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第31話 『面倒くさいがまたクラス委員。高遠菜々子と』
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1985年(昭和60年)9月2日(火) 始業式 <風間悠真>
昨日、悟くんのバンドを観に行って、祐介も行ったんだが、一緒に練習ができた。やっぱり次元が違う。なんてったってオレはギター歴9か月だからね!
参加メンバーは悟くんとドラム、残りはボーカルなんだが、これはOKが貰えなかったみたい。最悪はオレが歌うように言われた。英語の勉強はしてきたけど、歌は……。
安全地帯でも中村あゆみでも、サザンでもオメガトライブでもないのだ。
おそらく、誰も知らない。
ハノイロックスとモトリークルーなんだよね。当然、英語だ。そして、リンキング問題(音の変化や欠落等)がある。
まじで、頭痛いな。
■新学期 1年2組
「はい、では学級委員を決めたいと思います。立候補者いませんか~」
日直の声が教室中に響き渡るが、悠真はそれどころではない。ボーカルが見つからなければ、オレが歌わなくちゃいけないのだ。しかもカラオケボックスなんてない。
発声練習は海とかでやるとして、カセットに録音でもしてやるしかないか……。文化祭までに間に合うかな?
ボーカルのことが頭から離れず、どうやって英語の歌を完璧に歌いこなすか、悠真はそればかりを考えていた。
「せんせーい! 男子の学級委員は、風間君がいいと思いまーす!」
隣の席の高遠菜々子が唐突に手をあげ、悠真を推薦したのだ。離れた席にいた遠山修一がチラッと菜々子をみて舌打ちをしている。入学式以来、影が薄いのだ。
小学生の時は、恐らくクラスの中心で人気者だったのだろう。
悠真の一撃でその地位から陥落したのだ。もっとも当の悠真はそんな事はどうでもいい。ただ自分に降りかかってくる火の粉を振り払っているだけで、べつにケンカ至上主義ではない。
「風間君、高遠さんからの推薦だけど、どうかな? ……風間君? 風間君!」
「え? あ、はい?」
悠真は突然の呼びかけに我に返った。クラス全員の視線が自分に集まっているのに気づき、一瞬戸惑う。
「風間君、高遠さんが推薦してくれたけど、学級委員をやってくれるかな?」
(くそ、ボーカルの事で頭がいっぱいで……でも、断るわけにもいかないよな)
「風間くん、どう? 学級委員やってみない?」
隣の席の高遠菜々子が小声で話しかけてきた。
「え? あー、そうだな……」
悠真は迷った。学級委員の仕事は面倒くさいが、菜々子との関係を深める良いチャンスかもしれない。しかし、バンドの練習時間も確保する必要がある。
「私も立候補しようと思ってるんだ。一緒にやれたら楽しいかなって」
菜々子の言葉に悠真の心が揺れた。彼女と一緒に仕事をする機会は……でも、バンドは……。
「わかった。やってみるよ」
<風間悠真>
今日は始業式で、終わったらホームルームのあとは部活動だ。
練習の準備をしていると、菜々子がオレに近づいてきた。
「ねえ、風間君。突然名前言っちゃってごめんね」
「いや、別に。大丈夫だよ」
オレは平静を装いつつ答える。
「それより、なんで俺を?」
「……だって、夏休み、全然話せなかったでしょ。それに、風間君なら絶対にいい学級委員になれると思ったから!」
ん? これは期待大なのか?
「そう……か?」
オレはちょっと戸惑ったが、菜々子のその言葉をそのまま受け止めた。
「まあ、頑張るよ」
「うん! 私も頑張るね。これからよろしくね、風間君!」
菜々子は嬉しそうに笑顔を見せた。その表情に、悠真は何か引っかかるものを感じた。
(夏休み中、全然話せなかったって……気にしてたのか? まあバイトとバンドと、えーっと佐世保にお泊まりにいろいろあったからな……)
「あのさ、高遠さん、夏休み中、俺のこと気にしてたの?」
菜々子の頬が少し赤くなった。
「え? あ、そう……そうかも。風間君と一緒に勉強したの、楽しかったから……」
菜々子の言葉に、オレは予想外の発展を感じ取った。押してダメなら引いてみろ? ちょっと違うが、似たようなものなのか?
