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第28話 『有川港花火大会』
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1985年(昭和60年)8月11日(日) 有川港 <風間悠真>
夏のイベントと言えば、というくらいベタなのが花火大会であるが、恋人同士なら必ず1度は話題に上るだろう。とは言っても単純に花火を見るだけだから、正直なところ30分もあれば終わるのだ。
要するにロマンティックな共通体験をすることで、恋人同士という認識をお互いに高める。そういう意味合いなのだろう。そう51脳は冷静に分析しているのだが、今日は美咲の日だ。
毎日の登下校と同じように、今年、多分来年以降もそうなるだろうが、2人っきりで過ごす。18日が凪咲で25日が純美という感じだ。当然の事ながら、人が集まれば縁日のように出店ができる。
花火大会は夏祭りと一緒になっているものも多く、今回もそうだ。
昼過ぎから色んなイベントをやっているんだが、オレ達4人はバイトだ。だからバイト終わりに家に帰ってから、待ち合わせとなった。もし、他の2人と鉢合わせしても、知らん顔がルールになっている。
美咲は小さな巾着袋を持って浴衣姿で現れた。女子の浴衣が嫌いな男子はこの世にいないと断言できる! 水色と白、そしてピンクの混ざった朝顔の柄で、それよりも少し濃いめのピンクの帯だ。
「悠真お待たせ~」
「お、おう」
あまりのかわいさに12脳のオレはドギマギする。
「どうしたの悠真? あんまり可愛いからドキドキしてる?」
思わず顔が熱くなるのを感じた。美咲の言葉に嘘はない。確かにドキドキしているのだ。でも、それを素直に認めるのは恥ずかしい。51脳なら上手い言葉でも思いつくのだろうが、12脳はそうはいかない。
「そ、そんなことないよ」
慌てて否定するオレの声に、美咲はクスッと笑う。
「え~残念! ホントに~? もう、素直じゃないんだから」
オレはこの時代に(この世界・この世界観)に転生してから、実感している。確かに女の方が精神年齢が高い。確か何かの統計で読んだけど7歳程度は高いようだ。
計算すると12+7で19歳。18~19歳程度の精神年齢なのだろうか?
そりゃあ12脳が敵うはずない。
そんな事を考えていると、美咲はオレの腕に自然に手を添えた。その仕草があまりにも自然で、オレは息をのむ。手をつなぐのではなく、肘より上だ。
美咲の胸が、腕に当たる。
コイツ間違いなく、わかってやっているぞ。確信犯だ。
祭りの活気ある人の海に紛れながら、オレたちは歩き始めた。出店が並んでいるエリアは人であふれかえっている。浴衣姿の女の子たちや、Tシャツにジーンズという軽装の男子たち。みんな夏の夜を楽しんでいた。
「ねえ悠真、あそこのヨーヨー釣り、やってみない?」
美咲が指さす方向を見ると、確かに色とりどりのヨーヨーが水に浮かんでいる。
うーん、金魚すくいと両翼をなす定番だ。
「うん、やってみようか」
オレたちが出店に近づくと店主のおじさんが声をかけてくる。
「お、若いお二人さん。恋人同士なら、赤いヨーヨーを釣り上げると幸せになれるって言うんだぜ」
「 「えっ?」 」
オレ達は互いに見合ってお互いの顔が赤くなるのを確認した。いろんな物を見て回ったり食べたりして、楽しい時間はあっという間に過ぎていく。
オレも美咲も人混みは好きではない。だからちょうど花火が始まるまでには会場の隅にいて、遠くから眺められるベストポジションを発見した。
「ここならよく見えるね」
「そうだな」
オレ達は会場から少し離れた神社へ向かう石段を上り、人気のない場所に腰を下ろした。一番上の神社の境内はスポットになっていて、混んではいないが人がいるからだ。
遠くに聞こえる祭りのにぎやかさを耳にしながら、飲み物は横に置いてある。辺りはほどよい明るさで、街灯の明かりに虫が群がっていた。
「ねえ悠真。私、幸せだよ」
美咲がオレの手の上にそっと手を重ねてきた。
「うん、オレも幸せだよ」
オレは重ねた美咲の手を握ると、彼女はオレの肩に頭を預ける。
ドーン! ドーン!
花火が始まったようだ。大きな破裂音が連続して聞こえる。その音が心臓の鼓動と重なる。
ドーン! ドドドドンッ!
花火の音は続くが、オレ達の会話はない。ただ、手を通じて互いの気持ちを伝えあっていた。
ドーン! ドドドドンッ!
