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その後
青天の霹靂が身に降った思いだと後に彼女は答えた3
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家に付いたらまず子供たちを風呂に入れる。
奴隷として売られる子供を身ぎれいにされているが、冷たい水で体を洗われただけだ。
ミヤハルは子供の体が冷たかったので、まず温もりを与えようと思った。
そして子供たちが風呂に入っている間に夕食の用意をシェフに任せる。
本日は祝福するべき日なので、昔懐かし和食でお祝いだ。
初恋なのだ。
少しは浮かれても良いだろう。
ミヤハルは少し考えて、シェフに赤飯を頼んだ。
どうせ初潮も迎えない体だ。
赤飯でお祝いするなんてこれが最初で最後だろう。
厨房から聞こえる食事を作る音を聴きながら、書斎で本を読む。
読む本は帰宅途中で本屋で仕入れた「おたまごクラブ」と「おひよこクラブ」だ。
さすがに1人であんなに小さな子供を育てたことはない。
今まで育ててきた神や悪魔はユラと共に育てたのだ。
赤子など初めてだ。
真剣な表情で「おたまごクラブ」を読む。
その様子を長年ミヤハルに仕えてきた執事のケンキが優しい目で見つめていた。
:::
そしてほこほこに温もった子供たちがダイニングの席についていた。
テーブルの上の食事に目をキラキラと輝かす。
オウマなどは涎を垂らしている。
皆で食卓について「いただきます」を言う。
オウマは凄い勢いで食事に齧り付いた。
本当に美味しそうに食べる。
食べた事ない料理に興味深々なようで、ミヤハルに美味しかった物の名前を尋ねたりしてくる。
ニコニコと良く笑い、子供らしい可愛らしさに溢れていた。
きっと愛情を受けて育てられたのだろう。
愛情を受け取り方を知っていた。
反対に兄弟の兄は食事に一切手を付けなかった。
無表情だ。
表情筋が仕事をしていない。
初めて見るご馳走を前にどうすれば良いか分からないみたいだ。
弟の赤子はメイドに抱かれてミルクを幸せそうな顔で飲んでいる。
だが兄の方は固まって動かない。
お腹の音が小さくクウクウ鳴っているのは、ミヤハルの常人離れした聴覚はしっかり捉えていた。
そして隣に座る兄を膝の上に抱き上げる。
兄が目を見開いた。
「ほら、あーんしてみ?」
兄は膝の上で固まっている。
援護を意外なところから齎された。
「お前に食べさせてくれるんだってさ」
「?」
「食べたら?美味しいぜ?」
オウマに促され、兄はミヤハルが口元に持ってきていた肉じゃがのホクホクのジャガイモをパクリと口に入れた。
兄の目がキラキラと光る。
そしてその後眉間にしわを寄せ、次の瞬間にボロボロと大粒の涙をその双眸から零した。
「泣くほど美味しかったんか?」
ミヤハルがニコニコ笑う。
スラムで育った子供だ。
こんなちゃんとした食事をとるなど初めてだろう。
だからミヤハルは食事に感動して泣いたのだと思った。
だが実際には兄はミヤハルの優しい声と体温、そして柔らかい笑顔に張りつめていた糸が切れて涙を零したのだ。
同じスラム育ちのオウマはそれに気付いた。
ミヤハルは気付いていないようだけど、多分赤子の弟以外みんな気付いた。
意外とミヤハルは自分に対する好意に鈍いのだ。
これが兄の初恋の始まりなど、思いもよらなかったのだった。
奴隷として売られる子供を身ぎれいにされているが、冷たい水で体を洗われただけだ。
ミヤハルは子供の体が冷たかったので、まず温もりを与えようと思った。
そして子供たちが風呂に入っている間に夕食の用意をシェフに任せる。
本日は祝福するべき日なので、昔懐かし和食でお祝いだ。
初恋なのだ。
少しは浮かれても良いだろう。
ミヤハルは少し考えて、シェフに赤飯を頼んだ。
どうせ初潮も迎えない体だ。
赤飯でお祝いするなんてこれが最初で最後だろう。
厨房から聞こえる食事を作る音を聴きながら、書斎で本を読む。
読む本は帰宅途中で本屋で仕入れた「おたまごクラブ」と「おひよこクラブ」だ。
さすがに1人であんなに小さな子供を育てたことはない。
今まで育ててきた神や悪魔はユラと共に育てたのだ。
赤子など初めてだ。
真剣な表情で「おたまごクラブ」を読む。
その様子を長年ミヤハルに仕えてきた執事のケンキが優しい目で見つめていた。
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そしてほこほこに温もった子供たちがダイニングの席についていた。
テーブルの上の食事に目をキラキラと輝かす。
オウマなどは涎を垂らしている。
皆で食卓について「いただきます」を言う。
オウマは凄い勢いで食事に齧り付いた。
本当に美味しそうに食べる。
食べた事ない料理に興味深々なようで、ミヤハルに美味しかった物の名前を尋ねたりしてくる。
ニコニコと良く笑い、子供らしい可愛らしさに溢れていた。
きっと愛情を受けて育てられたのだろう。
愛情を受け取り方を知っていた。
反対に兄弟の兄は食事に一切手を付けなかった。
無表情だ。
表情筋が仕事をしていない。
初めて見るご馳走を前にどうすれば良いか分からないみたいだ。
弟の赤子はメイドに抱かれてミルクを幸せそうな顔で飲んでいる。
だが兄の方は固まって動かない。
お腹の音が小さくクウクウ鳴っているのは、ミヤハルの常人離れした聴覚はしっかり捉えていた。
そして隣に座る兄を膝の上に抱き上げる。
兄が目を見開いた。
「ほら、あーんしてみ?」
兄は膝の上で固まっている。
援護を意外なところから齎された。
「お前に食べさせてくれるんだってさ」
「?」
「食べたら?美味しいぜ?」
オウマに促され、兄はミヤハルが口元に持ってきていた肉じゃがのホクホクのジャガイモをパクリと口に入れた。
兄の目がキラキラと光る。
そしてその後眉間にしわを寄せ、次の瞬間にボロボロと大粒の涙をその双眸から零した。
「泣くほど美味しかったんか?」
ミヤハルがニコニコ笑う。
スラムで育った子供だ。
こんなちゃんとした食事をとるなど初めてだろう。
だからミヤハルは食事に感動して泣いたのだと思った。
だが実際には兄はミヤハルの優しい声と体温、そして柔らかい笑顔に張りつめていた糸が切れて涙を零したのだ。
同じスラム育ちのオウマはそれに気付いた。
ミヤハルは気付いていないようだけど、多分赤子の弟以外みんな気付いた。
意外とミヤハルは自分に対する好意に鈍いのだ。
これが兄の初恋の始まりなど、思いもよらなかったのだった。
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