「そっか。俺も楽しかったよ」
レオは笑顔で答える。
「ねえ、放課後……軽音楽部の、練習でしょ? 放課後……一緒に帰らない? その……学級委員の事でいろいろ話したいし」
いや、礼子もそうだけど、帰り道逆なんですけど……。
あ! ていうか思い出した! 今日は礼子の日だよ! 給食のない日は祐介との練習にかこつけて、反対方向だけど礼子と一緒に帰っていたんだった。
いや、どうする?
「あの……実は今日、定期忘れちゃって……歩いて帰らなくちゃいけないの。夜道を1人で帰るの、ちょっと怖いから、ね、一緒に帰れない?」
ん? 冷静に考えて行って戻って、家に着くまで歩いたら1時間半かかるよ? いや、そりゃあ祐介のとこ行った時は夜まで練習して19時の最終バスで帰ってるけどさ……。
「だめ?」
ぐあああああああ! 上目遣いが強烈で可愛いすぎる! なんだこれ、わかってやってんのか?
ポニーテールでモフモフしたい!
あ、女は恥ずかしいから理由をつけて自分の行動を正当化するっていうな。まあ、男もそうかもしらんけど、いやいや、そもそも夜道って昼じゃねえか! 15時前に部活は終わるぞ。
例:終電がなくなったから~。
「う、お、おお、わかった。じゃあ部活終わってからな」
「うん! ありがとう! じゃあ後でね!」
菜々子はスキップにも似た足取りで教室を出て行った。
ああ、シャンプーの匂いがいい……。
ごめん、礼子。
……いや、うん。ハーレムつくるって決めたんだから、謝るよりは、どう喜ばすかを考えよう。
次回 第32話 (仮)『三連休と生徒会』
昨日、悟くんのバンドを観に行って、祐介も行ったんだが、一緒に練習ができた。やっぱり次元が違う。なんてったってオレはギター歴9か月だからね!
参加メンバーは悟くんとドラム、残りはボーカルなんだが、これはOKが貰えなかったみたい。最悪はオレが歌うように言われた。英語の勉強はしてきたけど、歌は……。
安全地帯でも中村あゆみでも、サザンでもオメガトライブでもないのだ。
おそらく、誰も知らない。
ハノイロックスとモトリークルーなんだよね。当然、英語だ。そして、リンキング問題(音の変化や欠落等)がある。
まじで、頭痛いな。
■新学期 1年2組
「はい、では学級委員を決めたいと思います。立候補者いませんか~」
日直の声が教室中に響き渡るが、悠真はそれどころではない。ボーカルが見つからなければ、オレが歌わなくちゃいけないのだ。しかもカラオケボックスなんてない。
発声練習は海とかでやるとして、カセットに録音でもしてやるしかないか……。文化祭までに間に合うかな?
