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第34話 『しびれを切らした2年生にボコられる?』
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1985年(昭和60年)9月24日(火) <風間悠真>
生徒会の定例会議は月水金だが、三連休の後で月曜が祝日だったので、今週は火水金が定例会議となっていた。
数え上げればきりがないが、よくよく考えるとオレが生徒会に入りたくなかった理由の1つが、生徒会室の場所だ。会長が3年だから、1階にあるのが当然と言えば当然だけどね。
でも下級生が上級生のフロアにいて、気持ちいいわけがない。
生徒会室に行くのは嫌だが、いかなくちゃならない。オレは1組と2組の間にある中央階段から1階まで下りる。放課後、部活動で体育館や運動場に生徒が散らばっているので、校舎には人が少ない。
「あー、面倒くせえな……由美子先輩の事がなかったら生徒会なんて入ってないのに……」
ブツブツ言っていた俺の視界が急に真っ暗になった。
「ん! ご! ……ぐがが」
猿ぐつわみたいな物をはめられて、頭から何かかぶせられて、何も見えない……。
やべえ、やられたか……。
オレは思った。ついに2年の不良グループに捕まったのだ。
複数の手に体を掴まれ、引きずられるように連れて行かれる。足音から察するに、少なくとも3人はいるようだ。オレは必死に抵抗しようとするが、力では敵わない。
しばらく歩かされた後、突然止まる。ドアの開く音がして、オレは中に押し込められた。頭から被せられていた布が取り払われ、目の前には……。
「よう悠真、やっとだな。やっと……」
目の前には2年剣道部の川口崇広、バレー部の比良山信行と山内勇人がいた。そしてその脇にはニヤニヤ笑った小林正人と遠山修一がいた。田中勇輝もいる。
……こいつら、やっぱりな。
小学生の時にボコった正人と、入学早々ボコった修一、それから礼子をいじめていて退散させた勇輝だ。
「お前らまでなにやってんだよ」
オレは3人を順番に睨みつけた。
こいつらが先輩に密告して、生意気だからやっちゃってくださいとか言ったんだろう?
まじか。まじでそんなドラマみたいなクソがいるんだな……。
「悠真、オレがこの日をどれだけ待ち望んだか」
と修一。それに正人が続く。
「そうだ。お前なんかがいいかっこ、いつまでもしてんじゃねえぞ、悠真」
勇輝がそれに続こうとしているが、オレはその前に全員を見た。
「おい、オメエラにはまだ『悠真』って呼んでいいなんて、言ってねえぞ」
「ははははは、何言ってんだお前? 先輩、こんなヤツなんですよ。クソ生意気でしょう?」
勇輝が少し甲高い声でまくし立てた。
「くそ! 馬鹿馬鹿しい。オレは帰る!」
強行突破して部室から出ようとするが、当然固められている。
「どけ! おらっ!」
「帰すわけねえだろうがよ! くそが!」
オレは勇輝を払いのけて部室のドアから帰ろうとするが、3人に押さえこまれてしまった。さすがに3対1は分が悪い。
「おらよっ!」
「痛ってえ!」
崇広(2年・川口崇広)が振りかざした竹刀が腕に当たった。まだ制服は半袖で、直に当たった竹刀は相当痛い。
「その通りだよっ!」
「ぐはっ」
信行(バレー部2年・比良山信行)が蹴りを腹に思いっきりいれたと思えば、同じくバレー部の勇人(2年・山内勇人)が顔面をねらって殴りかかる。
「ぐ……」
オレは2人に両手を押さえられ、1人に腰を固定されて全く動けないので、歯を食いしばるくらいしかできない。
必死に耐えたが、体中に痛みが広がっていく。蹴りや竹刀の一撃が容赦なくオレを打ち続ける。頭の中では冷静に状況を分析しようとする自分がいる一方で、体は衝撃に耐えるのが精一杯だ。
「やっぱり、抵抗できねえよな?」
正人が鼻で笑いながら、上から見下ろしている。
「お前がどんなにカッコつけようが、結局はただのガキだ。俺たちに逆らうってのが、どれだけ無謀か思い知れよ」
修一も薄笑いを浮かべながら言葉を続ける。
ガキ、だと……? お前らも同じ12じゃねえか。しかもやってる事はくそガキだ。
「いつもの勢いはどこに行ったんだ? お前はただの自己満足で、俺たちをバカにしてたんだよな。もう少し謙虚になるべきだったな」
こいつらは一体何を言っているんだ?