美咲はオレの肩から頭を起こすと、首を傾けてオレを見上げる。その瞳は潤み、花火の光が彼女の瞳に映った。オレはゆっくりと目を閉じる美咲に顔を近づけた。
「ん……」
美咲とは学校の帰り道の神社で何度もキスをしているが、こういうシチュエーションだとまた格別だ。美咲もいつもと違う表情をしている。ような気がする。
オレは左腕で美咲の肩を抱き、右腕をそっと美咲の胸に持っていく。軽く触れた後に手のひら全体で胸を包み込むように、触れたのだ。
「あん……」
美咲の拒否反応はない。それどころかさらに顔を赤らめている。
以前神社では拒否られたのに、どうしたんだ? 心境の変化か? それともこのシチュエーションか?
オレはそのまままさぐりながら先端を探す。探し当てた先端は浴衣の上からでもわかるほどに突起していた。
「ん……あ……」
美咲は小さな吐息を漏らし、体をよじらせる。
ドーン! ドドドドンッ! オレは我慢ができなくなり、今度は浴衣の下に手を入れて直にさわる。美咲の体温が伝わり、鼓動が手を伝ってくるようだ。
ブラジャーはしていない。
手を動かす度に美咲の体が少しだけビクンと動く。
「ねえ悠真」
「え?」
次はどうしようかとパンクしそうな12脳が考えていた時、唐突に火照った声で美咲がオレを呼んだ。
「私の事、好き?」
「も、もちろん。好きだよ」
「私も大好き♡ 私の事、大切にしたいって、思ってくれてる?」
あ! これはあれだ、あのメッセージだ。
私を大事にしたいと思うなら、ね? わかるでしょ? という……。
神社で断られたあの時、美咲は『ダメ、まだ……今は、ダメ……』と言った。これは、オレになら許してもいいけど、ちゃんと愛を確かめて、ゆっくり順序立ててじゃないと嫌……。
そういうメッセージなのか?
かああ! 面倒くさい! (不謹慎だ!)じゃなく、おいおいおい。
これは、時間はかかるが、イケる! というサインだろう。じゃあ焦ることはないと、51脳が破裂しそうな12脳を制御する。
「当たり前だ」
オレはそう言って美咲と何度もキスをした。
次回 第29話 (仮)『新城悟とその仲間達』
夏のイベントと言えば、というくらいベタなのが花火大会であるが、恋人同士なら必ず1度は話題に上るだろう。とは言っても単純に花火を見るだけだから、正直なところ30分もあれば終わるのだ。
要するにロマンティックな共通体験をすることで、恋人同士という認識をお互いに高める。そういう意味合いなのだろう。そう51脳は冷静に分析しているのだが、今日は美咲の日だ。
毎日の登下校と同じように、今年、多分来年以降もそうなるだろうが、2人っきりで過ごす。18日が凪咲で25日が純美という感じだ。当然の事ながら、人が集まれば縁日のように出店ができる。
花火大会は夏祭りと一緒になっているものも多く、今回もそうだ。
昼過ぎから色んなイベントをやっているんだが、オレ達4人はバイトだ。だからバイト終わりに家に帰ってから、待ち合わせとなった。もし、他の2人と鉢合わせしても、知らん顔がルールになっている。
美咲は小さな巾着袋を持って浴衣姿で現れた。女子の浴衣が嫌いな男子はこの世にいないと断言できる! 水色と白、そしてピンクの混ざった朝顔の柄で、それよりも少し濃いめのピンクの帯だ。
「悠真お待たせ~」
「お、おう」
あまりのかわいさに12脳のオレはドギマギする。
「どうしたの悠真? あんまり可愛いからドキドキしてる?」
思わず顔が熱くなるのを感じた。美咲の言葉に嘘はない。確かにドキドキしているのだ。でも、それを素直に認めるのは恥ずかしい。51脳なら上手い言葉でも思いつくのだろうが、12脳はそうはいかない。
「そ、そんなことないよ」
慌てて否定するオレの声に、美咲はクスッと笑う。
「え~残念! ホントに~? もう、素直じゃないんだから」
オレはこの時代に(この世界・この世界観)に転生してから、実感している。確かに女の方が精神年齢が高い。確か何かの統計で読んだけど7歳程度は高いようだ。
計算すると12+7で19歳。18~19歳程度の精神年齢なのだろうか?
