ロッキン・オン・ガールズライフ -第1章 ひきこもり幼馴染にノットデッドと叫んでやりたい-

たっくす憂斗

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トラック1:長い間文通を交わしていない友達から突然メッセージが来る時は、かなり驚くけど同時に嬉しさもこみ上げてくる

怒涛の一日の終わり

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 それから一時間も経たぬうちに、おふくろが帰ってきた。
 お袋は最初紗彩さあやの事情を聞くと驚き悲しんだが、今彼女が直面している問題をしっかり理解してくれて、俺の家に泊めることを承諾してくれた。

 親父おやじも案外すんなりと承諾してくれた。これに関しては意外だった。
 お袋か親父かのどっちかと言えば、断然親父への説得が出来るかどうかで懸念していた。
 同じ家に同じ年頃の女子を入れ込むことに反対してくるのでは、と俺は予想していたからだった。
 きっとそれも、お袋から承認されたことで、全面的にバックアップができたからだと思う。
 それに、昔からよく知っているところの娘でもあって、信頼できる子だからという背景もあったんじゃないだろうか。

 紗彩が無事居候いそうろうすることができ、俺は一安心した。
「ひとまず、住めるようになって良かったな」
「うん、良かった」
 俺と紗彩はそう言ってほっとした直後、一緒のタイミングであくびをして、部屋に戻っていった。

 24時を回る前、既に俺達は床についた。
 紗彩は、最早横になった途端すぅすぅと可愛い寝息をたてて深い眠りについていた。
 それまで気を張り詰め、今こうしてようやく落ち着ける環境に身を置けるようになったのだ。存分に寝るが良い。

 夕方から急に始まった俺と紗彩との時間。
 これからやってくることは、きっと紗彩にとって困難の連続になるはず。
 俺は、できるだけそれを支援してあげたいと思った。

 さて、何か聴こうか。
 そう思い立ち、俺は携帯の音楽画面から手早く、Jeff Beckジェフ・ベックの「Diamond Dustダイアモンドダスト」を選曲した。
 うんと寒い日には、いつもこの曲を聴いている。
 曲名の通り、こごえるほど寒そうな雰囲気が強くただよう幻想的な一曲。
 それを聴きながら、俺は窓の景色をただ一直線に眺めていた。
 窓から覗く外灯と自動車のヘッドライトは、朧気おぼろげながらも明るく俺の目に映っていた。
 普段なら耳障りな深夜に走る車の騒音も、今だけは気にならなかった。
 そして俺は、八分半にも及ぶ長尺の曲が終わらないうちに、視界が暗くなっていく。
 あれだけ走って、あれだけ気を張った。
 家に帰ってすぐ寝落ちはしたものの、未だに自分のまぶたは重かった。


 次に目が覚めたときは、いつの間にか外は明るくなっていた。
 昨日は散々疲れたので、夢を見るような浅い睡眠はなくて、すぐにノンレム睡眠へと移れた。
 そのせいか、いつもより寝起きはすっきりしており、目をこする動作なんて全く必要ないくらいだった。
 身体を思いきり伸ばす。ちょっとふくらはぎがつりそうになったが、なんとかその激痛からはまるがれることができた。
 紗彩は、まだすやすやと可愛い寝息をたてて眠っていた。

 いつものルーティンである洗顔、歯磨きを終えて制服に着替え、リビングにおもむく。
 炊飯器の保温ボタンが点灯しているのを確認した後、俺は冷蔵庫から納豆なっとう一パックを取り出した。
 台所には、カリカリに焼かれているソーセージと程よくげ目の付いた玉子焼きが、平べったい皿に盛りつけられている。
 保存がきくように、きちんとラップまでおおわれている丁寧さだ。
 俺のお袋は、昔からそれなりに料理が得意な方だった。
 小学校の頃から、俺がリクエストを言ったら、その要望に応えて手作り料理をしてくれてたっけな。

 食器用の収納棚から、一杯の茶碗を取り出す。
 うちは今、両親ともに働いているので、朝食は各自でるようにしている。
 炊飯器から、多すぎず少なすぎずの丁度良い量の白飯を盛り、攪拌かくはんするかのような勢いで納豆を練っていく。
 粘度が上がった納豆を白飯の上にかけて、一気に口にかきこんでいく。
 端から見れば体育会系のような食べ方かもしれないが、男子高校生なんて皆こんなもんだよな。
 一瞬で納豆ご飯を平らげた俺は、最後にソーセージ一本と玉子焼き一切れを口に放り込んでいく。
 これこれ。朝ごはんというのは、結局こういうのが一番最高なんだよな。
 食べ終わった俺は、茶碗をシンクに置いて水にひたらせ、部屋へと戻った。

 紗彩は、まだ寝息を立てながら、ぐっすり寝ている。
 コートを取りに行くべく、起こすまいとつま先だちしつつ、音をたてずにそろりそろりと静かに歩いた。
 何とか紗彩を起こさず、反対側まで行くことができた。
 コートを手に取った俺は、行ってきますと紗彩のほうを見ながら声をかけた。
 今、待って…と紗彩からの寝言が聞こえたような気がしたが、気のせいとしておこう。
 そう思うことにし、俺は自宅を後にした。
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