オレは必死に顔を上げ、相手の目を睨みつけたが、力が入らない。口元から血がにじむのを感じたが、それでも言い返したのだ。
「……くだらねぇ……お前ら、オレを殺す気でやってんのか?」
「は? んなわきゃねえだろうが。誰が殺すまでやるかよ」
「じゃあお前ら、今日オレを殺さない事を後悔するぞ。知っているか? オレはヤクザじゃないが、ヤクザはなめられたら終わりだから、今日やられたら明日、明日やられたら明後日と、死ぬまで復讐をするらしいぜ。オレもこのまま中学卒業したくねえからな。お前らが止めるまで、とことんやるぞ。それでいいのか?」
正人たちはオレの言葉に一瞬、驚いたような表情を見せたが、すぐに修一が笑い飛ばした。
「ははは、脅しか? 悠真、そんなセリフでビビると思ってんのか?」
「いや、脅しじゃねぇよ。事実だ。お前らが今、こうやってオレをボコボコにしてるみたいに、オレもお前らにやり返すだけだ。今日帰ったら、それが始まるんだぜ」
オレの冷静な声に、少しずつ奴らの表情に緊張が走っていくのがわかった。
もちろん、今オレはどうしようもない状況にいる。6対1の力関係が覆るわけじゃない。でも、ここで引いたら本当に終わりだ。
「オレを本当に無視できるか? お前らの一生に付きまとうぞ。毎日学校に来るたび、家に帰るたび、いつか復讐されるって思いながら生きていけるか?」
修一が首をかしげ、正人も黙り込んだ。勇輝もあまり状況がのみ込めていない様子だ。
「うる、せえな……。ああ面倒くせえ、やっちまえ!」
崇広の号令で一斉にオレは袋だたきにされた。
「きゃあっ! どうしたの悠真その顔!」
オレがあまりにも来ないので火曜日の凪咲が探してくれたが、オレは校舎裏の手洗い場で口をゆすぎ、蛇口を上向きにして弱めに水を流して顔に当てていたところだった。
「何でもねえよ。ただ、やり返すだけだ……」
次回 第35話 (仮)『別に不意打ちでも問題ないよね?』
生徒会の定例会議は月水金だが、三連休の後で月曜が祝日だったので、今週は火水金が定例会議となっていた。
数え上げればきりがないが、よくよく考えるとオレが生徒会に入りたくなかった理由の1つが、生徒会室の場所だ。会長が3年だから、1階にあるのが当然と言えば当然だけどね。
でも下級生が上級生のフロアにいて、気持ちいいわけがない。
生徒会室に行くのは嫌だが、いかなくちゃならない。オレは1組と2組の間にある中央階段から1階まで下りる。放課後、部活動で体育館や運動場に生徒が散らばっているので、校舎には人が少ない。
「あー、面倒くせえな……由美子先輩の事がなかったら生徒会なんて入ってないのに……」
ブツブツ言っていた俺の視界が急に真っ暗になった。
「ん! ご! ……ぐがが」
猿ぐつわみたいな物をはめられて、頭から何かかぶせられて、何も見えない……。
やべえ、やられたか……。
オレは思った。ついに2年の不良グループに捕まったのだ。
複数の手に体を掴まれ、引きずられるように連れて行かれる。足音から察するに、少なくとも3人はいるようだ。オレは必死に抵抗しようとするが、力では敵わない。
しばらく歩かされた後、突然止まる。ドアの開く音がして、オレは中に押し込められた。頭から被せられていた布が取り払われ、目の前には……。
「よう悠真、やっとだな。やっと……」
目の前には2年剣道部の川口崇広、バレー部の比良山信行と山内勇人がいた。そしてその脇にはニヤニヤ笑った小林正人と遠山修一がいた。田中勇輝もいる。
……こいつら、やっぱりな。
小学生の時にボコった正人と、入学早々ボコった修一、それから礼子をいじめていて退散させた勇輝だ。
「お前らまでなにやってんだよ」
オレは3人を順番に睨みつけた。
こいつらが先輩に密告して、生意気だからやっちゃってくださいとか言ったんだろう?
