聖女の力を姉に譲渡し国を出て行った元聖女は実は賢者でした~隣国の後宮で自重せずに生きていこうと思います~

高井繭来

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そして全能神は愉快犯となった

【187話】

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 久しぶりに天界に帰ってきた全能神の長女の腹がポッコリと膨らんでいる。
 絶壁だった胸も微かに膨らんでいる。

「太ったなカマラ」

「全能神の言葉ですかソレが!」

 そう全能神のサイヒがカマラの妊娠に気が付かない訳がない。
 可愛いものは虐めたい。
 14歳で天界を飛び出して1人立ちしたカマラ。
 その行動力は拍手喝采ものだが、母親としては手放しで喜んでやれない。
 まだまだ可愛がる予定だったのだ。
 そのせいでサイヒはカマラの青春時代を傍で見る事が出来なかった。
 ちょっぴりカマラに意地悪したくなるのも仕方ないだろう。
 この全能神、意外と、いやかなり面倒くさい性格をしているのだ。

 まぁ妊婦を長い時間立たす訳にはいかないので応接間に移動する。
 勿論お茶と菓子を用意してくれるのはマロンである。
 飲み物もノンカフェインのハーブティーだ。
 言われなくても気付く、超1流の侍女なのである。

「お久しぶりですお義母様」

「婿殿も元気そうでよかった。また背が伸びたか?」

「背が伸びるのが早くて体重が追い付かないのが悩みです。筋肉が付きにくい体質みたいで。これじゃぁカマラさんが危ない時に護れないので何とかしたいのですが」

「ほぅ、愛されてるなカマラ」

「ソレイユ様…あんまり恥ずかしい事言わないで下さい………」

 カマラの頬が赤く染まる。

「あ、そうですよね!カマラさんのように素敵な人の夫が貧弱何て恥ずかしいですよね!!」

「違います!私はソレイユ様が貧弱でも太っていても気にしません、無意識に惚気ないで下さいと言ったのですよ………」

「僕惚気てました?」

「「惚気ていた/ました」」

 仲良し母娘である。
 息がぴったりだ。

「カマラさんのような素敵な人を娶れて、つい普通に話すだけでも惚気てしまうみたいで済みません。カマラさんがあまりにも魅力的なもので、つい惚気みたいな言葉が出てきちゃうんです………」

「だからそう言う所です!」

 カマラが赤くなり、ソレイユはオロオロする。
 ソレイユの惚気癖は治りそうにない。
 サイヒは我が娘と婿殿だが、そのやり取りに砂糖を吐くかと思った。
 自分だって1日中ルークとイチャイチャしていることは棚においてだ。

「婿殿、婿殿が嫌でなければカマラの出産まで天界で過ごすのはいかがだ?安全は保障するし、妊婦にも良い環境だと思うぞ?何せマロンが付いてるからな」

 今やサイヒの専属侍女は家事力と調薬力がカンストしている。
 カマラやドラジュを取り上げたのもマロンだ。
 産婆の勉強もしていることをサイヒは知っている。
 子供好きのマロンは大切な人の子供を取り上げるのを生き甲斐の1つとしているらしい。
 サイヒにも後何人か産んで欲しそうではあるが、サイヒはルークで手一杯だ。
 今から幼児を育てる気力は無い。

 その内サイヒの愛し子たちの子供もマロンに取り上げられるようになるだろう。
 その時には天界は子供の声でにぎやかになっているのかもしれない。

「性別は知りたい派か?知りたくない派か?」

「う~ん、どちらにしても可愛いに決まってますから知らなくて良いですよ」

「カマラさんの子供だから可愛いでしょうね」

「ソレイユさんの子供だから可愛いんですよ」

「母親の前でナチュラルにいちゃつくな…流石は我が娘と言うべきか………?」

「い、いちゃついてないです!」

「無自覚か」

「カマラさん、外で僕と引っ付くのは嫌ですか?」

「違います!ソレイユ様の事を嫌と思う筈が無いじゃないですか!」

「僕もカマラさんを嫌うことなど無いですよ」

 ニッコリとソレイユが笑う。
 眼鏡の奥の瞳が優し気に細められる。
 それにカマラは魅入った。
 何て優しい瞳。
 こんな優しい人が己の夫なのだ。
 全世界どころか天界にも魔界にもお知らせしたくて堪らなくなる。

「惚れた方が負け、と言うしな。幸せで良かったじゃないかカマラ」

「うん、幸せだよ。幸せにコレからもなるよ」

「まずは元気な子を産むことだな」

「天界で産むのでしたら、僕も何かできる事はあるでしょうか?」

「婿殿は…そうだ、体を鍛えてみるか?魔術と法術を学ぶのも良いと思うぞ、いざと言う時カマラを護りたいのだろう?」

「是非お願いします!」

「ソレイユ様、そんなに頑張らなくても………」

「僕がカマラさんのためにしたいんだから良いんですよ」

 ソレイユがカマラの髪を一房取るとソレに口付けた。

「だから、そう言うとこ………」

「お互い頑張りましょうねカマラさん」

「うん、ガンバリマス」

 テレが天元突破して、片言になったカマラを全能神は楽しそうに眺めるのだった。
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