『転生した以上、幼馴染+αと美少女ハーレムをつくってイチャラブ学園生活を送ると決心したオレ』

姜維信繁

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第10話 『正人よ、またお前か。4対1はさすがに卑怯じゃないか?』

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 1985年(昭和60年)1月7日(月)~それまで

 クリスマスは家族で過ごす年齢で、年末年始は行く年来る年の毎年恒例。カウントダウンなんてイベント、聞いた事もない。そして正月の元旦は校内年賀はがきという謎のはがきの配達に明け暮れた。 

 そ、し、て、待望の初売りだ。

 前世でのオレは、初売りはテレビでCMやっていたが、親にねだっても連れて行って貰えなかった記憶がある。正月は家族と親戚でゆっくりするもんだ、という訳だ。  

 今世は違う。

 佐世保の『四ヶ町アーケード』内にある、川下楽器でギターを買うという大目標があったのだ。じいちゃんからの小遣いと、コツコツ貯めたバイト(手伝い)代を握りしめて向かう。

 初売りらしくごった返している。何も言わずにかき分けてギターの前に行くが、そうはいっても正直なところ、まったく知識がない。 相場も分からず、何が良くて何から始めればいいのか?

「何を探しているの?」

 20代の若い店員さんが、うーんと唸っているオレをみかねて声をかけてきてくれた。

「えーっと、ギターを……。エレキギターを探しているんですけど……」

「はじめて?」

「はい」

 店員はニコッと笑って、うーん、それじゃあね……と色々と探してくれる。

 ああ、なんて神なんだ。仕事とはいえ、こうやって親切にされると素直に嬉しい。

「これなんかどう? 初心者向けだよ」

 そういって店員が紹介してくれたのは、グレコのストラトキャスタータイプ。定価は58,000円が、初売り価格で48,900円と描かれてある。

「でも……これだけじゃダメだから、アンプとかシールドコードが必要だよ」

 また色々とプラスされてきた。

 アンプとシールドコードとピックとその他諸々、教則本も含めて合計72,000円だが、値引きで70,000円でOKらしい。

「うーん……」

 かなり悩んだ。値札を見ると、他にも安いギターは何本かあったからだ。しかし、安物買いの銭失い、というのは今も昔も変わらないのだろう。安いギターはあまり値下げがされていない。

「……じゃあこれで、お願いします」

 決心に時間はかかった。

 でもその店員さんは自分もギターをやっているらしく、売りたいがために言っているのではない事が、51脳のオレが直感で感じ取れたのだ。

 ついでにビデオテープも付けてくれたのが決心のきっかけだったのかもしれない。


 

『SUPER ROCK '84 IN JAPAN』

「な、なんだこりゃあ……。ん? 84年の夏? 去年じゃねえか。Anvil? あ、ボン・ジョヴィだ! Scorpions? Whitesnake? Michael Schenker Group? ……なんだなんだこれは……かっけえ!」 

 背筋に電流が走った、とはこの事である。

 その日からオレのギター入り浸り? が始まった。




 ■1985年(昭和60年)1月7日(月)

「で、なんだよ。用事って……」

 校舎裏に呼び出されたオレは正人に向かって言う。女に呼び出されるならまだしも、男は論外、そしてまた正人なんぞオレの人生に関わるのを許した覚えはない。

「まあ、オレもこのままじゃ終われないからな」

 そう言い返す正人の横には、1つ下の田村弘幸と山本雄大、そして2つ下の松川淳也がいた。

「終われないって何だよ。もうお前、オレに関わってくんなよ、面倒臭い。オレも暇じゃねえんだよ。それから下の学年のヤツ連れてくるの、クソダサいぞ。まじダッせ」

「うるせえ!」

 正人はそう言って俺に殴りかかってきた。オレはさっと避けたんだが、弘幸と雄大がオレの左右の腕を掴んで動きを封じようとした。動きを封じられたら終わりだ。

 オレは巧みにヤツらの動きをかわしながら、淳也に狙いを定めた。

 淳也は一番学年が下なので、オレよりも体が小さい。入り乱れているなかでオレは淳也にケリを食らわした。腹を蹴られた淳也はうずくまったが、オレは容赦はしない。

 うずくまった淳也に馬乗りになって、ポケットの中に忍ばせてあったメリケンサックを手にはめて、淳也の顔面を殴りつけた。

「あいたあ!」

 一撃が入ると必死に淳也は両腕で顔を守ろうとするが、オレはお構いなしに顔を連打する。正人も弘幸も雄大も、淳也に馬乗りになったオレを引き剥がそうとするが、その都度オレは3人の顔面を狙って殴った。

