56
ルーク拉致られる
しおりを挟む
「エマ、すまない! ユリアを見失った!」
自室で本を読んでいたところにフェリクスが飛び込んできた。
「ルーク様と手分けして探したんだが、ルーク様も姿を消してしまった……」
フェリクスがはあはあと肩で息をしている。
「とりあえず落ち着いて、フェリクス。一体何があったの?」
私はフェリクスから一部始終を聞いた。なるほど、ついにユリアが暴挙に出たってわけね。ルーク様もフェリクスも素直だから……。あのユリアと10年以上も一緒にいた私とは人を見る目が違うわね。あのユリアが黙って魔獣だの変質者だのに連れ去られるなんてことあるはずがないわ。
「恐らくそれはユリアのしわざね」
「なに?」
「うまくまかれたってことよ」
「なっ……君の妹は隠密かなにかなのか?」
育ちのいいフェリクスにはユリアのやり方はきっと理解できないのだろう。ユリアだって由緒ある侯爵家の娘として蝶よ花よと育てられたのは間違いないはずなのに、どうしてこう自身の欲に見境がないのか私だって理解に苦しむけれど、今はそんなことを言っている場合じゃない。
「急がないといけないわね……。ユリアがこんな強引な手に出たってことはルーク様を手に入れられないことに相当焦っているわ。媚薬を使われてしまうかも」
「び、びや……媚薬?!」
「既成事実をつくられてしまっては面倒なことになるわ」
「き、既成事実……?!」
フェリクスがなんだか顔を赤くして絶句している。あら……既成事実では伝わらなかったのかしら? それで自分の無知を恥じて赤くなっているのかもしれないわね。
「既成事実というのはつまりヤッテしま……」
「わー! 大丈夫だ! わかっている!」
……そんな大声を出さなくてもいいのに。
「き、君の妹はそういったことを割と気軽にする女性ということか……?」
「気軽にというわけではないけれど、相手が王太子とあらば手段を選ばないところは大いにあるわね」
「な、なんということだ……」
「ルーク様にその気がなくても、そういった気分にさせる薬は世の中にいくらでもあるの」
「な、なるほど……。 そういえば前にも媚薬を作るのに使われる植物について教えてもらったことがあったな。エマ、君はやはり博学だな。だがその知識を使うのはどうか俺に対してだけに……」
フェリクスがなにやらぶつぶつ言っている。
「さ、ぐずぐずしている暇はないわ。ユリアとルーク様の居場所をつきとめないと……!」
そうは言ったもののユリアがルーク様を一体どこへ連れて行ったのか見当もつかない。メイソン家の屋敷は遠く離れすぎているから現実的ではないし、普通に考えたら街のどこかの宿屋だろう。だけど街に宿屋は数えきれないほどある。
まずい、こうしている間にもルーク様の身に(貞操の)危険が迫っているかもしれないというのに。フェリクスが言う。
「ユリアの場所か……。エマ、君の場所はあの時魔道具を使ってすぐに探し出すことができたんだが……」
こんな時なのにフェリクスがなぜかまだ顔を赤くして私を見ている。いや別に嫌なわけじゃないんだけど、今そういう場面じゃないよね?
フェリクスに苦言を呈しようとしたその時、私は忘れていた事実に気がついた。
「……なんだ、簡単なことじゃないの」
勝機が見えた。私のつぶやきにフェリクスはきょとんとした表情を浮かべている。
「フェリクス、あなた大事なことを忘れているわ。ユリアも光魔法の保持者なのよ?」
自室で本を読んでいたところにフェリクスが飛び込んできた。
「ルーク様と手分けして探したんだが、ルーク様も姿を消してしまった……」
フェリクスがはあはあと肩で息をしている。
「とりあえず落ち着いて、フェリクス。一体何があったの?」
私はフェリクスから一部始終を聞いた。なるほど、ついにユリアが暴挙に出たってわけね。ルーク様もフェリクスも素直だから……。あのユリアと10年以上も一緒にいた私とは人を見る目が違うわね。あのユリアが黙って魔獣だの変質者だのに連れ去られるなんてことあるはずがないわ。
「恐らくそれはユリアのしわざね」
「なに?」
「うまくまかれたってことよ」
「なっ……君の妹は隠密かなにかなのか?」
育ちのいいフェリクスにはユリアのやり方はきっと理解できないのだろう。ユリアだって由緒ある侯爵家の娘として蝶よ花よと育てられたのは間違いないはずなのに、どうしてこう自身の欲に見境がないのか私だって理解に苦しむけれど、今はそんなことを言っている場合じゃない。
「急がないといけないわね……。ユリアがこんな強引な手に出たってことはルーク様を手に入れられないことに相当焦っているわ。媚薬を使われてしまうかも」
「び、びや……媚薬?!」
「既成事実をつくられてしまっては面倒なことになるわ」
「き、既成事実……?!」
フェリクスがなんだか顔を赤くして絶句している。あら……既成事実では伝わらなかったのかしら? それで自分の無知を恥じて赤くなっているのかもしれないわね。
「既成事実というのはつまりヤッテしま……」
「わー! 大丈夫だ! わかっている!」
……そんな大声を出さなくてもいいのに。
