『転生した以上、幼馴染+αと美少女ハーレムをつくってイチャラブ学園生活を送ると決心したオレ』

姜維信繁

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第3話 『雨の日の体育と体操服とシルエット』

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 遡って1984年(昭和59年)6月22日(金)放課後 職員室

「続くんですよ、この連鎖は。いつまでも」

 悠真は校長、教頭、教務主任、そして女教師の前で言った。

「連鎖とはなんだね?」

 校長が聞く。

「この負の、いじめの連鎖って事ですよ。例えばここでオレが、何もしなかった。もしくは何らかの方法でいじめが沈静化したとします。来年はボクも中学生ですが、うちは経済的余裕がないんで、近くの公立の中学にすすみます。正人と同じです。これが何を意味するか分かりますか?」

「どういう事かね?」

 と教頭。

 まあ、女教師の件でこいつらが聞く耳を持つようになったのは幸いだな、と悠真は思った。はあ、と溜め息をついて続ける。

「青方少年剣道クラブはご存じですか」

「ああ、あの地域の子供達を集めて、確か中学校3年生くらいまでだったか。やっている剣道クラブだろう?」

「そうです。それで、まあボクは3年生の時に合わずに辞めましたが、正人はそこのクラブ生です。そして、上の学年には川口崇広や比良山信行、その上には野田泰之や海原義人がいるんです。つかがっているんですよ」

 悠真はここまで話して、先生達が察してくれると思ったが、どうやらそれは幻想に過ぎなかったようだ。

「それがどうしたと言うんだね? そりゃあ中3までなら1つ上や2つ上の生徒もいるだろう。だからどうしたのだね?」

 ……溜息しか出ない。

「じゃあ正人が仲の良いその先輩、知ってますか? 中学ではけっこう悪さもして、先生から目を付けられているそうじゃありませんか。正人がボクをいじめていて、そのまま中学校にあがったらどうなると思いますか?」

 悠真はゆっくりと先生達を見回す。

「正人は先輩の威を借りて、またボクをいじめてきますよ。そしてその先輩達も、2年前までこの学校の生徒だったんだから、ボクの事を知っています。ボクがいじめられていた事も知っています。ボクは正人にいじめられ、さらにその先輩達からもっといじめられるんですよ。その時先生方は何かできますか? 中学に通報しますか? 現行犯でもないのに、誰が信用しますか? 奴らは巧妙ですよ」

 全員何も言えなかった。

 負の連鎖というのはこういう事なのだ。いつの頃から始まったかわからないが、いったんイジメが始まると終わらない。『止めてくれよ』と言ったところで止めないのだ。

 そしてイジメられる側も負け癖がつく。言えない自分、反抗できない自分、現状を打破できない自分……。そんな自分に嫌気がさしてどんどん卑屈になっていくんだ。

 そんな連鎖は、断ち切らなきゃならない。

 絶対にだ。

 最初が肝心だと言われるのはそのためなのだ。

 動物の赤ちゃんが刷り込みで最初にみたものを親だと思い込むように、子象が檻に入れられ、鎖で杭につながれて、自分にはできないと調教されてしまうのと同じななのだ。絶対に、嫌だ。




 ■1984年(昭和59年)7月16日(月)

 あの事件の翌日、正人の親が学校に来た。

 当然悠真の父親も来たのだが、どうやら仕事を休んで来たようだ。正人の親は悠真が悪いのと怪我の件でかなり怒っていたが、悠真は正人に怪我を負わせたことに関しては、素直に謝った。

 だってそれは事実だから。でもそれ以外は譲らなかった。前日に悠真は父親からそうとう殴られたが、その父は正人の父親に謝りつつも、そちらにも非はある事をしっかり押し通した。

 悠真にとっては嬉しかった。

 結局子供のしたこと、と言う事でお互いに謝り、全てが不問になったのだが、悠真は正人を許してはいない。暴力の恐怖を植え付け、決して上級生に告げ口しない事。すれば同じ目に遭わせることを日々刷り込みを行ったのだ。




 <風間悠真>
 
 ……暑い。なんでこんな暑い日に、わざわざ体育なんかしなければならないのだ? 終わった後にシャワーを浴びられる訳もなく、ただ教室で汗を拭いて終わり。

 水分補給の飲み物だってない。

 しかもドッチボールなんて。まさかこの歳になってドッチボールやるなんて思いもしない。完全に佐藤康介や大塚幸男、他にもいるが運動神経系のヤツらの独壇場じゃねえか。

 あちー。

 早々と外野になったオレは、ぼーっと眺めるだけの時間が続く。これは、休憩を挟みながら男女混合で毎回ぐちゃぐちゃにチームを混ぜて行うのだが、毎回結果は同じだ。

 別になんの意図もなく、ボールを目で追っていると……。

 ぷるんぷるん、ぷるんぷるん。ゆっさゆっさ、ゆっさゆっさ……。

 ……? ん? 目が行った。いや、行ってしまった、というのが正しい表現だろう。走り回っている太田純美の胸に目が行く。

 ぷるんぷるん、ゆっさゆっさ。

 いや、なんだこれ……。さっと目をそらすと、今度はそこには遠野美咲がいた。あの、遠野美咲ね。

 ぷるぷるっ。ぷるぷるっ。

 純美(なぜか呼び捨て)の『ぷるんぷるん』とは違って、美咲の『ぷるっぷるっ』は、その大きさと形を物語っていた。二人のそれに目を奪われたオレは慌ててバレないように他のヤツらに目を移す。

 


 ぱらぱら……。

 ぱらぱらぱら……。

 さあー。

 ざざあー! ざざざざあー!