まじか。まじでそんなドラマみたいなクソがいるんだな……。
「悠真、オレがこの日をどれだけ待ち望んだか」
と修一。それに正人が続く。
「そうだ。お前なんかがいいかっこ、いつまでもしてんじゃねえぞ、悠真」
勇輝がそれに続こうとしているが、オレはその前に全員を見た。
「おい、オメエラにはまだ『悠真』って呼んでいいなんて、言ってねえぞ」
「ははははは、何言ってんだお前? 先輩、こんなヤツなんですよ。クソ生意気でしょう?」
勇輝が少し甲高い声でまくし立てた。
「くそ! 馬鹿馬鹿しい。オレは帰る!」
強行突破して部室から出ようとするが、当然固められている。
「どけ! おらっ!」
「帰すわけねえだろうがよ! くそが!」
オレは勇輝を払いのけて部室のドアから帰ろうとするが、3人に押さえこまれてしまった。さすがに3対1は分が悪い。
「おらよっ!」
「痛ってえ!」
崇広(2年・川口崇広)が振りかざした竹刀が腕に当たった。まだ制服は半袖で、直に当たった竹刀は相当痛い。
「その通りだよっ!」
「ぐはっ」
信行(バレー部2年・比良山信行)が蹴りを腹に思いっきりいれたと思えば、同じくバレー部の勇人(2年・山内勇人)が顔面をねらって殴りかかる。
「ぐ……」
オレは2人に両手を押さえられ、1人に腰を固定されて全く動けないので、歯を食いしばるくらいしかできない。
必死に耐えたが、体中に痛みが広がっていく。蹴りや竹刀の一撃が容赦なくオレを打ち続ける。頭の中では冷静に状況を分析しようとする自分がいる一方で、体は衝撃に耐えるのが精一杯だ。
「やっぱり、抵抗できねえよな?」
正人が鼻で笑いながら、上から見下ろしている。
「お前がどんなにカッコつけようが、結局はただのガキだ。俺たちに逆らうってのが、どれだけ無謀か思い知れよ」
修一も薄笑いを浮かべながら言葉を続ける。
ガキ、だと……? お前らも同じ12じゃねえか。しかもやってる事はくそガキだ。
「いつもの勢いはどこに行ったんだ? お前はただの自己満足で、俺たちをバカにしてたんだよな。もう少し謙虚になるべきだったな」
こいつらは一体何を言っているんだ?
オレは必死に顔を上げ、相手の目を睨みつけたが、力が入らない。口元から血がにじむのを感じたが、それでも言い返したのだ。
「……くだらねぇ……お前ら、オレを殺す気でやってんのか?」
「は? んなわきゃねえだろうが。誰が殺すまでやるかよ」
「じゃあお前ら、今日オレを殺さない事を後悔するぞ。知っているか? オレはヤクザじゃないが、ヤクザはなめられたら終わりだから、今日やられたら明日、明日やられたら明後日と、死ぬまで復讐をするらしいぜ。オレもこのまま中学卒業したくねえからな。お前らが止めるまで、とことんやるぞ。それでいいのか?」
正人たちはオレの言葉に一瞬、驚いたような表情を見せたが、すぐに修一が笑い飛ばした。
「ははは、脅しか? 悠真、そんなセリフでビビると思ってんのか?」
「いや、脅しじゃねぇよ。事実だ。お前らが今、こうやってオレをボコボコにしてるみたいに、オレもお前らにやり返すだけだ。今日帰ったら、それが始まるんだぜ」
オレの冷静な声に、少しずつ奴らの表情に緊張が走っていくのがわかった。
もちろん、今オレはどうしようもない状況にいる。6対1の力関係が覆るわけじゃない。でも、ここで引いたら本当に終わりだ。
「オレを本当に無視できるか? お前らの一生に付きまとうぞ。毎日学校に来るたび、家に帰るたび、いつか復讐されるって思いながら生きていけるか?」
修一が首をかしげ、正人も黙り込んだ。勇輝もあまり状況がのみ込めていない様子だ。
「うる、せえな……。ああ面倒くせえ、やっちまえ!」
崇広の号令で一斉にオレは袋だたきにされた。
「きゃあっ! どうしたの悠真その顔!」
オレがあまりにも来ないので火曜日の凪咲が探してくれたが、オレは校舎裏の手洗い場で口をゆすぎ、蛇口を上向きにして弱めに水を流して顔に当てていたところだった。
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