「き、君の妹はそういったことを割と気軽にする女性ということか……?」
「気軽にというわけではないけれど、相手が王太子とあらば手段を選ばないところは大いにあるわね」
「な、なんということだ……」
「ルーク様にその気がなくても、そういった気分にさせる薬は世の中にいくらでもあるの」
「な、なるほど……。 そういえば前にも媚薬を作るのに使われる植物について教えてもらったことがあったな。エマ、君はやはり博学だな。だがその知識を使うのはどうか俺に対してだけに……」
フェリクスがなにやらぶつぶつ言っている。
「さ、ぐずぐずしている暇はないわ。ユリアとルーク様の居場所をつきとめないと……!」
そうは言ったもののユリアがルーク様を一体どこへ連れて行ったのか見当もつかない。メイソン家の屋敷は遠く離れすぎているから現実的ではないし、普通に考えたら街のどこかの宿屋だろう。だけど街に宿屋は数えきれないほどある。
まずい、こうしている間にもルーク様の身に(貞操の)危険が迫っているかもしれないというのに。フェリクスが言う。
「ユリアの場所か……。エマ、君の場所はあの時魔道具を使ってすぐに探し出すことができたんだが……」
こんな時なのにフェリクスがなぜかまだ顔を赤くして私を見ている。いや別に嫌なわけじゃないんだけど、今そういう場面じゃないよね?
フェリクスに苦言を呈しようとしたその時、私は忘れていた事実に気がついた。
「……なんだ、簡単なことじゃないの」
勝機が見えた。私のつぶやきにフェリクスはきょとんとした表情を浮かべている。
「フェリクス、あなた大事なことを忘れているわ。ユリアも光魔法の保持者なのよ?」
0
あなたにおすすめの小説
【完結】公爵家の秘密の愛娘
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。
過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。
そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。
「パパ……私はあなたの娘です」
名乗り出るアンジェラ。
◇
アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。
この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。
初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。
母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞
🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞
🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇♀️
悪役令嬢、追放先の貧乏診療所をおばあちゃんの知恵で立て直したら大聖女にジョブチェン?! 〜『医者の嫁』ライフ満喫計画がまったく進捗しない件〜
華梨ふらわー
恋愛
第二王子との婚約を破棄されてしまった主人公・グレイス。しかし婚約破棄された瞬間、自分が乙女ゲーム『どきどきプリンセスッ!2』の世界に悪役令嬢として転生したことに気付く。婚約破棄に怒り狂った父親に絶縁され、貧乏診療所の医師との結婚させられることに。
日本では主婦のヒエラルキーにおいて上位に位置する『医者の嫁』。意外に悪くない追放先……と思いきや、貧乏すぎて患者より先に診療所が倒れそう。現代医学の知識でチートするのが王道だが、前世も現世でも医療知識は皆無。仕方ないので前世、大好きだったおばあちゃんが教えてくれた知恵で診療所を立て直す!次第に周囲から尊敬され、悪役令嬢から大聖女として崇められるように。
しかし婚約者の医者はなぜか結婚を頑なに拒む。診療所は立て直せそうですが、『医者の嫁』ハッピーセレブライフ計画は全く進捗しないんですが…。
続編『悪役令嬢、モフモフ温泉をおばあちゃんの知恵で立て直したら王妃にジョブチェン?! 〜やっぱり『医者の嫁』ライフ満喫計画がまったく進捗しない件~』を6月15日から連載スタートしました。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/500576978/161276574
完結しているのですが、【キースのメモ】を追記しております。
おばあちゃんの知恵やレシピをまとめたものになります。
合わせてお楽しみいただければと思います。
「この結婚はなかったことにしてほしい、お互いのためだ」と言われましたが……ごめんなさい!私は代役です
涙乃(るの)
恋愛
男爵家の双子の姉妹のフィオーリとクリスティナは、髪色以外はよく似ている。
姉のフィオーリ宛にとある伯爵家から結婚の申し込みが。
結婚式の1ヶ月前に伯爵家へと住まいを移すように提案されると、フィオーリはクリスティナへ式までの代役を依頼する。
「クリスティナ、大丈夫。絶対にバレないから!