 メリケンサックで殴られるなんて、経験のない痛みだろう。

 3人とも痛みにもだえるが、オレは淳也を殴り続ける。痛みに耐えかねて叫んでいるのか、泣いているのか、よくわからない状態が続くと、3人のうち誰かが先生を呼びに行った。

 いつのまにか淳也に馬乗りになったオレが先生に引き剥がされるという状態になっていたのだ。




 先生に引き離された後、オレは荒い息を吐きながら周りを見回した。校舎裏は騒然としていた。

 淳也は意識はあったが、顔は腫れ上がり、血が滲んでいる。オレは何発殴ったか覚えていない。正人、弘幸、雄大は顔が少し腫れているだけだ。オレは3人に殴られていたが、顔は無傷だった。

「何をしているんだ!」

 教務主任が怒鳴る。

「4人とも、すぐに保健室に行きなさい!」

 またか……。オレは保健室に行かなくてもいいのか? 担任の女教師は、またあんたか、という顔をしている。

 おい、それはちょっと違うだろう?

 淳也から引き剥がされたオレは黙ったまま立ち尽くしていた。アドレナリンが引いていく中で、自分がした事を冷静に分析している。

 職員室に連れて行かれたオレを、校長や教頭をはじめ教師全員が見つめている。

「説明しなさい」

 校長が冷たい声で言った。

「説明って……見てわかんないすか? 校舎裏に正人に呼ばれて行ったら3人がいて、4人がかりで襲われたんですよ。それで正当防衛して、それ以上でもそれ以下でもない」

 校長は眉をひそめ、さらに語気を強めた。
 
「正当防衛だと?  4人がかりで襲われたのは分かる。だが、松川君の怪我の程度を見れば、それ以上のことをしたのは明らかだ」
 
 教頭が一歩前に出て、厳しい口調で言う。
 
「君の言う正当防衛の範囲を大きく超えている。特に松川君に対する暴行は度を越している」

「で?」

 とオレは短く言った。

 職員室内が一瞬で凍りついた。いまだかつてこのように論理的に反論した生徒は、去年のオレ以降、前にも後にもいない。教頭の顔が驚きと怒りで歪む。
 
「何だと? このような状況で、そんな態度をとるつもりか?」

 教頭がワナワナと震えているが、オレは冷静に話を続けた。正直この手の話はもうウンザリなんだよ。なんでオレが被害者なのに加害者側で話が進むんだ?

「じゃあ、逆に聞きますが、あの状況でオレにどうしろと? どうすれば丸く収まったんでしょうか?」

 オレは淡々と、冷めた目で教頭を見た。教頭は一瞬言葉に詰まっていたが、深呼吸をしてゆっくり答えた。
 
「暴力で解決しようとするのが間違いだ。先生や他の大人に助けを求めるべきだった」

 あははははははは! 

「あなたバカですか? じゃあ4人に囲まれた時点で『ちょっと待って、先生呼んでくるから』って言えば良かったんですね。そうすれば彼らは大人しく待っていてくれたと?」

 教頭の顔が真っ赤になった。オレの言葉に明らかに動揺している。
 
「そ、そういう問題ではない……」

 教頭が言葉を濁したので、オレは続けた。

「わかりました、じゃああの時、オレが叫んで助けを求めたとしましょう。職員室まで聞こえてましたか? 仮に聞こえていたとして、先生方が来るまで4対1の状態で、一方的にオレはやられなかったと?」

 教頭は言葉につまり、他の教師たちを見渡した。誰も即座に反論できない様子だった。校長が咳払いをして、話に割って入った。
 
「確かに君の言うとおりだ。その状況では、すぐに助けを呼ぶのは難しかっただろう。しかし、問題は暴力の度合いだ」
 
 オレははああ……とため息をついた。

「で、じゃあこれからどうするんです?」

 校長は眉をひそめ、ゆっくりと答えた。
 
「まず両親に連絡を取る。そして君は一時的に自宅謹慎とする。その間に、我々も事態を詳しく調査し、適切な対応を考える」

「そうですか、わかりました」




「はいもしもし五峰町立五峰西小学校です」

「ああ、こちらは株式会社テレビ長崎の佐藤と申しますが」

「はい、佐藤様ですね」

「実は取材をお願いしたくお電話差し上げたのですが……」

「はあ、それでしたら……一体なんの取材なんでしょうか」

「実は複数の投書がありまして、その内容が『壮絶! 4対1のリンチに学校側の無策! 被害者が一方的に加害者になるイジメの闇』という題名でして……」

「えええ! ?」




「もしもしこんにちは。NHK長崎の西村と申しますが……」

「……長崎新聞社の北川ですが……」

「もしもしNBCの笹川と申しますが……」




 次回 第11話 (仮)『バレンタインデー』
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