ボーカルのことが頭から離れず、どうやって英語の歌を完璧に歌いこなすか、悠真はそればかりを考えていた。
「せんせーい! 男子の学級委員は、風間君がいいと思いまーす!」
隣の席の高遠菜々子が唐突に手をあげ、悠真を推薦したのだ。離れた席にいた遠山修一がチラッと菜々子をみて舌打ちをしている。入学式以来、影が薄いのだ。
小学生の時は、恐らくクラスの中心で人気者だったのだろう。
悠真の一撃でその地位から陥落したのだ。もっとも当の悠真はそんな事はどうでもいい。ただ自分に降りかかってくる火の粉を振り払っているだけで、べつにケンカ至上主義ではない。
「風間君、高遠さんからの推薦だけど、どうかな? ……風間君? 風間君!」
「え? あ、はい?」
悠真は突然の呼びかけに我に返った。クラス全員の視線が自分に集まっているのに気づき、一瞬戸惑う。
「風間君、高遠さんが推薦してくれたけど、学級委員をやってくれるかな?」
(くそ、ボーカルの事で頭がいっぱいで……でも、断るわけにもいかないよな)
「風間くん、どう? 学級委員やってみない?」
隣の席の高遠菜々子が小声で話しかけてきた。
「え? あー、そうだな……」
悠真は迷った。学級委員の仕事は面倒くさいが、菜々子との関係を深める良いチャンスかもしれない。しかし、バンドの練習時間も確保する必要がある。
「私も立候補しようと思ってるんだ。一緒にやれたら楽しいかなって」
菜々子の言葉に悠真の心が揺れた。彼女と一緒に仕事をする機会は……でも、バンドは……。
「わかった。やってみるよ」
<風間悠真>
今日は始業式で、終わったらホームルームのあとは部活動だ。
練習の準備をしていると、菜々子がオレに近づいてきた。
「ねえ、風間君。突然名前言っちゃってごめんね」
「いや、別に。大丈夫だよ」
オレは平静を装いつつ答える。
「それより、なんで俺を?」
「……だって、夏休み、全然話せなかったでしょ。それに、風間君なら絶対にいい学級委員になれると思ったから!」
ん? これは期待大なのか?
「そう……か?」
オレはちょっと戸惑ったが、菜々子のその言葉をそのまま受け止めた。
「まあ、頑張るよ」
「うん! 私も頑張るね。これからよろしくね、風間君!」
菜々子は嬉しそうに笑顔を見せた。その表情に、悠真は何か引っかかるものを感じた。
(夏休み中、全然話せなかったって……気にしてたのか? まあバイトとバンドと、えーっと佐世保にお泊まりにいろいろあったからな……)
「あのさ、高遠さん、夏休み中、俺のこと気にしてたの?」
菜々子の頬が少し赤くなった。
「え? あ、そう……そうかも。風間君と一緒に勉強したの、楽しかったから……」
菜々子の言葉に、オレは予想外の発展を感じ取った。押してダメなら引いてみろ? ちょっと違うが、似たようなものなのか?
「そっか。俺も楽しかったよ」
レオは笑顔で答える。
「ねえ、放課後……軽音楽部の、練習でしょ? 放課後……一緒に帰らない? その……学級委員の事でいろいろ話したいし」
いや、礼子もそうだけど、帰り道逆なんですけど……。
あ! ていうか思い出した! 今日は礼子の日だよ! 給食のない日は祐介との練習にかこつけて、反対方向だけど礼子と一緒に帰っていたんだった。
いや、どうする?
「あの……実は今日、定期忘れちゃって……歩いて帰らなくちゃいけないの。夜道を1人で帰るの、ちょっと怖いから、ね、一緒に帰れない?」
ん? 冷静に考えて行って戻って、家に着くまで歩いたら1時間半かかるよ? いや、そりゃあ祐介のとこ行った時は夜まで練習して19時の最終バスで帰ってるけどさ……。
「だめ?」
ぐあああああああ! 上目遣いが強烈で可愛いすぎる! なんだこれ、わかってやってんのか?
ポニーテールでモフモフしたい!
あ、女は恥ずかしいから理由をつけて自分の行動を正当化するっていうな。まあ、男もそうかもしらんけど、いやいや、そもそも夜道って昼じゃねえか! 15時前に部活は終わるぞ。
例:終電がなくなったから~。
「う、お、おお、わかった。じゃあ部活終わってからな」
「うん! ありがとう! じゃあ後でね!」
菜々子はスキップにも似た足取りで教室を出て行った。
ああ、シャンプーの匂いがいい……。
ごめん、礼子。
……いや、うん。ハーレムつくるって決めたんだから、謝るよりは、どう喜ばすかを考えよう。
次回 第32話 (仮)『三連休と生徒会』
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