婚約者の王子に聖女など国に必要ないと言われました~では私を信じてくれる方だけ加護を与えますね~

高井繭来

文字の大きさ
162 / 264

《133話》

しおりを挟む
 セブンが往診に来て国王と2人になる時はサラはナナと共に診療所に帰される。
 ナナと一緒、と言う所がみそだ。
 どうもあのアホ王子はサラを狙っているみたいなので?
 セブンなりの牽制なのである。

 診療所に戻ったらカルテやなんやらと診療以外の仕事もある。
 セブンが居ない時は患者は診ない。
 何か不手際があったら大変だからだ。
 従業員を護るセブンなりの心遣いである。

 そうしてセブンと別れて王宮を後にしようと、ふかふかの絨毯が敷かれた廊下を歩く。
 ふかふかだ。
 サラの自室のベッドよりふかふかかもしれない。
 セブンの所のベッドなら勝てるだろう。

 手に持つのは保冷バッグ。
 医療器具はセブンが自分の手で運ばないと気が済まないらしい。
 セブンにとって1番のパートナーは医療器具かも知れない。
 早く人間のパートナーを作って欲しいと国王も心から思っている事だろう。
 今のところその兆しは遥か遠い。

 保冷バッグの中身はセブンお手製のお菓子。
 国王が食べたものと同じだ。
 これを食べて事務仕事に励めという事だろう。

「今日のお菓子なんだった?」

「シフォン、ケーキ、で、す♡」

 ふかふかのシフォンケーキ。
 きっと王宮の絨毯よりふかふかだ。
 それにフォークを突き立てるのを想像するとサラの心は浮き立つ。
 横に添えるのは生クリームとアイスどちらにしようか?
 どちらも診療所の冷凍boxと冷蔵boxに入ってある。
 自由に食べてよいとのお達しも受けてある。
 生クリームとアイスクリームの食べ放題。
 セブンの目があるところではとてもじゃないが出来ない贅沢だ。
 良し、両方トッピングしちゃおう!
 さらにチョコソースもかけてみたり?
 カロリーの塊が出来上がりそうである。

 ウキウキと浮き立つサラの心を沈める声が背後からかけられた。

「おいサラ!今日こそ付き合って貰うぞ!」

 アコロ王子である。
 サラの機嫌ゲージが一気に下がった。

「何のよう、です、か?」

 サラには珍しい事だが、サラはアコロ王子が嫌いである。
 苦手な人間は多々いるが、嫌いなのはアコロ王子限定だ。
 数年に及ぶ見下し罵られた年月。
 平民と罵られ、さらにはジャガイモ天国の神殿での生活。
 サラの扱いが神殿で悪かったのはひとえにアコロ王子がサラを貶めていたからだ。
 人間長いモノには巻かれたい。
 神殿の人間も大人しいサラより、アコロ王子の不況を買う方が嫌だったのである。
 それでも立ち止まり話くらいは聞く。
 とても嫌そうな顔をしているが。

「サラちゃんに何か用かしら皮王子?」

 んふ♡と吐息を漏らしてナナが発言する。
 質問しているだけなのに、立っているだけなのに、やたらと蠱惑的なのは何故なのか?
 思わずアコロ王子の小ぶりの王子が起っきしてしまいそうになる。
 だがアコロ王子はナナが苦手である。
 見下して来る上、どう反論して良いか分からない。
 この辺りは格の違いだろう。
 なのでアコロ王子はナナを居ないものとした。
 平たく言えば無視である。

「私の部屋に行くぞ」

「嫌、です」

「私の部屋に招かれる栄誉が分からないみたいだな?」

「部屋で何、する、ですか?」

「体つきは女らしくなっても頭は子供のままか?まぁ仕込むのも悪くない、ククク」

 悪役のような笑い方はディノート王族の遺伝子に刻み込まれているのだろうか?

「来いっ!」

 アコロ王子がサラの手首を掴む。
 そして引きずって行こうと力を込めた瞬間。

 フワリ

「!?」

 アコロ王子の体が宙に浮いた。

「へ?」

 ドンッ!!!

「痛っ!!」

 ふかふかの絨毯でも重力と体重で思いきり地面に叩きつけられたアコロ王子の衝撃を吸収が出来なかった。
 痛みにアコロ王子が声を上げる。
 そしてサラの行動にナナも驚いて声が出た。
 先ほどの「へ?」はナナのものである。

 それにしても見事な投げ技であった。
 アコロ王子は一瞬重力が消えたかのように宙に舞った。
 サラが合気道の要領で投げたのである。
 勿論その技が合気道だとサラは知らない。
 失われた神話時代の体術だ。

 ギリギリギリ

「いったたたたたったたたたっ!!!」

 アコロ王子が悲鳴を上げる。
 サラが腕の関節を固めて居るのだ。

「国王様から、アコロ王子、が、手を出して来たら反撃、していい、許可貰って、ます」

「離せ!お前は聖女の癖に王族の人間に暴力をふるうのか!?」

「王族でも敵なら、力、ふるいます。私、ドラゴンは無理、でもオーク程度なら、素手で倒せるくらいの体術、出来るです」

「そうなのサラちゃん!?」

「サイヒ様から習っている、です」
 
 どうやらサラに体術を仕込んだのは全能神らしい。
 それに今のサラの言い方なら法術を合わせればドラゴンでも倒せるような言い方だ。
 実際そうなのだろう。
 全能神が中途半端な能力を仕込む筈が無い。

「帰って、良い、ですか?」

「帰れ!貴様の顔なぞ見たくない!!」

 その返答にサラはアコロ王子の腕の拘束を解いた。

「後悔させてやるからな!」

「私、は、貴方には、容赦しない、と決めてます」

 サラの眼差しは鋭い。
 一体いつの間にこの少女はここまでの箔をつけたのか。
 それは自分を認めてくれる存在が周りにいるからだろう。
 大好きな人のために自分を卑下しないとサラは決めているのだ。

 サラの冷たい視線に恐怖を感じたアコロ王子は罵詈雑言を叫びながら廊下を走って行った。
 あまりにも無様な姿である。

(サラちゃん、怒らせないようにしましょう………)

 心の中でナナは決心したのだった。
しおりを挟む
感想 951

あなたにおすすめの小説

勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました

鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」 そう言ったのは、王太子アレス。 そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。 外交も財政も軍備も―― すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。 けれど功績はすべて王太子のもの。 感謝も敬意も、ただの一度もない。 そして迎えた舞踏会の夜。 「便利だったが、飾りには向かん」 公開婚約破棄。 それならば、とレイナは微笑む。 「では業務も終了でよろしいですね?」 王太子が望んだ通り、 彼女は“確認”をやめた。 保証を外し、責任を返し、 そして最後に―― 「ご確認を」と差し出した書類に、 彼は何も読まずに署名した。 国は契約で成り立っている。 確認しない者に、王の資格はない。 働きたくない公爵令嬢と、 責任を理解しなかった王太子。 静かな契約ざまぁ劇、開幕。 ---

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

王子よ、貴方が責任取りなさい

天冨 七緒
恋愛
「聖女の補佐をしてくれないか?」  王子自ら辺境まで訪れ、頭を下げる。  それほど国は、切羽詰まった状況なのだろう。  だけど、私の答えは……  皆さんに知ってほしい。  今代の聖女がどんな人物なのか。  それを知った上で、私の決断は間違いだったのか判断してほしい。

【完結】何でも奪っていく妹が、どこまで奪っていくのか実験してみた

東堂大稀(旧:To-do)
恋愛
 「リシェンヌとの婚約は破棄だ!」  その言葉が響いた瞬間、公爵令嬢リシェンヌと第三王子ヴィクトルとの十年続いた婚約が終わりを告げた。    「新たな婚約者は貴様の妹のロレッタだ!良いな!」  リシェンヌがめまいを覚える中、第三王子はさらに宣言する。  宣言する彼の横には、リシェンヌの二歳下の妹であるロレッタの嬉しそうな姿があった。  「お姉さま。私、ヴィクトル様のことが好きになってしまったの。ごめんなさいね」  まったく悪びれもしないロレッタの声がリシェンヌには呪いのように聞こえた。実の姉の婚約者を奪ったにもかかわらず、歪んだ喜びの表情を隠そうとしない。  その醜い笑みを、リシェンヌは呆然と見つめていた。  まただ……。  リシェンヌは絶望の中で思う。  彼女は妹が生まれた瞬間から、妹に奪われ続けてきたのだった……。 ※全八話 一週間ほどで完結します。

お父様、お母様、わたくしが妖精姫だとお忘れですか?

サイコちゃん
恋愛
リジューレ伯爵家のリリウムは養女を理由に家を追い出されることになった。姉リリウムの婚約者は妹ロサへ譲り、家督もロサが継ぐらしい。 「お父様も、お母様も、わたくしが妖精姫だとすっかりお忘れなのですね? 今まで莫大な幸運を与えてきたことに気づいていなかったのですね? それなら、もういいです。わたくしはわたくしで自由に生きますから」 リリウムは家を出て、新たな人生を歩む。一方、リジューレ伯爵家は幸運を失い、急速に傾いていった。

【完結】残酷な現実はお伽噺ではないのよ

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
恋愛
「アンジェリーナ・ナイトレイ。貴様との婚約を破棄し、我が国の聖女ミサキを害した罪で流刑に処す」 物語でよくある婚約破棄は、王族の信頼を揺るがした。婚約は王家と公爵家の契約であり、一方的な破棄はありえない。王子に腰を抱かれた聖女は、物語ではない現実の残酷さを突きつけられるのであった。 ★公爵令嬢目線 ★聖女目線、両方を掲載します。 【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう 2023/01/11……カクヨム、恋愛週間 21位 2023/01/10……小説家になろう、日間恋愛異世界転生/転移 1位 2023/01/09……アルファポリス、HOT女性向け 28位 2023/01/09……エブリスタ、恋愛トレンド 28位 2023/01/08……完結

【完結】大聖女は無能と蔑まれて追放される〜殿下、1%まで力を封じよと命令したことをお忘れですか?隣国の王子と婚約しましたので、もう戻りません

冬月光輝
恋愛
「稀代の大聖女が聞いて呆れる。フィアナ・イースフィル、君はこの国の聖女に相応しくない。職務怠慢の罪は重い。無能者には国を出ていってもらう。当然、君との婚約は破棄する」 アウゼルム王国の第二王子ユリアンは聖女フィアナに婚約破棄と国家追放の刑を言い渡す。 フィアナは侯爵家の令嬢だったが、両親を亡くしてからは教会に預けられて類稀なる魔法の才能を開花させて、その力は大聖女級だと教皇からお墨付きを貰うほどだった。 そんな彼女は無能者だと追放されるのは不満だった。 なぜなら―― 「君が力を振るうと他国に狙われるし、それから守るための予算を割くのも勿体ない。明日からは能力を1%に抑えて出来るだけ働くな」 何を隠そう。フィアナに力を封印しろと命じたのはユリアンだったのだ。 彼はジェーンという国一番の美貌を持つ魔女に夢中になり、婚約者であるフィアナが邪魔になった。そして、自らが命じたことも忘れて彼女を糾弾したのである。 国家追放されてもフィアナは全く不自由しなかった。 「君の父親は命の恩人なんだ。私と婚約してその力を我が国の繁栄のために存分に振るってほしい」 隣国の王子、ローレンスは追放されたフィアナをすぐさま迎え入れ、彼女と婚約する。 一方、大聖女級の力を持つといわれる彼女を手放したことがバレてユリアンは国王陛下から大叱責を食らうことになっていた。

処理中です...