そりゃあ12脳が敵うはずない。
そんな事を考えていると、美咲はオレの腕に自然に手を添えた。その仕草があまりにも自然で、オレは息をのむ。手をつなぐのではなく、肘より上だ。
美咲の胸が、腕に当たる。
コイツ間違いなく、わかってやっているぞ。確信犯だ。
祭りの活気ある人の海に紛れながら、オレたちは歩き始めた。出店が並んでいるエリアは人であふれかえっている。浴衣姿の女の子たちや、Tシャツにジーンズという軽装の男子たち。みんな夏の夜を楽しんでいた。
「ねえ悠真、あそこのヨーヨー釣り、やってみない?」
美咲が指さす方向を見ると、確かに色とりどりのヨーヨーが水に浮かんでいる。
うーん、金魚すくいと両翼をなす定番だ。
「うん、やってみようか」
オレたちが出店に近づくと店主のおじさんが声をかけてくる。
「お、若いお二人さん。恋人同士なら、赤いヨーヨーを釣り上げると幸せになれるって言うんだぜ」
「 「えっ?」 」
オレ達は互いに見合ってお互いの顔が赤くなるのを確認した。いろんな物を見て回ったり食べたりして、楽しい時間はあっという間に過ぎていく。
オレも美咲も人混みは好きではない。だからちょうど花火が始まるまでには会場の隅にいて、遠くから眺められるベストポジションを発見した。
「ここならよく見えるね」
「そうだな」
オレ達は会場から少し離れた神社へ向かう石段を上り、人気のない場所に腰を下ろした。一番上の神社の境内はスポットになっていて、混んではいないが人がいるからだ。
遠くに聞こえる祭りのにぎやかさを耳にしながら、飲み物は横に置いてある。辺りはほどよい明るさで、街灯の明かりに虫が群がっていた。
「ねえ悠真。私、幸せだよ」
美咲がオレの手の上にそっと手を重ねてきた。
「うん、オレも幸せだよ」
オレは重ねた美咲の手を握ると、彼女はオレの肩に頭を預ける。
ドーン! ドーン!
花火が始まったようだ。大きな破裂音が連続して聞こえる。その音が心臓の鼓動と重なる。
ドーン! ドドドドンッ!
花火の音は続くが、オレ達の会話はない。ただ、手を通じて互いの気持ちを伝えあっていた。
ドーン! ドドドドンッ!
美咲はオレの肩から頭を起こすと、首を傾けてオレを見上げる。その瞳は潤み、花火の光が彼女の瞳に映った。オレはゆっくりと目を閉じる美咲に顔を近づけた。
「ん……」
美咲とは学校の帰り道の神社で何度もキスをしているが、こういうシチュエーションだとまた格別だ。美咲もいつもと違う表情をしている。ような気がする。
オレは左腕で美咲の肩を抱き、右腕をそっと美咲の胸に持っていく。軽く触れた後に手のひら全体で胸を包み込むように、触れたのだ。
「あん……」
美咲の拒否反応はない。それどころかさらに顔を赤らめている。
以前神社では拒否られたのに、どうしたんだ? 心境の変化か? それともこのシチュエーションか?
オレはそのまままさぐりながら先端を探す。探し当てた先端は浴衣の上からでもわかるほどに突起していた。
「ん……あ……」
美咲は小さな吐息を漏らし、体をよじらせる。
ドーン! ドドドドンッ! オレは我慢ができなくなり、今度は浴衣の下に手を入れて直にさわる。美咲の体温が伝わり、鼓動が手を伝ってくるようだ。
ブラジャーはしていない。
手を動かす度に美咲の体が少しだけビクンと動く。
「ねえ悠真」
「え?」
次はどうしようかとパンクしそうな12脳が考えていた時、唐突に火照った声で美咲がオレを呼んだ。
「私の事、好き?」
「も、もちろん。好きだよ」
「私も大好き♡ 私の事、大切にしたいって、思ってくれてる?」
あ! これはあれだ、あのメッセージだ。
私を大事にしたいと思うなら、ね? わかるでしょ? という……。
神社で断られたあの時、美咲は『ダメ、まだ……今は、ダメ……』と言った。これは、オレになら許してもいいけど、ちゃんと愛を確かめて、ゆっくり順序立ててじゃないと嫌……。
そういうメッセージなのか?
かああ! 面倒くさい! (不謹慎だ!)じゃなく、おいおいおい。
これは、時間はかかるが、イケる! というサインだろう。じゃあ焦ることはないと、51脳が破裂しそうな12脳を制御する。
「当たり前だ」
オレはそう言って美咲と何度もキスをした。
次回 第29話 (仮)『新城悟とその仲間達』
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