 突然降り出した土砂降りの雨が俺達にドッジボールを止めさせ、授業を中断させて教室に避難させるのに時間はかからなかった。全員ずぶ濡れだ。

 運動場から階段を駆け上がって正面玄関に逃げ込んで、靴箱で運動靴を脱ぎ、上履きに履き替える。

 !

 その時にオレは見た。見てしまった。ピタッと張り付いてその膨らみの輪郭をはっきりと露わにした体操服の上着を。慌てて何食わぬ顔で目をそらし、着替えるために教室へ向かう。

 更衣室などはないから、先に男子が教室に入って着替え(元の洋服)をとって廊下に出る。そして女子が中に入ってそれぞれ着替える。なんで男子が外なんだ?

 男女平等とか女性蔑視問題がうんぬん言われた令和だけど、昭和のこの時代から女子は優遇されてねえか? いや、男性目線と女性目線の違いだろうか。
 
 濡れた体操服が肌にへばりつく不快感を取り除くために、さっさと半袖の体操服をぬぎ、シャツに着替える。運動用の半ズボン(ダッサいショートパンツ)も脱いで、デニム地の半ズボンに着替える。

 パンツまで濡れなくて良かった。すぐに校内に逃げてきたのは幸いしたのだろう。廊下に並ぶ男子たちの間で、小声の会話が始まっている。着替え終わったオレは窓際に寄り、雨音に耳を傾ける。

 外の景色はぼやけて見えるが、雨の勢いが少し弱まってきたようだ。本当に通り雨だったのだろうか。

「おい、さっきのすごかったよな」
 
「ああ、あれか。まさか見れるとは思わなかった」

 周りの男子たちの会話が、オレの耳に入ってくる。

「なあ、お前も見ただろ?」
 
 佐藤康介が小声で話しかけてきた。オレは平静を装いつつも、素知らぬ顔で聞き返す。

「何のことだ?」
 
 康介は目配せをしながら、にやりと笑う。

「ほら、さっきの。雨で服が透けて……」

「ああ、あれね」

「なんだよ、見てんじゃん。興味ないのかよ?」

「うーん……」

 返事に困った。まるでAVのタイトルのシチュエーションみたいな状況じゃないか。よくある『隣の若奥様の~』とか『近所のノーブラの奥様が~』とか、ああいうのね。

 そういうシチュエーションに興味がないわけではないが、対象が違う。 

「どうした? 固まってるぞ」

 康介がオレの肩を軽くたたいた。こいつは調子のいいヤツだ。信用して心の中をさらけ出しても、後でそれをみんなにバラされてしまう危険性がある。いや、事実あったんだ。

 誰が言うか。ボケ!

 オレは深呼吸をする。

「うーん……」と言いつつも、頭の中では先ほどの光景が繰り返し再生されていた。

「お前、誰のが一番よかった?」

 康介が悠真の耳元で囁いたが、その質問にオレは一言で答える。

「わからん。女子全員濡れてそうだったろ。わかんねーよ」

「なんだよ。普通じゃん、興味あるの」

 本当は即答で『太田純美』と『遠野美咲』だったんだが、ここで言ってしまうと、とんでもない事になるからだ。




 (おーい! 悠真が『遠野美咲』と『太田純美』のおっぱいが良かったって言ってたぞ~)

 なんて事になりかねない。いや、十分考えられる事なのだ。そんな無様な事は絶対に避けなくてはならない。オレの一生を左右するようなそんな風評被害、面白半分でやられたら良い迷惑だ!




 やがて女子の着替えが終わり、『終わったよ~』という声とともに、女子の一人がひょこっとドアから顔を出した。俺達はゾロゾロと中に入っていくんだが、ふと、美咲と目があった。

 美咲はハッとしたように顔を赤らめて目を伏せた。

 ? ? ?

 良くわからないオレはそのまま自分の席に向かうのだが、純美の席も通る。必然的に純美とも顔を合わせたのだが、純美も同じようにポッと顔を赤くして目をそらした。

 ? ? ?

 どうしたんだ、二人とも?




 結局、その謎は相当後にならないと、解けなかった。




 次回 第4回 (仮)『夏休みの大冒険とエロ本とコンドーム』
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