結婚式に入れ替われば問題ないから。お願い」
いえいえいえ、問題しかないと思いますよ。
ゆるい設定世界観です
【完結】捨てられた皇子の探し人 ~偽物公女は「大嫌い」と言われても殿下の幸せを願います~
ゆきのひ
恋愛
二度目の人生は、前世で慕われていた皇子から、憎悪される運命でした…。
騎士の家系に生まれたリュシー。実家の没落により、生きるために皇宮のメイドとなる。そんなリュシーが命じられたのは、廃屋同然の離宮でひっそりと暮らすセレスティアン皇子の世話係。
母を亡くして後ろ盾もなく、皇帝に冷遇されている幼い皇子に心を寄せたリュシーは、皇子が少しでも快適に暮らしていけるよう奮闘し、その姿に皇子はしだいに心開いていく。
そんな皇子との穏やかな日々に幸せを感じていたリュシーだが、ある日、毒を盛られて命を落とした……はずが、目を開けると、公爵令嬢として公爵家のベッドに横たわっていた。けれどその令嬢は、リュシーの死に因縁のある公爵の一人娘……。
望まぬ形で二度目の生を享けたリュシーと、その死に復讐を誓った皇子が、本当に望んでいた幸せを手に入れるまでのお話。
※本作は「小説家になろう」さん、「カクヨム」さんにも投稿しています。
※表紙画像はAIで作成したものです
令嬢から成り下がったメイドの分際で、侯爵様と目が合ってしまって
真好
恋愛
彼はメイドの私に手を差し出した。「私と、踊っていただけませんか?」
かつては公爵令嬢として、誰もが羨む生活を送っていたエルナ。
しかし、国家反逆罪で家は没落し、今は嫌な貴族の下で働く「身分落ち」のメイド。
二度と表舞台に立つことなどないはずだった。
あの日の豪華絢爛な舞踏会で、彼と目が合うまでは。
アルフォンス・ベルンハルト侯爵。
冷徹な「戦場の英雄」として国中の注目を集める、今もっともホットで、もっとも手が届かない男。
退屈そうに会場を見渡していた彼の視線が、影に徹していた私を捉えて。
彼は真っ直ぐに歩み寄り、埃まみれの私に手を差し出した。
「私と、踊っていただけませんか?」
メイドの分際で、英雄のパートナー!?
前代未聞のスキャンダルから始まる逆転劇。
真面目くさった女はいらないと婚約破棄された伯爵令嬢ですが、王太子様に求婚されました。実はかわいい彼の溺愛っぷりに困っています
綾森れん
恋愛
「リラ・プリマヴェーラ、お前と交わした婚約を破棄させてもらう!」
公爵家主催の夜会にて、リラ・プリマヴェーラ伯爵令嬢はグイード・ブライデン公爵令息から言い渡された。
「お前のような真面目くさった女はいらない!」
ギャンブルに財産を賭ける婚約者の姿に公爵家の将来を憂いたリラは、彼をいさめたのだが逆恨みされて婚約破棄されてしまったのだ。
リラとグイードの婚約は政略結婚であり、そこに愛はなかった。リラは今でも7歳のころ茶会で出会ったアルベルト王子の優しさと可愛らしさを覚えていた。しかしアルベルト王子はそのすぐあとに、毒殺されてしまった。
夜会で恥をさらし、居場所を失った彼女を救ったのは、美しい青年歌手アルカンジェロだった。
心優しいアルカンジェロに惹かれていくリラだが、彼は高い声を保つため、少年時代に残酷な手術を受けた「カストラート(去勢歌手)」と呼ばれる存在。教会は、子孫を残せない彼らに結婚を禁じていた。
禁断の恋に悩むリラのもとへ、父親が新たな婚約話をもってくる。相手の男性は親子ほども歳の離れた下級貴族で子だくさん。数年前に妻を亡くし、後妻に入ってくれる女性を探しているという、悪い条件の相手だった。
望まぬ婚姻を強いられ未来に希望を持てなくなったリラは、アルカンジェロと二人、教会の勢力が及ばない国外へ逃げ出す計画を立てる。
仮面舞踏会の夜、二人の愛は通じ合い、結ばれる。だがアルカンジェロが自身の秘密を打ち明けた。彼の正体は歌手などではなく、十年前に毒殺されたはずのアルベルト王子その人だった。
しかし再び、王権転覆を狙う暗殺者が迫りくる。
これは、愛し合うリラとアルベルト王子が二人で幸せをつかむまでの物語である。
笑い方を忘れた令嬢
Blue
恋愛
お母様が天国へと旅立ってから10年の月日が流れた。大好きなお父様と二人で過ごす日々に突然終止符が打たれる。突然やって来た新しい家族。病で倒れてしまったお父様。私を嫌な目つきで見てくる伯父様。どうしたらいいの?誰か、助けて。
有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!!
お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。
皆様、お気に入り登録ありがとうございました。
現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる