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そして全能神は愉快犯となった

【141話】

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「でーへんだてーへんだ!」

「おいおいまたベイエイトが騒いでるぞ」

「どうせ何時ものうっかりだろ?」

 今日も【獅子の鉤爪亭】は賑やかだった。

「今日はどうしたんだよベイエイト?」

「クムリーちゃんの事なんだけどよぉ!」

「あれなら暗行御史がかたをつけたんだろう?」

「そう、その暗行御史!その暗行御史にクムリーちゃんが一目惚れしちまったらしいんだよ!」

「「「「「なにぃぃぃいぃぃっぃぃっ!!」」」」

 男たちが大きな声を上げた。
 15歳といえど将来が楽しみな美少女だ。
 出来れば自分が良く思われたい。
 何なら将来を見据えてお近づきになりたい。
 そう思っていた男は少なくない。

「それはそれは随分お綺麗な暗行御史が居たものだな」

「何言ってんですかリリーの旦那!あのダイカーン伯爵がズタボロにされたそうですぜ?絶対ムキムキのゴリラに決まってますぜ!!」

「そんな!ゴリラにクムリーちゃんが!!」

「でも暗行御史だから一か所に留まらないだろう?」

「クムリーちゃんから告白されたら連れて行っちまうかもしれないだろう!?」

「ゴリラだからな、性欲も強いに決まってる!」

「クムリーちゃんの汚れない操がゴリラにーーーーっ!!」

(こいつら全員1回〇してやろうか…)

 それをやるだけの能力がリリーにはある。
 しかも1回と言わず何回でも〇して生き返らしてを繰り返すこともできる。
 拷問向きの能力も持っているハイスペックなのだリリー・オブ・ザ・ヴァリーと言う男は。

「でもまぁ下町の姫さんが助かって良かったではないか」

「まぁ旦那の言う通りですけどね…」

「ゴリラに奪われる前にクムリーちゃんを好きな男は早めに告白しておくべきだな」

「何時ゴリラが迎えに来るかわからないからな!」

 わっはっはっ、と皆がジョッキ片手に大きな声で笑う。
 この雰囲気が好きでリリーは【獅子の鉤爪亭】に顔を出すのだ。

「ウェイトレスの方、何か腹にたまるものを5品くらい持ってきてくれ」

「了解しましたリリーさん♡」

 リリーに注文を頼まれたウェイトレスが嬉しそうに答えた。
 リリーが来た日は、そのテーブルを誰が担当するのかウェイトレスが裏でバトルを繰り広げているのは客には聞かせられない話である。
 そしてリリーが細みながら物凄く食べることは【獅子の鉤爪亭】では有名だ。
 腹にたまるものを5品食べたくらいでは満足しないだろう。
 追加注文もあるはず。
 テーブルに近づける機会があればあるほど、リリーとコミュニケーションが取れる。
 今日こそリリーを落としてやろうと女たちは目を光らせているのだ。

「さて、今日は平和そうで何よりだ」

 騒ぐ民を見ながらリリー…全能神サイヒは果実水で喉を潤すのだった。
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